この記事の要点
厚生労働省の情報機器作業ガイドライン(基発0712第3号・令和3年一部改正)を通達の原文から整理しました。1日4時間と「拘束性」で決まる作業区分、一連続1時間・作業休止時間10分から15分、書類とキーボード上300ルクス、近見視力を測る情報機器作業健診、テレワークの扱いまで。

執筆・監修:小正 晃裕(医師・日本医師会認定産業医。詳しいプロフィールは記事末尾)|最終更新日:2026年10月19日

「うちは事務所だけだから、安全衛生でやることは特にない」——オフィスワーク中心の会社で、よく聞く言葉です。

ところが厚生労働省は、パソコンを使う作業について専用のガイドラインを出しています。 作業時間、休憩の取り方、照度、ディスプレイの位置、椅子の高さ、そして専用の健康診断まで、具体的な目安が並んでいます。

しかもこのガイドライン、正社員だけでなくパートタイマー・派遣労働者・臨時職員も、就業形態の区別なく対象です。

この記事では、自社のパソコン作業が対象になるのか、何をどこまでやればよいのかを、通達の原文から整理します。

この記事でわかること

  • 情報機器作業ガイドラインの正体と、対象になる作業・ならない作業
  • 作業区分の分かれ目——「4時間」と「拘束性」の2つの軸
  • 一連続作業時間と作業休止時間の目安(そしてそれが休憩時間ではない理由)
  • 照度・ディスプレイ・椅子・机の具体的な数値
  • 情報機器作業健康診断——通常の定期健康診断との違い
  • テレワーク・在宅勤務での扱い(事務所衛生基準規則は適用されません)
  • 50人未満の会社での現実的な進め方

「オフィスワークだけの会社で、何から手を付ければよいか」という方へ(この記事の執筆元)

筆者は現役の医師・産業医です。株式会社MeIXでは、作業区分の整理、情報機器作業健診の項目の相談、衛生委員会での説明資料づくりまでお手伝いしています。産業医との契約がない会社でも、1回からご利用いただけます。→ お問い合わせフォームはこちら(メールでお返事します)

1. 結論:オフィスワークにも専用のガイドラインがあります

先に結論を3つ。

#結論
1パソコン作業には「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」という専用の通達があります
2作業区分によって、健康診断の対象者が変わります。分かれ目は「1日4時間以上」と「拘束性」です
3これは法令ではなく通達です。罰則はありませんが、労働基準監督署の指導の根拠になり、安全配慮義務の内容にも関わってきます

ガイドラインの正体

正式名称と発番は次のとおりです。

情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて

基発0712第3号 令和元年7月12日

一部改正 基発1201第7号 令和3年12月1日

もともとは「VDT作業ガイドライン」でした。 VDT(Visual Display Terminals)という言葉がなじみにくいこと、そしてタブレットやスマートフォンまで職場で使われるようになったことから、令和元年に「情報機器」へ置き換えられ、旧ガイドライン(平成14年4月5日付け基発第0405001号)は廃止されています。

「VDT作業」で検索して古い情報にたどり着くことがありますが、現行はこちらです。

なぜ通達なのに気にする必要があるのか

ガイドラインは法令ではないため、これ自体に罰則はありません。ただし実務では次の意味を持ちます。

  • 労働基準監督署が事業場を指導する際の基準になります(通達の宛先は都道府県労働局長で、「これにより関係事業場を指導されたい」と書かれています)
  • 衛生委員会での調査審議の材料になります。ガイドライン自身が「衛生委員会等で十分に調査審議すること」と求めています
  • 健康障害が起きたときに、事業者が必要な措置を取っていたかを判断する手がかりになります

2. 対象になる作業、ならない作業

対象は「事務所で行われる情報機器作業」

対象となる作業は、事務所(事務所衛生基準規則第1条第1項に規定する事務所をいう。)において行われる情報機器作業(パソコンやタブレット端末等の情報機器を使用して、データの入力・検索・照合等、文章・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業をいう。)とし…

