この記事でわかること

  • 50人未満への義務化で何が変わるのか(改正の要点)
  • 改正の背景と、施行までのスケジュール感
  • 中小企業が「今から」準備しておくべきこと
  • 実施者の確保・費用・産業医との関係

50人未満にもストレスチェックが義務化される

現在、ストレスチェックの実施義務は「常時50人以上の事業場」に課されています(労働安全衛生法第66条の10)。これが、従業員50人未満の事業場にも拡大されます。根拠は、令和7年(2025年)5月に公布された「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」(令和7年法律第33号)です。

施行日について:この義務化は、令和7年(2025年)5月に公布された改正法(令和7年法律第33号)によるもので、施行期日は「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」(令和8年政令第195号)により令和10年(2028年)4月1日と定められています。あわせて、集団分析を特定の個人を識別できない方法で行うことを明記する省令改正が、令和9年(2027年)4月1日に施行されます。

いずれにせよ、これまで「うちは50人未満だから関係ない」としてきた中小企業も対象になります。日本の事業場の大多数は50人未満であり、今回の改正の影響を最も受けるのは中小・小規模事業者です。

なぜ50人未満にも広げるのか(背景)

背景にあるのは、働く人のメンタルヘルス不調の深刻化です。精神障害による労災の支給決定件数は近年増加傾向が続いています。厚生労働省「過労死等の労災補償状況」では、令和6年度の精神障害の支給決定件数は1,055件と過去最多を更新しました(令和5年度は883件)。事業場規模の大小にかかわらず、メンタルヘルス対策を底上げする必要性が高まっています。

これまで50人未満の事業場では、ストレスチェックは努力義務にとどまっていました。今回の改正により、事業場の規模にかかわらず実施が義務となります。

施行までのスケジュール感(中小企業向け)

施行日は令和10年(2028年)4月1日ですが、「その日に慌てて始める」ものではありません。ストレスチェックは、実施計画の策定 → 実施 → 高ストレス者の面接指導 → 集団分析・職場改善、という一連の流れがあり、実施者(医師・保健師等)の確保も必要です。

改正法では、50人未満の事業場の負担に配慮して十分な準備期間を設けることとされています。ただし実施者の確保(後述)は早い者勝ちの面があるため、早めに情報収集と体制検討を始めるのが現実的です。

中小企業が「今から」準備できること

施行を待たずに着手できることは多くあります。

  1. 自社の対象事業場を把握する──どの拠点が該当するか(事業場単位)、対象人数の見込みを整理する。
  2. 実施者(医師・保健師等)の確保ルートを検討する──外部委託か、産業医・地域資源の活用か。50人未満は産業医の選任義務がないため、実施体制を新たに用意する必要があります。
  3. 費用の目安を立てる──外部委託の相場を把握し、予算化する。
  4. 就業規則・社内フローの整備──結果の取扱い(個人情報)、高ストレス者対応、不利益取扱いの禁止などのルールを準備する。
  5. 50人未満向けの公的支援・マニュアルを活用する──厚生労働省は令和8年(2026年)2月、「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(社内ルール例・社内規程例のWord様式付き)を公表しています。あわせて、地域産業保健センター(地さんぽ・全国約350か所)では、50人未満の事業場を対象に、高ストレス者・長時間労働者への医師の面接指導等を無料で提供しています。産業保健総合支援センター(47都道府県)でも制度導入支援を無料で受けられます。

実施者は誰が担う?──50人未満で押さえるべき点

ストレスチェックの「実施者」になれるのは、医師、保健師のほか、所定の研修を受けた看護師・精神保健福祉士・歯科医師・公認心理師等です。50人未満の事業場は産業医の選任義務がないため、実施者をどう確保するかが最大の実務ポイントになります。

現実的な選択肢は、(1)外部のストレスチェック実施機関に委託する、(2)オンライン産業保健サポート等で契約した医師・保健師に実施者を担ってもらう、の2つです。とくに、産業医(またはオンライン契約の医師)とストレスチェックを同じ契約にまとめると、高ストレス者の面接指導まで一気通貫になり、「面談する医師が職場を知らない」分断を避けられます。

費用の目安

費用は、受検者数(1名あたり単価)と、高ストレス者への面接指導(医師)の有無で大きく変わります。比較の際は「受検~集団分析まで」なのか「面接指導まで」なのかを揃えて見積もりを取るのがコツです。産業医契約とまとめると割安になるケースが多いです。

産業医・健康管理体制との関係

ストレスチェックは単体の作業ではなく、職場のメンタルヘルス対策全体の一部です。高ストレス者が見つかったあとの面接指導・就業配慮・職場改善までつなげて初めて意味を持ちます。50人未満の会社でも、月数万円のリモート産業医顧問を置いておくと、ストレスチェックの実施者確保と、その後の面談・相談対応をまとめて担保できます。

50人以上の会社は、産業医の選任義務に加えてストレスチェックも義務です(産業医の選任義務は「産業医の選任義務はいつから?」を参照)。50人未満の会社は、2028年に向けて「まず相談できる医師を確保する」ところから始めるのが堅実です。

よくある質問

Q1. 施行前に、いまのうちに始めてもよいですか?

A1. 問題ありません。義務化前でも実施は可能で、早めに運用に慣れておくと施行後がスムーズです。

Q2. 何人からが対象ですか?

A2. 現在は常時50人以上が対象で、改正法により50人未満にも拡大されます(令和10年〔2028年〕4月1日施行)。事業場(拠点)単位で判定します。

Q3. 50人未満でも産業医は必要ですか?

A3. 産業医の選任義務は50人未満では生じません。ただしストレスチェックの実施者や高ストレス者の面接指導には医師等が必要になるため、オンライン産業保健サポート等で医師を確保しておくと対応しやすくなります。

Q4. 準備は何から始めればよいですか?

A4. 対象事業場と人数の把握、実施者の確保ルートの検討、費用の目安づくり、社内ルール(結果の取扱い・不利益取扱い禁止)の整備から始めるのがおすすめです。

まとめ

従業員50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます(令和10年〔2028年〕4月1日施行)。対象の大半は中小・小規模事業者で、これまで「関係ない」としてきた会社も準備が必要です。施行までは時間がありますが、実施者の確保は早めが安全です。まずは相談できる医師を確保し、体制を段階的に整えていきましょう。

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執筆・監修

小正 晃裕(医師・産業医/循環器内科専門医・不整脈専門医・両立支援コーディネーター/株式会社MeIX 代表取締役CEO)

参考・出典

労働安全衛生法(e-Gov法令検索)/労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号・令和7年5月公布)/厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月公表)/厚生労働省「労働者数50人未満の小規模事業者の方」/厚生労働省「過労死等の労災補償状況」

出典URL(確認用):

  • 50人未満向けページ:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70761.html
  • マニュアル公表:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_69680.html