この記事でわかること
- 産業医の「スポット利用(単発面談)」とは何か、嘱託契約との違い
- どんな場面で使えるのか(4つの典型ケース)
- 法律上の位置づけ(法定の面接指導との違い)
- 費用の考え方と、申込みから所見書までの流れ
産業医と契約していない会社の方へ(この記事の執筆元)
筆者は現役の医師・産業医です。株式会社MeIXでは、信頼できる産業医ネットワークにより、オンラインの単発面談(スポット面談)から嘱託・顧問契約までを提供しています。「1回だけ相談したい」というご依頼にも対応しています。→ 30分の無料オンライン相談はこちら
結論:スポット利用とは「契約を結ばずに、必要なときだけ1回単位で医師の面談を使う」方法
産業医のスポット利用(単発面談)とは、月額の嘱託契約を結ばずに、必要が生じたときに1回単位で医師の面談を依頼する使い方です。オンラインで実施できるため、産業医がいない事業場でも、その場で医師の面談ルートを確保できます。
対象になりやすいのは次のような会社です。
- 従業員50人未満で、産業医の選任義務がない事業場
- 本社には産業医がいるが、50人未満の支社・営業所には医師がいない企業
- 月額契約を結ぶほどの頻度はないが、個別の相談先を持っておきたい会社
嘱託契約とスポット利用の違い
| 嘱託(顧問)契約 | スポット利用(単発面談) | |
|---|---|---|
| 契約形態 | 月額・年間 | 1回ごと |
| 主な内容 | 職場巡視、衛生委員会、面接指導、健診事後措置など継続的な健康管理 | 個別の面談と、その結果に基づく就業上の意見 |
| 向いている会社 | 常時50人以上の事業場(選任義務あり) | 50人未満の事業場、産業医のいない拠点、単発の相談 |
| 費用 | 毎月発生 | 使ったときだけ発生 |
なお、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、事業場ごとに産業医を選任する義務があります(労働安全衛生法第13条第1項、労働安全衛生法施行令第5条)。この義務がある事業場では、スポット利用は選任の代わりにはなりません。
使いどころ:4つの典型ケース
ケース1:従業員から不調の相談や診断書が出てきた
50人未満の事業場でも、健康への配慮が必要な労働者については、事業者が必要な措置を講ずるよう努める義務があります(労働安全衛生法第66条の9)。医師の面談を通じて、就業を続けられるか、続けるならどんな配慮が必要かを整理できます。
ケース2:休職・復職の判断材料がほしい
主治医の診断書は治療の観点で書かれるため、「その会社のその仕事に就けるか」までは書かれていないことがあります。産業医は業務内容・労働時間・職場環境をふまえて、就業区分(通常勤務/就業制限/要休業)の観点から意見を述べます。
ケース3:長時間労働者から面接の申出があった
時間外・休日労働が1か月あたり80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者から申出があった場合、事業者は医師による面接指導を行わなければなりません(労働安全衛生法第66条の8、労働安全衛生規則第52条の2)。この義務に事業場の人数要件はありません。
ケース4:健康診断で所見のあった従業員がいる
健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者については、就業上の措置について医師の意見を聴かなければなりません(労働安全衛生法第66条の4)。これも全事業場の義務です。
法定の面接指導との関係を整理する
| 区分 | 根拠 | 要件 | 事業場の人数要件 |
|---|---|---|---|
| 長時間労働者の面接指導 | 安衛法66条の8 | 月80時間超+疲労の蓄積+本人の申出 | なし(全事業場) |
| 高ストレス者の面接指導 | 安衛法66条の10第3項 | 高ストレスの要件該当+本人の申出 | 現在は50人以上。令和10年(2028年)4月1日から50人未満にも拡大 |
| 健診有所見者の意見聴取 | 安衛法66条の4 | 健診で異常の所見 | なし(全事業場) |
| 上記以外で健康への配慮が必要な労働者への措置 | 安衛法66条の9 | ― | なし(努力義務) |
スポット面談は、この表のどれにも使えます。 法定の面接指導に該当する場合は所定の報告書を作成し、該当しない場合(66条の9の領域)は就業上の意見をまとめた所見書を交付する、という整理になります。
費用の考え方
株式会社MeIXのスポット面談は、面談時間だけでなく所見書の作成時間まで含めた「業務時間」を基準にしています。
| 業務時間 | 料金(税別) |
|---|---|
| 基本料金(業務時間30分まで) | 2.0万円 |
| 超過(15分ごと) | +0.75万円 |
| 上限(業務時間60分) | 3.5万円 |
面談は15〜20分程度が目安です。開始・終了時刻と所見書の作成時間は所見書または請求書に記載するため、会社側が把握できない時間を根拠なく請求されることはありません。→ 料金の詳細はリモート産業医のページ