キーボードがなくても対象です。 解説にこう書かれています。

ディスプレイを備えた情報機器を対象としており、キーボードについては必ずしも備えていなくとも対象としている。

タブレットもスマートフォンも、業務で使えば情報機器作業です。

雇用形態は関係ありません

ここは見落とされやすいところです。

情報機器を使用する者については、一般正社員、パートタイマー、派遣労働者、臨時職員等の就業形態の区別なく、作業者が情報機器を使用する場合は全て情報機器ガイドラインの対象とする。

「パートだから対象外」という整理はできません。

事務所の外での作業は「準じて」

事務所以外の場所で行う情報機器作業については、通達本文にこうあります。

なお、本ガイドラインは、事務所において行われる情報機器作業を対象としたものであるが、ディスプレイを備えた当該機器を使用して、事務所以外の場所で行われる情報機器作業等についても、できる限り本ガイドラインに準じて労働衛生管理を行うよう指導されたい。

「準じて」であって「適用する」ではありません。 テレワークの扱いは§7で詳しく見ます。

3. 【核】作業区分——「4時間」と「拘束性」の2軸

ガイドラインで最も実務に効くのがここです。 作業区分によって、健康診断の対象者が変わります。

2つの区分

作業区分定義健診の対象
作業時間又は作業内容に相当程度拘束性があると考えられるもの1日に4時間以上情報機器作業を行う者で、次のいずれかに該当<br>・作業中は常時ディスプレイを注視する、又は入力装置を操作する必要がある<br>・作業中、労働者の裁量で適宜休憩を取ることや作業姿勢を変更することが困難である全ての者
上記以外のもの上記以外の情報機器作業対象者自覚症状を訴える者のみ

ガイドラインが挙げている作業の例

「拘束性あり」の例

コールセンターで相談対応(その対応録をパソコンに入力)/モニターによる監視・点検・保守/パソコンを用いた校正・編集・デザイン/プログラミング/CAD作業/伝票処理/テープ起こし(音声の文書化作業)/データ入力

「それ以外」の例

上記の作業で4時間未満のもの/上記の作業で4時間以上ではあるが労働者の裁量による休憩をとることができるもの/文書作成作業/経営等の企画・立案を行う業務(4時間以上のものも含む。)/主な作業として会議や講演の資料作成を行う業務(4時間以上のものも含む。)/経理業務(4時間以上のものも含む。)/庶務業務(4時間以上のものも含む。)/情報機器を使用した研究(4時間以上のものも含む。)

ここが実務のポイントです

「4時間以上なら全員が健診対象」ではありません。

企画・立案、資料作成、経理、庶務は、4時間以上でも「それ以外」に分類されています。つまり時間だけでは決まらず、「拘束性」が効いているわけです。

一般的な事務職の多くは「それ以外」に入ります。 一方、コールセンター、データ入力、CAD、校正・編集といった業務を抱える会社は、全員が健診対象になり得ます。

「拘束性」とは何か

解説に定義があります。

情報機器作業における身体的な特徴は「拘束性」という言葉で表される。これは情報機器作業においては、画面からの情報を正確に得るために頭(眼)の位置が限定されること、さらに、特にキーボードからの入力においては、手の位置も限定されることから、身体の動きが極端に制限されることによる。

また、決められた時間内に処理すべき作業量が多い場合などには精神的な負荷も加わり、心身ともに「拘束性」が強くなる。

そして正直にこう続きます。

「拘束性」が強いかどうかの判断は容易ではない場合が少なからずある。作業者自身が気付かないことも多く、また個人差も大きいことから、衛生管理者や産業医等の客観的な観察も必要である。

