この記事でわかること
- ストレスチェックの実施方法・全体の流れ(準備 → 実施 → 事後措置の3段階)
- 「実施者」に誰がなれるか、50人未満の会社がどう確保するか
- 高ストレス者の面接指導・集団分析・記録の保存など、押さえるべき実務ポイント
- 2028年4月の義務化に向けて、50人未満の事業場が今から準備できること
50人未満で「ストレスチェックの進め方が分からない」会社の方へ(この記事の執筆元)
筆者は現役の医師・産業医です。当社MeIXは、リモート産業医顧問とストレスチェックをまとめて提供し、実施者の確保から高ストレス者の面接指導まで一気通貫で対応しています。従業員50人未満・2028年に向けた準備段階のご相談も歓迎です。→ 30分の無料オンライン相談はこちら
まず全体像:ストレスチェックは「準備・実施・事後措置」の3段階
ストレスチェックは、調査票を配って終わりではありません。厚生労働省の実施マニュアルでも、制度は大きく ①準備段階 → ②実施段階 → ③実施後(事後措置)段階 の3つに分けて整理されています。全体の流れは次のとおりです。
- 【準備】 事業者による方針の表明 → 衛生委員会等での調査審議 → 実施体制・実施者の決定 → 対象者・調査票・高ストレス者の基準・情報の取扱いルールを決める
- 【実施】 労働者への説明・受検 → 調査票の記入 → 実施者による評価(高ストレス者の判定)→ 本人へ結果を通知
- 【事後措置】 高ストレス者からの申出 → 医師による面接指導 → 事業者への就業上の措置に関する意見 → 集団分析・職場環境改善 → 記録の保存
まず、この3段階を頭に入れておくと、以降の実務が理解しやすくなります。従業員50人未満の会社でも、義務化後にやるべきことの骨格は50人以上と同じです(根拠:労働安全衛生法第66条の10、労働安全衛生規則第52条の9〜第52条の21)。義務化の背景や施行日の詳細は「【2028年4月施行】従業員50人未満にもストレスチェック義務化へ」で解説しています。
【準備段階】実施前に決めておくこと
1. 事業者が「実施する」ことを表明する
まず経営トップが、ストレスチェックを実施する方針を社内に示します。制度の目的は、労働者自身のストレスへの気づきを促し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ(一次予防)ことにあります。「評価・処遇のためではない」と明確にすることが、正直な回答と受検率の向上につながります。
2. 衛生委員会等で実施方法を調査審議する
50人以上の事業場には衛生委員会の設置義務がありますが、50人未満でも「関係労働者の意見を聴く機会」を設けることが求められます。ここで、実施時期・対象者・使う調査票・高ストレス者の選定基準・結果の取扱いといった運用ルールを決め、社内規程として明文化します。
3. 実施体制と「実施者」を決める
ストレスチェックには、役割の異なる複数の関係者がいます。
- 実施者:ストレスチェックの企画・結果評価を担う専門職。医師、保健師、または厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師・精神保健福祉士・歯科医師・公認心理師がなれます(労働者の健康管理業務に3年以上従事した看護師・精神保健福祉士は研修が免除されます)。調査票の選定、高ストレス者の選定基準の決定、面接指導の要否の確認は、実施者の必須業務です。
- 実施事務従事者:調査票の回収・データ入力・結果送付など、実施者を補助する事務を担う人。事業者が指名します。
- 重要な制限:社長・人事部長など、人事について直接の権限を持つ者は、実施者にも実施事務従事者にもなれません。労働者の不安を取り除き、個人情報を守るための決まりです。
50人未満の事業場は産業医の選任義務がないため、「実施者を誰にするか」が最大の実務ポイントになります(後述)。産業医の選任義務の詳細は「産業医の選任義務はいつから?」を参照してください。
4. 対象者・調査票・高ストレス者の基準を決める
- 対象者:常時使用する労働者(正社員のほか、契約期間・労働時間の要件を満たすパート等を含む)。
- 調査票:国が推奨する「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」が広く使われます。「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3領域を必ず含めることが必要です。
- 高ストレス者の選定基準:国の例示を参考に、実施者の意見を踏まえて事業場ごとに決めます。