申込みから所見書までの流れ
- お問い合わせ(フォーム)→ 30分の無料オンライン相談で状況をうかがいます
- 業務委託契約を電子契約で締結
- 申込書(1枚)をご記入・返送 → 料金と実施日時の案をご返信 → 承諾で確定
- 事前情報シート(会社ご記入)と事前問診票(ご本人記入)をお送りします
- オンライン面談(Zoom/Microsoft Teams/Google Meet等)
- 簡易所見書(PDF)を交付。就業区分の意見・必要な配慮・業務時間を記載します
所要日数は、契約・書類のやり取りと医師の空き状況によって変わります。お急ぎの事情がある場合は、お問い合わせの際にその旨をお知らせください。
依頼する前に押さえておきたい3つの注意点
1. 記録の保存は事業者(会社)の義務
法定の面接指導を行った場合、その結果の記録を作成し5年間保存するのは事業者の義務です(労働安全衛生規則第52条の6、第52条の18)。当社は所見書の交付により必要な情報を提供しますが、保存自体は会社側で行っていただきます。
2. ご本人が書いた問診票は会社に共有しない
健康情報は機微な個人情報です。当社の運用では、ご本人が記入する問診票は会社を経由せず直接受け取ることができ、会社に共有するのは就業上必要な範囲の意見に限定します。
3. 産業医は診断・治療を行う立場ではない
産業医の役割は、就業と健康の両立の観点から事業者に意見を述べることです。治療は主治医が担います。両者は役割が異なるため、必要に応じて主治医との情報連携を検討します。
無料で使える公的窓口との使い分け
従業員50人未満の事業場は、地域産業保健センター(地さんぽ)で、長時間労働者・高ストレス者への医師の面接指導や、健診有所見者への健康相談などを無料で利用できます。まずは無料で対応できる範囲を確認し、日程・回数・範囲の制約で足りない部分を民間サービスで補う、という組み合わせが現実的です。
| 地域産業保健センター | スポット面談(民間) | |
|---|---|---|
| 費用 | 無料 | 1回2万円〜(税別) |
| 対象 | 50人未満の事業場 | 制限なし |
| 特徴 | 回数・範囲・日程に制限がある | 日程・内容を個別に調整できる |
よくある質問
Q1. 産業医と契約していなくても、1回だけ面談を頼めますか?
A1. はい。業務委託契約を締結いただければ、1回単位でご依頼いただけます。継続契約への移行は任意です。
Q2. 法定の面接指導もスポットで頼めますか?
A2. はい。長時間労働者(安衛法66条の8)・高ストレス者(同66条の10)への医師の面接指導も、同じ料金体系で承ります。所定の報告書をお付けします。
Q3. オンラインでも法的に問題ありませんか?
A3. 法定の面接指導については、厚生労働省が「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について」(平成27年9月15日付け基発0915第5号。令和2年11月19日付け基発1119第2号による改正後)で留意事項を示しており、映像と音声で相互に確認できる機器を用いるなどの要件を満たせば実施できます(音声のみの電話による面接指導は認められていません)。
Q4. 面談の内容は会社に伝わりますか?
A4. ご本人が記入した問診票の内容そのものは会社に共有しません。会社にお伝えするのは、就業上必要な範囲の意見に限定します。
Q5. 50人未満でも産業医を選任しなければいけませんか?
A5. 選任義務は常時50人以上の事業場です(安衛法13条1項、安衛令5条)。50人未満の事業場は、医師等に健康管理の全部または一部を行わせるよう努める義務にとどまります(安衛法13条の2)。
まとめ
産業医のスポット利用は、「選任義務はないが、医師に相談したい場面はある」という会社にとって現実的な選択肢です。長時間労働者の面接指導や健診の意見聴取のように、人数にかかわらず全事業場に課される義務もあるため、相談先を持たないままにしておくリスクは小さくありません。まずは無料の公的窓口で対応できる範囲を確認し、足りない部分をスポット面談で補うところから始めるのがおすすめです。
株式会社MeIXは、オンラインの単発面談から嘱託・顧問契約まで、必要な分だけご利用いただけます。→ 30分の無料オンライン相談はこちら
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執筆・監修
小正 晃裕(医師・産業医/循環器内科専門医・不整脈専門医・両立支援コーディネーター/株式会社MeIX 代表取締役CEO)
参考・出典:労働安全衛生法第13条・第13条の2・第66条の4・第66条の8・第66条の9・第66条の10/労働安全衛生法施行令第5条/労働安全衛生規則第52条の2・第52条の6・第52条の18(e-Gov法令検索)/厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月)/地域産業保健センター(こころの耳・厚生労働省)