自己申告だけで区分を決めるのは難しい、とガイドライン自身が認めています。

区分は誰が決めるのか

別紙「情報機器作業の作業区分」を参考に、作業の実態を踏まえながら、産業医等の専門家の意見を聴きつつ、衛生委員会等で、個々の情報機器作業を区分し、作業内容及び作業時間に応じた労働衛生管理を行うこととする。

人事が独断で決めるものではなく、衛生委員会の審議事項です。 産業医がいる会社なら、意見を聴いたうえで区分します。

なお、「作業の例」はあくまで例示です。 別紙の注記にこうあります。

「作業の例」に掲げる例はあくまで例示であり、実際に行われている(又は行う予定の)作業内容を踏まえ、「作業区分の定義」に基づき判断すること。

4. 作業時間と休憩の目安

数字はこれだけです

項目目安
1日の作業時間上限は設けられていません(理由は下記)
一連続作業時間1時間を超えないようにする
作業休止時間次の連続作業までの間に10分から15分
小休止一連続作業時間内に1回から2回程度

原文はこうです。

一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分〜15分の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1回〜2回程度の小休止を設けるよう指導すること。

「作業休止時間」は休憩時間ではありません

ここを取り違えている会社が少なくありません。

作業休止時間は、ディスプレイ画面の注視、キー操作又は一定の姿勢を長時間持続することによって生じる眼、頸、肩、腰背部、上肢等への負担による疲労を防止することを目的とするものである。連続作業後、一旦情報機器作業を中止し、リラックスして遠くの景色を眺めたり、眼を閉じたり、身体の各部のストレッチなどの運動を行ったり、他の業務を行ったりするための時間であり、いわゆる休憩時間ではない。

つまり、労働基準法34条の休憩とは別物です。「1時間ごとに10分の休憩を与えなければならない」という話ではなく、パソコンから離れて別の業務をするのでも構いません。

電話対応、書類整理、打ち合わせ——画面から目を離す作業に切り替えれば、それが作業休止時間になります。

小休止は「作業者が自由に取れるように」

小休止とは、一連続作業時間の途中で取る1分〜2分程度の作業休止のことである。時間を定めないで、作業者が自由に取れるようにすること。

タイマーで管理するものではないということです。

なぜ1時間なのか

解説に根拠が書かれています。

一連続作業時間の目安として1時間としているのは、パソコン作業がおおよそ1時間以上連続した場合には誤入力の頻度が増すことやフリッカー値が低下する(フリッカー値とは光の点滅頻度のことで、この値の低下は覚醒水準の低下に起因する視覚機能の低下を反映していると考えられる。)、すなわち大脳の疲労と関連する指標値に変化が見られたという研究結果に基づいている。

なぜ1日の上限がないのか

一日の作業時間については、これまでの経験から、職場において情報機器作業に関して適切な労働衛生管理を行うとともに、各人が自らの健康の維持管理に努めれば、大多数の労働者の健康を保持できることが明らかになっており、他方、各事業場における情報機器作業の態様が様々で作業者への負荷が一様でなく、また、情報機器作業が健康に及ぼす影響は非常に個人差が大きいこともあり、ガイドラインでは上限を設けていない。

ただし、別紙の注記には4時間という数字の根拠が示されています。

パソコン作業者の調査研究から、1日の作業時間が4〜5時間を超えると中枢神経系の疲れを訴える作業者が増大し、また、筋骨格系の疲労が蓄積するという調査報告がある。また、疲労測定に関する別の調査研究からは、点滅光の識別度合いを示すフリッカー値が5%以上の低下を示して疲労を示す対象者が作業者の25%を超えないことを目標とすると、1日の作業時間は300分が望ましいとされている。

300分=5時間です。 「上限はないが、目安はある」という整理になります。

拘束性のある作業では、連続時間を短くする配慮を

視覚負担をはじめとする心身の負担を軽減するため、他の作業を組み込むこと又は他の作業とのローテーションを実施することなどにより、一日の連続情報機器作業時間が短くなるように配慮すること。

