この記事でわかること

  • 健康診断のあとに事業者が行うべき「医師の意見聴取」の中身(期限・記載・情報提供)
  • 健診機関の「要再検査」判定と、産業医の「就業上の意見」の違い
  • 産業医と契約していない会社が意見聴取を行う3つの方法

健診を実施したあと、そのままになっていませんか(この記事の執筆元)

筆者は現役の医師・産業医です。株式会社MeIXでは、信頼できる産業医ネットワークにより、健診結果に基づく就業判定・医師の意見聴取を、産業医契約がない会社にも提供しています。→ 30分の無料オンライン相談はこちら

結論:意見聴取は「50人以上の会社の話」ではありません

健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者については、健康を保持するために必要な措置について、医師または歯科医師の意見を聴かなければなりません

事業者は、……健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない(労働安全衛生法第66条の4)

この条文に事業場の人数要件はありません。産業医の選任義務がない50人未満の事業場にも、同じように課されています。

実務でやるべきことは3つ

労働安全衛生規則第51条の2は、意見聴取の方法を具体的に定めています。

  1. 健康診断が行われた日から3か月以内に行う(第1項第1号)
  2. 聴取した医師または歯科医師の意見を健康診断個人票に記載する(第1項第2号)
  3. 医師等から意見聴取に必要な業務の情報を求められたときは、速やかに提供する(第3項)

そのうえで、意見を勘案して必要があると認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じます(安衛法66条の5第1項)。

実施率のデータ:10〜29人規模では22.7%

厚生労働省「令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)」(第9表)によると、一般健康診断を実施し所見のあった労働者がいる事業所のうち、「健康管理等について医師又は歯科医師から意見を聴いた」事業所の割合は次のとおりです。

事業所規模医師等から意見を聴いた地域産業保健センターの医師等から意見を聴いた
10〜29人22.7%8.2%
30〜49人33.0%14.5%
50〜99人52.2%4.1%
100〜299人60.2%2.1%
全体31.2%8.2%

同調査では、一般健康診断を実施した事業所のうち所見のあった労働者がいる事業所の割合は、10〜29人規模で60.4%、30〜49人規模で71.6%でした。所見のある従業員は小さな会社にもいるのに、医師の意見を聴くところまで進んでいる会社は多数派ではないというのが現状です。

「要再検査」と「就業上の意見」は別物

健診機関から返ってくる判定と、産業医が述べる意見は、目的が異なります。

健診機関の判定医師の就業上の意見
見ているもの検査値の医学的な評価その労働者が、その業務を今のまま続けてよいか
出てくる言葉要経過観察/要再検査/要精密検査/要治療通常勤務/就業制限/要休業
使う情報検査結果検査結果+業務内容・労働時間・作業環境
法的な位置づけ健康診断の実施(安衛法66条)意見聴取(安衛法66条の4)

「要再検査」の指示を本人に伝えるだけでは、安衛法66条の4が求める意見聴取を行ったことにはなりません。だからこそ、規則は業務に関する情報を医師に提供することまで定めています(安衛則51条の2第3項)。

高所作業・運転業務・深夜業・重量物の取り扱いなど、業務内容によって同じ検査値でも判断が変わります。ここが、健診機関の判定では代替できない部分です。

産業医がいない会社の3つの選択肢

選択肢1:地域産業保健センター(地さんぽ)を使う(無料)

独立行政法人労働者健康安全機構が全国350か所(おおむね労働基準監督署単位)に設置し、登録産業医が配置されています。50人未満の事業場は、健康診断結果についての医師の意見聴取を無料で受けられます。

ただし、厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月)には、「いわゆる大企業の営業所等である小規模事業場で、本社等で選任されている産業医等の協力を得られるような場合は、ご利用いただけないことがあります」との記載があります。多拠点企業の小規模拠点は、まず利用可否の確認が必要です。

選択肢2:就業判定・意見聴取だけを外部の医師に依頼する

産業医契約を結ばずに、健診結果の就業判定・医師の意見聴取だけを人数分依頼する方法です。当社では1名1,000円〜(人数規模別・税別)で承っています。有所見者への結果説明・受診勧奨の面談が必要な場合は、オンラインの個別面談と組み合わせます(費用はお見積りいたします)。→ 健診事後対応パックの詳細はこちら

選択肢3:リモート産業医の顧問・嘱託契約を結ぶ

健診の事後措置だけでなく、長時間労働者の面接指導や健康相談まで含めて依頼したい場合は、月額契約のほうが扱いやすくなります(リモート産業医は月3万円〜・税別)。

意見聴取をスムーズに進めるための準備

  • 健診結果を早めに揃える:3か月以内という期限は、健康診断が行われた日から起算します
  • 業務情報を1枚にまとめておく:職種・作業内容・労働時間(時間外・深夜業の有無)・作業環境(高所・運転・重量物・暑熱等)を整理しておくと、判定が速く正確になります
  • 個人票への記載欄を確認する:意見は健康診断個人票に記載する必要があります
  • 記録の保存:健康診断個人票は5年間保存が必要です(労働安全衛生規則第51条)

よくある質問

Q1. 従業員が30人ですが、医師の意見聴取は必要ですか?

A1. 必要です。安衛法66条の4に事業場の人数要件はありません。産業医の選任義務(50人以上)とは別の義務です。

Q2. 健診機関の「要再検査」の判定書があれば足りますか?

A2. 足りません。健診機関の判定は検査結果に対する医学的評価であり、法が求めているのは就業上の措置についての医師の意見です。意見は健康診断個人票に記載する必要があります。

Q3. 期限はありますか?

A3. 健康診断が行われた日から3か月以内です(安衛則51条の2第1項第1号)。労働者が自ら受けた健康診断の結果を提出した場合は、提出された日から2か月以内です(同条第2項)。

Q4. 産業医と契約していなくても依頼できますか?

A4. できます。50人未満の事業場は地域産業保健センターの無料支援を利用できるほか、外部の医師に就業判定・意見聴取のみを依頼することも可能です。

Q5. 費用はどのくらいですか?

A5. 当社の場合、就業判定・医師の意見聴取は1名1,000円〜(人数規模別・税別)です。有所見者への結果説明・受診勧奨の面談も承っています(費用はお問い合わせください)。

まとめ

健康診断は、実施して結果を配って終わりではありません。所見のあった従業員について医師の意見を聴き、個人票に記載し、必要な措置を講じるところまでが法律の求める一連の流れで、これは事業場の人数を問いません。データ上、この部分が抜けている小規模事業場は少なくありません。まずは管轄の地さんぽで対応できる範囲を確認し、足りない部分を外部の医師に依頼する形から始めるのが現実的です。

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執筆・監修

小正 晃裕(医師・産業医/循環器内科専門医・不整脈専門医・両立支援コーディネーター/株式会社MeIX 代表取締役CEO)

参考・出典:労働安全衛生法第66条・第66条の4・第66条の5/労働安全衛生規則第51条・第51条の2(e-Gov法令検索)/厚生労働省「令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要【事業所調査】」第9表/厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月)/地域産業保健センター(こころの耳・厚生労働省)