この記事でわかること

  • 「医師監修」に法律上の定義はないという前提
  • 監修者が実際に確認している4つのこと
  • 監修と執筆・寄稿の違い
  • なぜ医師監修が求められるのか(法規の観点と、検索評価の観点)
  • 「監修」と表示すれば検索順位が上がるわけではないという、Googleの公式見解

医療記事の監修をお探しの方へ(この記事の執筆元)

筆者は現役の医師です。株式会社MeIXでは、各診療科の医師による医療記事の監修を提供しています。医学的な妥当性の確認に加えて、薬機法・医療広告ガイドラインの表現チェックまで含めて対応します。→ 医師監修サービスのご案内

「医師監修」に法律上の定義はありません

まず押さえておきたい前提があります。

「医師監修」という言葉に、法律や公的な基準による定義はありません。 資格制度もなければ、満たすべき要件の一覧もありません。誰がどこまで確認すれば「監修」と名乗ってよいか、という線引きは法律上存在しないのです。

このため実務では、次のような幅が生じています。

実態表示
医師が全文を読み、事実誤認と表現を指摘し、修正を確認した「医師監修」
医師が目を通し、明らかな誤りだけを指摘した「医師監修」
医師の名前だけを借りた「医師監修」

表示は同じでも、中身は同じではありません。 発注する側が「監修とは何をしてもらうことか」を定義しないまま依頼すると、期待した確認が行われないまま「医師監修」の表示だけが付く、という事態が起こり得ます。

だからこそ、依頼の前に範囲を決めておくことが実務上いちばん重要になります。

監修者が実際に確認していること

弊社が監修を行う際、確認しているのは次の4点です。

① 医学的な妥当性

記載されている内容が、現在の医学的な理解と整合しているか。古くなった知見が残っていないか。疾患名・薬剤名・数値の誤りがないか。

② 出典の妥当性

書かれている根拠が、実際にその出典で確認できるか。孫引きになっていないか。一次情報にたどり着けるか。出典として示されているものが、その主張を支えていないケースは少なくありません。

③ 表現が法規に触れないか

薬機法・医療広告ガイドライン・景品表示法の観点から、保証・誇大・推せんと読める表現がないか。これは医学的な正しさとは別の軸の確認です。

具体的にどこに赤が入るかは、医療記事の薬機法チェック|監修者が実際に赤を入れる箇所で条文とあわせて整理しています。

④ 読者が誤解しない構成になっているか

一文ずつは正確でも、並べ方によって誤った印象を与えることがあります。受診が必要な症状を軽く見せていないか、自己判断を促していないか。読者の受診機会を奪う構成になっていないかは、医師が特に注意して見る点です。

監修と執筆・寄稿はどう違うか

混同されやすい3つを整理します。

監修執筆寄稿
誰が文章を書くかライター・編集者ライター・編集者医師本人
医師の関与出来上がった原稿を確認・指摘する関与しない医師が一次的な書き手
表示「監修:〇〇」医師名なし「執筆:〇〇」「著:〇〇」
医師が負う範囲確認した範囲の内容記事全体

監修は「書く」工程ではなく「確認する」工程です。 弊社は監修のみを提供しており、記事の執筆・構成設計は承っていません。依頼前に準備しておくことは、医師監修を依頼する前に準備しておくこと|発注側のチェックリストにまとめています。

なぜ医師監修が求められるのか

理由は大きく2つあります。法規の観点と、検索評価の観点です。この2つは別物なので、分けて説明します。

① 法規の観点

医薬品・化粧品・健康食品などを扱う記事には、薬機法の規制がかかります。

 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。

(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第66条第2項)

注目していただきたいのは、この条文が監修者名を出す記事にとって「守り」ではなく「制約」だという点です。医師の名前を出すことは、記事の信頼性を高める一方で、この条文の射程に入るリスクを持ち込む行為でもあります。

厚生労働省の医薬品等適正広告基準(平成29年9月29日付け薬生発0929第4号)は、さらに具体的に定めています。

10 医薬関係者等の推せん

医薬関係者、(中略)その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は学会を含む団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告を行ってはならない。

つまり、「監修者名を出せば安全になる」のではありません。 監修者名を出すからこそ、保証・推せんと読めない構成にする必要が生じます。ここを設計できるかどうかが、監修の実務的な価値の一つです。

② 検索評価の観点 ── ただし「監修=順位が上がる」ではありません

ここは誤解が多いところなので、Googleの公式ドキュメントから引用します。

Googleは、コンテンツの自己評価項目の一つとして次を挙げています。

このコンテンツは、確実にトピックを熟知している専門家または愛好家によって執筆され、レビューされていますか

(Google 検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」)

「レビュー(確認)されているか」が評価の観点に含まれていることは事実です。また、健康に関わるトピックについては次のように述べられています。

Google のシステムでは、人の健康や安全、経済的安定、社会の福利厚生に大きく影響する可能性のあるトピックについては、E-E-A-T が優れたコンテンツを特に重視します。Google はこうしたトピックを「Your Money or Your Life」、または略して YMYL と呼びます。