コールセンターやデータ入力のように逃げ場のない作業では、業務の組み方そのものが対策になります。

5. 作業環境の具体的な数値

ガイドラインと事務所衛生基準規則を合わせると、確認すべき数字はこれだけです。

照明・照度

項目基準根拠
書類上・キーボード上の照度300ルクス以上情報機器ガイドライン4(1)ロ
一般的な事務作業(室の作業面)300ルクス以上事務所衛生基準規則10条1項
付随的な事務作業150ルクス以上同上
明暗の対照・まぶしさ著しい対照がなく、まぶしさを生じさせない方法による同条2項
照明設備の点検6か月以内ごとに1回、定期に同条3項

ディスプレイ画面そのものの照度基準ではなく、「書類とキーボードの上」の明るさである点に注意してください。

なお、照度と職場巡視の関係は職場巡視の記事で扱っています。 そちらは「事務所という場」の話、この記事は「パソコンを使う作業」の話です。

グレア(まぶしさ)

解説の定義です。

「グレア」とは、視野内で過度に輝度が高い点や面が見えることによっておきる不快感や見にくさのことで、光源から直接又は間接に受けるギラギラしたまぶしさなどをいう。

対策として挙げられているのは次のとおりです。

  • ディスプレイ画面に太陽光が入射する場合は、窓にブラインドまたはカーテンを設ける
  • 間接照明等のグレア防止用照明器具を用いる
  • ディスプレイを置く位置を工夫する、画面の傾きを調整する
  • フィルターを取り付ける(ただし反射率の低いものを選ぶ。性能によっては文字の鮮明度が落ちたりフィルター自体が反射したりします)

推奨値も示されています。

一般にグレアを防ぐために、近い視野内での輝度比は1:3程度、広い視野内の輝度比は1:10程度が推奨されている。

ディスプレイの位置

項目目安
視距離おおむね40cm以上
画面の高さ画面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下になる高さが望ましい
文字の大きさ文字高さがおおむね3mm以上が望ましい
画面とキーボード・書類の視距離差が極端に大きくならないようにする

「画面の上端が眼の高さかやや下」は、実際の職場で最も守られていない項目のひとつです。ノートパソコンを机に直置きすると、画面は必ず眼より下になり、うつむき姿勢になります。

解説にはこうあります。

首のこりや痛みは頭の前傾が大きくなると増加し、打鍵の際に腕や手首を乗せる支持台がないと肩のこりや痛みは増加し、手の側屈(尺側変位)が大きいと腕の疲れや痛みが増加するといわれている。

椅子と机

項目目安
椅子の座面高(調整範囲)37cmから43cm程度で調整できることが望ましい
机(高さ調整不可)床からおおむね65cmから70cm程度
机(高さ調整可)60cmから72cm程度の範囲で調整できることが望ましい

65cmと70cmの根拠も書かれています。

65cm及び70cmがそれぞれ女性及び男性が使用する場合に必要な高さのほぼ平均値となるためである。

座面高について、実務的な注意もあります。

ここでいう床から座面の高さとは、実際に座って、クッション材が2cm〜3cm圧縮された状態の座面の高さのことである。市販されている椅子の座面高の表示は、クッション材が圧縮されていない外形表面の高さが一般的であるので注意を要する。

調整の順番も示されています。

高さ調整が可能な机又は作業台を使用する場合には、椅子の高さを最適に調整した後、机の高さを調整するとよい。

作業姿勢

座位のほか、時折立位を交えて作業することが望ましく、座位においては、次の状態によること。

(イ)椅子に深く腰をかけて背もたれに背を十分にあて、履き物の足裏全体が床に接した姿勢を基本とすること。また、十分な広さを有し、かつ、すべりにくい足台を必要に応じて備えること。