【実施段階】受検から結果通知まで
準備が整ったら、労働者に説明したうえで調査票に回答してもらいます。ここで最も重要なのがプライバシーの保護です。
- ストレスチェックの個人結果は、実施者(および実施事務従事者)から本人へ直接通知されます。
- 本人の同意がない限り、事業者は個人結果を知ることができません。同意なく結果を取得したり、受検を強制したりすることはできません。
- 結果を理由に、解雇・雇止め・不利益な配置転換などの不利益取扱いをすることは禁止されています。
この「本人同意が原則」という設計は、50人未満でも変わりません。むしろ従業員数が少ない会社ほど個人が特定されやすいため、外部委託などでプライバシーを守る工夫が重要になります。
【事後措置段階】面接指導・集団分析・記録
1. 高ストレス者への医師の面接指導
高ストレス者と判定され、本人が面接指導を申し出た場合、事業者は医師による面接指導を実施する義務があります(申出は結果通知からおおむね1か月以内が目安)。
- 面接指導は医師が行います。50人未満で産業医がいない場合でも、外部の医師やリモート顧問医などを確保しておく必要があります。
- 面接後、事業者は医師から就業上の措置に関する意見を聴き、必要に応じて労働時間の短縮や配置転換などの措置を検討します。
- 面接指導の申出を理由とした不利益取扱いも禁止です。
「チェックはしたが、高ストレス者が出たときに面接する医師がいない」という状態を避けることが、体制づくりの肝になります。
2. 集団分析と職場環境改善
部署や集団ごとに結果を集計・分析し(集団分析)、職場環境の改善につなげます。集団分析は現在努力義務ですが、実務上は最も効果が出やすいパートです。分析は個人が特定されないよう、原則10人以上の集団を単位に行います。
なお、集団分析を「特定の個人を識別することができない方法で行う」ことを明記する省令改正が、令和9年(2027年)4月1日に施行されます。少人数の会社ほどこの配慮が重要になります。
3. 記録の保存と情報管理
- 事業者は、ストレスチェックと面接指導の記録を作成し、保存する必要があります(面接指導結果の記録は5年間保存)。
- 個人結果などの情報を扱う実施者・実施事務従事者には守秘義務が課されます(違反には罰則)。
- 誰が・どの情報に・どこまでアクセスできるかを、準備段階で定めた情報管理規程に沿って運用します。
50人未満の会社が「実施方法」で最初に決めるべきこと
ここまでが制度の全体像です。50人未満の事業場が実際に進めるとき、最初の分岐は「実施者と面接医師をどう確保するか」です。現実的な選択肢は次の2つです。
- 外部のストレスチェック実施機関に委託する──調査票の配布・回収・判定・結果通知までを外部に任せる方法。少人数の会社でもプライバシーを守りやすいため、厚生労働省のマニュアルでも小規模事業場には外部委託が推奨されています。ただし「受検~集団分析まで」なのか「面接指導まで」なのかで料金・体制が変わります。
- 産業医(リモート顧問医を含む)と契約し、実施者・面接医師を担ってもらう──ストレスチェックと産業医契約を同じ窓口にまとめると、実施者の確保から高ストレス者の面接指導、その後の相談対応までが一気通貫になります。「面接する医師が職場を全く知らない」という分断を避けられるのが利点です。
50人未満は産業医の選任義務がないぶん、義務化に合わせて医師のルートを新たに用意する必要があります。実施者は早い者勝ちの面があるため、体制検討は早めが安全です。
50人未満が使える公的支援(無料)
コストを抑えて始めたい会社は、まず公的支援の活用を検討してください。
- 地域産業保健センター(地さんぽ):全国に設置され、従業員50人未満の事業場を対象に、高ストレス者・長時間労働者への医師の面接指導などを無料で提供しています。
- 産業保健総合支援センター(さんぽセンター・47都道府県):事業者向けに、制度導入の相談・研修を無料で提供しています。
- 小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月公表):厚生労働省が、50人未満向けに体制・進め方を整理した資料。社内ルール例・社内規程例のWord様式も付いています。
ただし公的支援は利用回数や範囲に限りがあり、継続的・包括的な産業保健体制の代わりにはなりません。無料支援で足場を作りつつ、必要に応じて外部委託・顧問契約を組み合わせるのが現実的です。
費用・労基署への報告について
- 費用:受検者数(1名あたり単価)と、高ストレス者への面接指導(医師)の有無で大きく変わります。比較の際は「受検~集団分析まで」か「面接指導まで」かを揃えて見積もりを取るのがコツです。産業医の費用感は「産業医の費用相場はいくら?」もあわせてご覧ください。
