この記事でわかること
- ストレスチェックを実施していても、面接指導の医師がいなければ義務を果たせない理由
- ストレスチェックの「実施者」と「面接指導を行う医師」は分けられること
- 医師対応だけを外部に依頼する場合の進め方と、事前に決めておくこと
ストレスチェックは導入済みという会社の方へ(この記事の執筆元)
筆者は現役の医師・産業医です。株式会社MeIXでは、信頼できる産業医ネットワークにより、高ストレス者への医師の面接指導を単発から受託しています。「実施は既存の仕組みで足りているが、医師対応だけが空いている」というご相談にも対応しています。→ 30分の無料オンライン相談はこちら
結論:「実施した」だけでは制度は完結しない
ストレスチェック制度は、検査を実施して終わりではありません。厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月)は、制度を次のように定義しています。
ストレスチェックそのもののほか、医師の面接指導、面接指導後の就業上の措置、さらには、集団分析・職場環境改善を含む、労働安全衛生法第 66 条の 10 に係る事業場における一連の取組全体
そして、条文はこう定めています。
事業者は、……心理的な負担の程度が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当するものが医師による面接指導を受けることを希望する旨を申し出たときは、当該申出をした労働者に対し、……医師による面接指導を行わなければならない(労働安全衛生法第66条の10第3項)
つまり、保険の付帯サービス・EAP・健診機関のオプションなどでストレスチェック自体を実施していても、申出があったときに面接指導を行う医師が確保されていなければ、事業者としての義務を果たせません。
実施者と面接指導を行う医師は「別」でよい
制度の登場人物を整理すると、次のようになります。
| 役割 | 誰が担うか | 根拠 |
|---|---|---|
| 実施者 | 医師、保健師、一定の研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師 | 安衛法66条の10第1項 |
| 実施事務従事者 | 実施者の指示のもとで事務を担当する者 | 小規模事業場マニュアル2-1 |
| 面接指導を担当する医師 | 医師(条文上、産業医に限る旨の定めはない) | 安衛法66条の10第3項 |
厚生労働省がマニュアルの巻末に示した「ストレスチェック制度実施規程(モデル例)」でも、面接指導について次のように記載されています。
(面接指導を担当する医師)第5条 ストレスチェックの結果に基づく面接指導は、外部の面接指導を担当する医師(以下「面接指導担当医師」という。)に依頼して実施する。
実施は既存の委託先、面接指導は別の医師、という組み合わせは制度上想定された形です。同マニュアルも、委託先の選定にあたって「面接指導について、どこに依頼することとするのか」をあらかじめ決めておくよう求めています(2-3)。
無料の窓口(地さんぽ)で足りるか、先に確認する
従業員50人未満の事業場は、地域産業保健センター(地さんぽ)に依頼して、医師の面接指導を無料で受けられます。全国350か所(おおむね労働基準監督署単位)に設置され、登録産業医が配置されています。
ただし、次の2点に注意が必要です。
- ストレスチェック自体は地さんぽでは実施していません。実施者を地さんぽの登録産業医に依頼することもできません(同マニュアル2-3)
- いわゆる大企業の営業所等である小規模事業場で、本社等で選任されている産業医等の協力を得られるような場合は、利用できないことがあります(同)
まず管轄の地さんぽで対応できるかを確認し、対象外・日程が合わない・件数が読めないといった事情がある場合に、民間の医師に依頼する形が現実的です。
医師対応だけを外部に依頼するときの進め方
1. 申出の受付窓口を決めておく
申出は事業者に対して行われます。直接会社に申し出る形と、外部機関を経由して申し出る形があり、後者の場合は「申出があったことは会社に報告される」ことをあらかじめ労働者に伝えておく必要があります(同マニュアル4-1)。
2. 面接指導に必要な情報を用意しておく
面接指導を担当する医師には、次のような情報を提供します(同マニュアル4-2)。
- 対象労働者の氏名・性別・年齢・所属・役職等
- 個人のストレスチェック結果(プライバシーが確保される方法で)
- 直前1か月の労働時間・労働日数・深夜業の回数・業務内容
- 健康診断の結果
- 実施時期が繁忙期であったかどうか
これらを面接指導のために医師へ提供することは法令に基づく対応であり、本人の同意がなくても第三者提供の制限は受けませんが、提供することを事前に本人へ伝えておくことが望まれます。
3. 面接指導の実施(オンライン可)
面接指導は、労働者の様子を把握し円滑にやりとりできる方法であれば、情報通信機器を用いて実施できます。ただし、実施する医師が必要と認める場合は直接対面で行う必要があります(同マニュアル4-2)。詳細は厚生労働省の通達(平成27年9月15日付け基発0915第5号。令和2年11月19日付け基発1119第2号による改正後)に留意事項がまとめられています。
なお、面接指導の費用は事業者が負担すべきものとされ、保険診療扱いはできません(同)。
4. 医師からの意見聴取と就業上の措置