(ロ)椅子と大腿部膝側背面との間には手指が押し入る程度のゆとりがあり、大腿部に無理な圧力が加わらないようにすること。

足台は、足の疲れだけでなく背中や腰の疲れを防ぐ効果があると解説されています。 座面を高くして足が浮く人には有効です。

ノートパソコンの扱い

ノート型機器は、通常、ディスプレイとキーボードを分離できないので、長時間、情報機器作業を行う場合については、作業の内容に応じ外付けディスプレイなども使用することが望ましい。

小型のノート型機器で長時間の情報機器作業を行う場合については、外付けキーボードを使用することが望ましい。

タブレット・スマートフォン

これらの機器の人間工学上の特徴を踏まえ、ガイドラインでは長時間の情報機器作業に使用することはできる限り避けることが望ましいこととした。

温度・湿度・換気・騒音

事務所衛生基準規則を参照するよう指示されています。

項目基準根拠
室の気温18度以上28度以下になるよう努める事務所衛生基準規則5条3項
相対湿度40パーセント以上70パーセント以下になるよう努める同上
室の気流0.5メートル毎秒以下同条2項
二酸化炭素の含有率100万分の1000以下同条1項2号

気温・湿度は「努めなければならない」=努力義務で、気流や二酸化炭素は「しなければならない」=義務です。条文上の書き分けが違います。

点検と清掃

作業者には、日常の業務の一環として、作業開始前又は一日の適当な時間帯に、採光、グレアの防止、換気、静電気除去等について点検させるほか、ディスプレイ、キーボード、マウス、椅子、机又は作業台等の点検を行わせること。

画面の汚れも項目に入っています。

ディスプレイ画面やフィルターには、ほこりや手あかが付着して、画面が見えにくくなったり、室内の湿度が低下すると静電気発生の原因となることもあるので、情報機器作業従事者の日常業務の一環として、湿った布等で画面をきれいにすること。

6. 【核】情報機器作業健康診断

この記事で最も知られていない部分です。

通常の定期健康診断とは別物です

情報機器作業健康診断には、配置前と定期の2つがあります。

対象時期
配置前健康診断新たに情報機器作業を行うこととなった作業者(再配置の者を含む)配置前
定期健康診断情報機器作業を行う作業者1年以内ごとに1回

そして誰が対象になるかは、§3の作業区分で決まります。

作業区分健診の対象者
拘束性があると考えられるもの全ての者
それ以外自覚症状を訴える者のみ

一般健康診断と併せて実施できます

なお、一般定期健康診断(労働安全衛生法第66条第1項に定めるものをいう。)を実施する際に、併せて実施して差し支えない。

逆に言えば、一般健康診断とは別の枠組みです。 労働安全衛生法66条に基づく法定の特殊健康診断ではなく、通達に基づくものという位置づけになります。

検査項目

区分項目
業務歴の調査過去の情報機器作業の業務歴
既往歴の調査—
自覚症状の有無の調査①眼疲労を主とする視器に関する症状 ②上肢、頸肩腕部及び腰背部を主とする筋骨格系の症状 ③ストレスに関する症状
眼科学的検査視力検査(遠見視力・近見視力)、屈折検査ほか
筋骨格系に関する検査上肢の運動機能、圧痛点等の検査

近見視力(手元の視力)を測るのが、通常の定期健康診断との大きな違いです。 一般の定期健康診断で測るのは遠見視力だけですが、パソコン作業で使うのは手元の視力です。

通常、50cm視力を測定するが、普段の情報機器作業距離がより近い場合には30cm視力を測定することが望ましい。

近見視力は、片眼視力(裸眼又は矯正)で両眼ともおおむね0.5以上となることが望ましい。

40歳以上には追加項目があります

定期健康診断の眼科学的検査には、こう書かれています。

40歳以上の者に対しては、調節機能検査及び医師の判断により眼位検査。ただし、自覚症状の有無の調査において特に異常が認められず、遠見視力又は近見視力がいずれも、片眼視力(裸眼又は矯正)で両眼とも0.5以上が保持されている者については、省略して差し支えない。