(同上)

医療・健康分野はYMYLに該当します。

ただし、同じドキュメントには次の一文もあります。

E-E-A-T 自体はランキングに直接影響する要因ではありませんが、E-E-A-T が優れているコンテンツを特定できる要素の組み合わせを使用することは有効です。

(同上)

E-E-A-Tはランキング要因そのものではない、とGoogleが明記しています。「監修者を立てればE-E-A-Tが上がり、順位が上がる」という説明は、この記述と整合しません。

また、Googleは「誰が」の観点として次を挙げています。

– コンテンツの著者が誰であるかを明確にしていますか。

– ページの然るべき場所にバイラインを記載していますか。

– バイラインが著者や関係者についての詳細につながるものであり、その人たちのバックグラウンドや専門分野に関する情報をもたらすものになっていますか。

(同上)

つまり、名前を置くだけでは足りず、その人が何者かにたどり着ける形になっていることが求められています。監修者名を記載する場合、資格・経歴・プロフィールへの導線までを設計する必要がある、という理解が実態に近いと考えられます。

まとめると、監修は「順位を上げる施策」ではなく、「読者と規制の両方に対して、内容の確からしさを担保する工程」です。 検索評価はその結果として付いてくることがある、という順序で捉えるのが正確です。

「監修」と書けば信頼されるわけではない

形だけの監修には、次のリスクがあります。

リスク内容
法規上のリスク確認していない内容に医師名が付き、保証・推せんと読まれる
監修者側のリスク記事の内容について、監修者が説明を求められる場面がある
読者に対するリスク「医師監修」を根拠に読者が判断し、誤った情報が伝わる

監修者名は、読者にとって「この内容は確認されている」というシグナルです。 そのシグナルが実態を伴っていない場合、損なわれるのは記事の信頼だけではありません。

監修を依頼するときに決めておくこと

「監修」に定義がない以上、当事者間で定義するしかありません。 最低限、次の3つは事前に合意しておくことをおすすめします。

#決めること具体例
1確認の範囲医学的妥当性のみか、法規の表現チェックまで含むか
2修正の扱い指摘を反映する義務があるか、判断は誰が行うか
3表示の範囲監修者名をどのページに、どの期間、どの粒度で出すか

特に②の修正の扱いは、後から揉めやすい点です。監修者が指摘した箇所を掲載側が反映しないまま「監修:〇〇」と表示すると、実態と表示がずれます。指摘の反映を前提とするのか、参考意見として扱うのかを、依頼の段階で決めておいてください。

よくある質問

Q. 「医師監修」と表示するのに必要な資格や届出はありますか

法律上の定義や届出の制度はありません。だからこそ、確認の範囲を当事者間で定義しておく必要があります。

Q. 監修者名を出せば検索順位は上がりますか

Googleは「E-E-A-T自体はランキングに直接影響する要因ではない」と明記しています。監修は順位を上げる施策ではなく、内容の確からしさを担保する工程です。

Q. 監修と執筆はどう違いますか

監修は出来上がった原稿を確認する工程、執筆は文章を書く工程です。弊社は監修のみを提供しています。

Q. 医師の名前を出すとリスクが増えるのですか

薬機法第66条第2項は、医師その他の者が効能効果を保証したものと誤解されるおそれがある記事を規制しています。名前を出す以上、保証・推せんと読めない構成にする必要があります。

Q. 監修を受ければ法的な責任は回避できますか

監修は表現上のリスクを下げる工程であり、免責を保証するものではありません。最終的な掲載判断は掲載主体が行うことになります。

Q. どの範囲まで確認してもらえますか

弊社では、医学的妥当性・出典の妥当性・法規に照らした表現・読者が誤解しない構成の4点を確認しています。

まとめ

  • 「医師監修」に法律上の定義はありません。 確認の範囲は当事者間で定義する必要があります
  • 監修者が見ているのは、医学的妥当性・出典の妥当性・法規に照らした表現・誤解を生まない構成の4点です
  • 監修は「書く」工程ではなく「確認する」工程です
  • 薬機法第66条第2項は、医師名を出す記事にとって守りではなく制約として働きます
  • Googleは「専門家によって執筆され、レビューされているか」を評価観点に挙げる一方、「E-E-A-T自体はランキングに直接影響する要因ではない」とも明記しています
  • 依頼前に「確認の範囲」「修正の扱い」「表示の範囲」の3点を決めておいてください

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参考・出典

  • 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第66条(e-Gov法令検索)
  • 医薬品等適正広告基準(平成29年9月29日付け薬生発0929第4号 厚生労働省医薬・生活衛生局長通知 別紙)
  • Google 検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」

本記事に記載の法令・通達は、2026年9月16日時点の内容を確認しています。法令・通達は改正されることがありますので、実務では最新の原文をご確認ください。