- 労基署への報告:現行制度では、常時50人以上の事業場に、年1回の実施と「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」の所轄労働基準監督署への提出が義務づけられています。50人未満の事業場の報告義務の取扱いなど義務化の細部は、施行(令和10年4月1日)に向けて省令・指針等で整備される見込みです。最新の公表情報を確認してください。
実施スケジュールの目安(中小企業向け)
| 時期 | やること |
|---|---|
| 施行の6〜12か月前 | 対象事業場・人数の把握/実施者・面接医師の確保ルート検討/予算化 |
| 3〜6か月前 | 外部委託先または顧問医の選定/社内規程(結果の取扱い・不利益取扱い禁止)の整備 |
| 1〜3か月前 | 実施計画の確定/労働者への説明準備/衛生委員会等での調査審議 |
| 実施月 | 調査票の配布・受検・結果通知 |
| 実施後 | 高ストレス者の面接指導/集団分析・職場改善/記録の保存 |
よくある落とし穴
- 「チェックだけ」で面接医師を用意していない──高ストレス者が申し出たときに面接する医師がいないと、義務を果たせません。実施者と面接医師をセットで確保しましょう。
- 人事権者を実施者にしてしまう──社長・人事部長は実施者・実施事務従事者になれません。役割分担を最初に確認してください。
- 少人数で集団分析をそのまま共有──10人未満の部署の結果は個人が特定されやすく、配慮が必要です。
- 本人同意なく結果を見る──事業者が同意なく個人結果を取得することはできません。運用ルールを事前に固めておきましょう。
よくある質問
Q1. 50人未満でも、実施方法は50人以上と同じですか?
A1. 基本的な流れ(準備 → 実施 → 事後措置)は同じです。違いは、50人未満は産業医の選任義務がないため、実施者や面接医師を新たに確保する必要がある点と、労基署への報告など細部が施行に向けて整備される点です。
Q2. 実施者は社内の人でもいいですか?
A2. 医師・保健師等の要件を満たし、かつ人事権を持たない人であれば可能です。ただし50人未満では要件を満たす人が社内にいないことが多く、外部委託や顧問医の活用が現実的です。
Q3. 高ストレス者が出たら必ず面接するのですか?
A3. 面接指導は、高ストレス者本人が申し出た場合に事業者が実施する義務を負います。全員が自動的に面接になるわけではありませんが、申出に備えて医師を確保しておく必要があります。
Q4. 費用はどのくらいですか?
A4. 受検者数と面接指導の有無で変わります。産業医契約とまとめると割安になるケースが多いです。具体的な相場は費用の解説記事であらためて扱います。
Q5. いつから準備を始めるべきですか?
A5. 令和10年(2028年)4月1日の施行に向け、実施者・面接医師の確保は早い者勝ちの面があります。施行の半年〜1年前から情報収集と体制検討を始めるのが安全です。
まとめ
ストレスチェックは「準備 → 実施 → 事後措置」の3段階で進めます。50人未満の会社でも骨格は同じで、違いは実施者と面接医師をどう確保するかに集約されます。まずは公的支援で足場を作りつつ、外部委託か顧問医契約かを早めに検討しておきましょう。義務化は令和10年(2028年)4月1日施行です。
株式会社MeIXは、リモート産業医顧問とストレスチェックをまとめて提供し、実施者の確保から高ストレス者の面接指導まで一気通貫で対応します。50人未満の「2028年に向けた準備」のご相談も歓迎です。30分の無料オンライン相談はこちら。
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執筆・監修
小正 晃裕(医師・産業医/循環器内科専門医・不整脈専門医・両立支援コーディネーター/株式会社MeIX 代表取締役CEO)
参考・出典:労働安全衛生法第66条の10・労働安全衛生規則第52条の9〜第52条の21(e-Gov法令検索)/厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月)/厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」/厚生労働省「過労死等の労災補償状況」(令和6年度)/労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)・同施行期日を定める政令(令和8年政令第195号)