老眼が始まる年代を意識した項目です。省略できる条件も明示されています。

省略できる条件は他にもあります

検査省略できる場合
屈折検査問診で特に異常が認められず、5m視力・近見視力がいずれも片眼視力(裸眼又は矯正)で両眼ともおおむね0.5以上が保持されている者
筋骨格系に関する検査問診において、当該症状に異常が認められない場合

自覚症状がなければ筋骨格系の検査は省略できます。 全員にフルセットの検査が必要、というわけではありません。

検査日は分けても構いません

a、b及びcの調査並びにd及びeの検査の各検査項目については、それぞれの実施日が異なっても差し支えない。

ドライアイへの言及

ドライアイは、情報機器作業により症状が発現する可能性があるため、問診において眼乾燥感、異物感、痛み、間欠的な見づらさを訴える場合は、程度に応じて専門医の受診を指導する。

悪化要因も挙げられています。

コンタクトレンズの装用、湿度の低下、眼に直接当たる通風、ディスプレイ画面が高すぎて上方視することにより、過度にまぶたを開く場合、読み取りにくい画面の凝視等によるまばたきの減少等

画面の高さがドライアイに効いてくるという指摘は、実務で使えます。

事後措置

産業医が作業者の健康を確保するため必要と認める場合は、作業の変更、作業時間の短縮、作業上の配慮等の健康保持のための適切な措置を講じること。

ストレス症状が認められた場合の記述もあります。

ストレス等の症状が認められた場合については、必要に応じて、カウンセリングの実施、精神科医や心療内科医への受診勧奨等の事後措置を行うこと。なお、健康診断の実施場所における受診者のプライバシー保護についての配慮を十分に行う必要がある。

7. テレワーク・在宅勤務での扱い

自宅には、事務所衛生基準規則もこのガイドラインも「一般には適用されない」

ここは誤解が多いところです。 厚生労働省のページに、テレワークガイドラインの記述が引用されています。

テレワークを行う作業場が、労働者の自宅等事業者が業務のために提供している作業場以外である場合には、事務所衛生基準規則、労働安全衛生規則(一部、労働者を就業させる建設物その他の作業場に係る規定)及び「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」は一般には適用されないが、安全衛生に配慮したテレワークが実施されるよう、これらの衛生基準と同等の作業環境となるよう、事業者はテレワークを行う労働者に教育・助言等を行い、「自宅等においてテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリスト(労働者用)」を活用すること等により、自宅等の作業環境に関する状況の報告を求めるとともに、必要な場合には、労使が協力して改善を図る又は自宅以外の場所(サテライトオフィス等)の活用を検討することが重要である。

整理するとこうなります。

事業者が提供する事務所労働者の自宅等
事務所衛生基準規則適用一般には適用されない
情報機器作業ガイドライン適用一般には適用されない
事業者がやること基準に適合させる同等の環境となるよう教育・助言し、状況の報告を求める

「適用されないから何もしなくてよい」ではありません。 教育・助言と状況把握は求められています。

情報機器ガイドライン側の記述

ガイドライン10(3)にも、テレワークへの配慮事項があります。

労働基準法上の労働者については、テレワークを行う場合においても、労働安全衛生法等の労働基準関係法令が適用されるため、労働安全衛生法等の関係法令等に基づき健康確保のための措置を講じる必要がある。

労働安全衛生法そのものは適用されます。 適用されないのは、事務所という「場」を前提にした事務所衛生基準規則と、このガイドラインの衛生基準です。

実務でどうするか

現実的な進め方は、次の3つに集約されます。

  1. チェックリストで自宅の作業環境を申告してもらう(厚生労働省が様式を公開しています)
  2. 問題があれば、労使で協力して改善するか、サテライトオフィス等の活用を検討する
  3. 貸与する機器を工夫する——外付けディスプレイ、外付けキーボード、ノートパソコンスタンドなど