面接指導の結果に基づき、就業上の措置について医師の意見を聴きます(安衛法66条の10第5項)。法令上、面接指導後遅くとも1か月以内に意見を聴取する必要があり、面接指導を実施した医師から聴取することが適当とされています(同マニュアル4-3)。
意見書には、就業区分(通常勤務/就業制限/要休業)と就業上の措置の内容、職場環境の改善に関する意見が含まれます。
5. 記録を5年間保存する
面接指導結果の記録は、事業者が5年間保存しなければなりません(労働安全衛生規則第52条の18)。記載すべき事項は、実施年月日・労働者の氏名・面接指導を行った医師の氏名・勤務の状況・心理的な負担の状況・その他心身の状況・医師の意見です。
外部の医師に依頼する場合も、保存の義務は会社側にあります。
依頼先を選ぶときの3つのチェックポイント
- 申出から実施までの日程:申出があってから遅滞なく実施する必要があるため、日程調整のリードタイムを確認します
- 費用の発生の仕方:件数によらない一括契約か、実施された場合のみ発生する従量制かを確認します(同マニュアル2-2の確認ポイント)
- 会社に提供される情報の範囲:面接指導を実施した医師は、就業上の措置に必要な最小限の情報に限定して提供する必要があり、診断名・検査値・具体的な愁訴の内容などの生データを事業者に提供してはいけません(同マニュアル4-6)。会社側も求めてはいけません
費用の目安
株式会社MeIXでは、高ストレス者への医師の面接指導を、単発のスポット面談と同一の料金体系で承っています。
| 業務時間 | 料金(税別) |
|---|---|
| 基本料金(業務時間30分まで) | 2.0万円 |
| 超過(15分ごと) | +0.75万円 |
| 上限(業務時間60分) | 3.5万円 |
業務時間は面談時間と所定の報告書の作成時間の合計です。件数によらない年間契約ではなく、実施した分だけ発生する形のため、申出件数が読めない段階でも導入できます。→ 料金と依頼の流れは面接指導パックのページ
2028年4月に向けて、いま確認しておきたいこと
令和10年(2028年)4月1日から、ストレスチェックの実施義務が従業員50人未満の事業場にも拡大されます(令和8年政令第195号)。すでに何らかの形でストレスチェックを実施している会社ほど、「実施はできているが医師対応が空いている」状態になりやすいため、次の3点を先に確認しておくことをおすすめします。
- 現在の委託先のサービスに、医師の面接指導は含まれているか(含まれる場合、一括契約か従量制か)
- 管轄の地さんぽは自社の事業場で利用できるか
- 申出の受付窓口と、医師への情報提供の手順が決まっているか
よくある質問
Q1. ストレスチェックの実施者と、面接指導の医師は同じでなければいけませんか?
A1. いいえ。実施者は医師・保健師等から選任され、面接指導は医師が行います。厚生労働省の規程モデル例でも、面接指導を外部の医師に依頼する形が示されています。
Q2. 面接指導を行う医師は、産業医でなければいけませんか?
A2. 条文(安衛法66条の10第3項)は「医師による面接指導」と定めており、産業医に限る旨の規定はありません。
Q3. 高ストレス者が出ても、申出がなければ面接指導は不要ですか?
A3. 実施義務が生じるのは申出があった場合です。ただし、申出をしなかった高ストレスの労働者が放置されないよう、相談できる窓口を案内することが重要とされています(同マニュアル4-5)。
Q4. オンラインでの面接指導は認められますか?
A4. 労働者の様子を把握し円滑にやりとりできる方法であれば実施できます。ただし、実施する医師が必要と認める場合は対面で行う必要があります。音声のみの電話による面接指導は認められていません。
Q5. 面接指導の費用は誰が負担しますか?
A5. 法が事業者に実施義務を課しているため、事業者が負担すべきものとされています。保険診療扱いはできません。
まとめ
ストレスチェックは「実施した」だけでは完結しません。申出があったときに医師による面接指導を行える状態まで整えて、はじめて制度が機能します。実施者と面接指導の医師は分けられるため、既存の実施の仕組みはそのままに、医師対応だけを外部に依頼することができます。まず管轄の地さんぽで対応できるかを確認し、対象外・日程が合わない場合に民間の医師へ依頼する、という順序で検討してみてください。
株式会社MeIXは、高ストレス者への医師の面接指導を実施した分だけの従量制で承っています。→ 30分の無料オンライン相談はこちら
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執筆・監修
小正 晃裕(医師・産業医/循環器内科専門医・不整脈専門医・両立支援コーディネーター/株式会社MeIX 代表取締役CEO)
参考・出典:労働安全衛生法第66条の10/労働安全衛生規則第52条の18(e-Gov法令検索)/厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月)/厚生労働省「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について」(平成27年9月15日付け基発0915第5号。令和2年11月19日付け基発1119第2号による改正後)/「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」(令和8年政令第195号)