在宅勤務では、ノートパソコン1台だけという環境になりがちです。 ガイドラインが「長時間の作業には外付け機器が望ましい」としている点を踏まえると、機器の貸与が最も効果の高い対策になります。

8. 50人未満の会社での現実的な進め方

産業医の選任義務がなく、衛生委員会の設置義務もない会社では、どう進めればよいのでしょうか。

ガイドラインは「一律・網羅的にやるな」と言っています

対策を一律かつ網羅的に行うのではなく、それぞれの作業内容や使用する情報機器、作業場所ごとに、健康影響に関与する要因のリスクアセスメントを実施し、その結果に基づいて必要な対策を取捨選択することが必要である。

優先順位も明示されています。

情報機器作業の健康影響が作業時間と拘束性に強く依存することを踏まえ、「5 作業管理」に掲げられた対策を優先的に行うこと。

つまり、機器や什器を買い替える前に、作業時間と休憩の取り方から手を付けるのが正しい順番です。

最小構成で始める4ステップ

#やること所要
1作業区分を決める。 誰がどの作業を1日何時間やっているかを洗い出し、拘束性の有無で2つに分ける半日程度
2一連続作業時間の運用を決める。 「1時間ごとに画面から離れる」を周知する。他業務への切り替えでも構いません周知のみ
3照度を測る。 照度計アプリでも傾向はつかめます。書類とキーボードの上で300ルクスを下回っていないか1時間程度
4健診に項目を足す。 拘束性のある作業者がいれば、定期健康診断に近見視力・屈折検査等を追加できないか健診機関に相談する見積り依頼

衛生推進者を置いている会社では

常時10人以上50人未満の事業場には、衛生推進者(または安全衛生推進者)の選任義務があります。ガイドラインは、衛生委員会がない事業場について次のように書いています。

その他の事業場においては、事業者、衛生推進者、職場の責任者等が主体となって進められることとなる。

外部資源も示されています

事業場におけるこれらの活動をより効果的に進めるためには、必要に応じ、産業保健総合支援センター、地域産業保健センター、労働衛生コンサルタント等の活用を図ることが望まれる。

50人未満の事業場は、地域産業保健センターのサービスを無料で利用できる場合があります。 まずはそちらを確認されることをおすすめします。

労働衛生教育も求められています

ガイドラインは、作業者向けと管理者向けの2種類の教育内容を示しています。

対象内容
作業者ガイドラインの概要/作業管理(作業計画・方法、作業姿勢、ストレッチ・体操など)/作業環境管理(情報機器の種類・特徴・注意点)/健康管理(疲労、視覚への影響、筋骨格系への影響、メンタルヘルスなど)
管理者上記に加えて、労働災害統計、作業環境(作業空間、什器、採光・照明、空調など)、健康相談・健康診断の受け方と事後措置

新たに情報機器作業に従事する作業者に対しては、情報機器作業の習得に必要な訓練を行うこと。なお、教育及び訓練を実施する場合は、計画的に実施するとともに、実施結果について記録することが望ましい。

9. 高齢の作業者・障害のある作業者への配慮

高齢者

高年齢の作業者については、照明条件やディスプレイに表示する文字の大きさ等を作業者ごとに見やすいように設定するとともに、過度の負担にならないように作業時間や作業密度に対する配慮を行うことが望ましい。

また、作業の習熟の速度が遅い作業者については、それに合わせて追加の教育、訓練を実施する等により、配慮を行うことが望ましい。

解説には、照明の工夫も挙げられています。

照明機器等も、天井に配置した全体照明とは別に必要となる場合は、局所に作業用照明機器を配置することにより個人の特性に配慮した照度条件を実現することが可能となる。

障害等を有する作業者

キーボードとマウスなどが使用しにくい障害等を有する者には、必要な音声入力装置等を使用できるようにするなどの必要な対策を講じること。

適切な視力矯正によってもディスプレイを読み取ることが困難な者には、拡大ディスプレイ、弱視者用ディスプレイ等を使用できるようにするなどの必要な対策を講じること。

よくある質問

Q. 情報機器作業健康診断は、やらないと法律違反になりますか?

ガイドラインは通達であり、法令ではありません。実施しないこと自体に罰則はありません。ただし、労働基準監督署の指導の根拠となり、健康障害が生じた際に事業者が必要な措置を講じていたかの判断材料にもなります。拘束性のある作業がある場合は、実施をご検討ください。

Q. 一般の定期健康診断と一緒に受けさせてよいですか?

はい。ガイドラインに「一般定期健康診断を実施する際に、併せて実施して差し支えない」と明記されています。健診機関に「情報機器作業健診の項目を追加できるか」と相談するのが実務的です。

Q. 事務職は全員が健診の対象になりますか?

いいえ。ガイドラインの別紙では、文書作成・企画立案・資料作成・経理・庶務は、4時間以上でも「自覚症状を訴える者のみ健診対象」の区分に例示されています。全員が対象になるのは、コールセンター、データ入力、CAD、校正・編集など、作業中に裁量で休憩や姿勢変更ができない作業です。

Q. 「1時間ごとに10分から15分の休憩」を与える必要がありますか?

「休憩」ではありません。ガイドラインは作業休止時間を「いわゆる休憩時間ではない」と明記しており、他の業務を行う時間でも構わないとしています。電話対応や書類整理など、画面から目を離す作業への切り替えで足ります。

Q. 在宅勤務の社員の自宅まで、会社が環境を整える義務がありますか?

事務所衛生基準規則も情報機器作業ガイドラインも、自宅等には一般には適用されません。ただしテレワークガイドラインは、同等の作業環境となるよう教育・助言を行い、チェックリスト等で状況の報告を求めることを求めています。機器の貸与や、サテライトオフィスの活用を検討する会社が多くみられます。

Q. 産業医がいない会社は、作業区分を誰が決めればよいですか?

ガイドラインは「産業医等の専門家の意見を聴きつつ、衛生委員会等で」区分するとしています。衛生委員会がない50人未満の事業場では、事業者・衛生推進者・職場の責任者が主体となると解説に書かれています。判断に迷う場合は、産業保健総合支援センターや地域産業保健センター、産業医への相談が使えます。

まとめ

オフィスワークだけの会社でも、やるべきことは整理されています。

#押さえるところ
1情報機器作業には専用のガイドラインがある(基発0712第3号・令和3年12月1日一部改正)
2パート・派遣・臨時職員も区別なく対象
3作業区分は「4時間」と「拘束性」の2軸。4時間以上でも企画・経理・庶務は「それ以外」
4一連続1時間・作業休止10分から15分。作業休止は休憩時間ではない
5書類とキーボードの上で300ルクス以上。画面の上端は眼の高さかやや下、視距離40cm以上
6情報機器作業健康診断は近見視力を測る。40歳以上には調節機能検査
7自宅には事務所衛生基準規則もガイドラインも一般には適用されない。同等の環境となるよう教育・助言と状況把握を
8機器を買う前に、作業時間と休憩の取り方から。ガイドライン自身が作業管理を優先せよと書いている

参考・出典

  • 厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて」基発0712第3号(令和元年7月12日)/一部改正 基発1201第7号(令和3年12月1日)
  • 事務所衛生基準規則(昭和47年労働省令第43号)第5条・第10条
  • 厚生労働省「自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備」
  • 厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(令和3年3月25日付け基発0325第2号・雇均発0325第3号)
  • 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第66条第1項

本記事は2026年9月15日時点の情報に基づいています。 法令・通達は改正されることがありますので、実務では最新の原文をご確認ください。