この記事でわかること

  • 付帯サービスのストレスチェックだけでは足りない部分がどこか
  • 厚生労働省が示す「サービス内容事前説明書」で何を確認すべきか
  • 委託先に投げる質問リスト(そのまま使える5つの確認)

すでにストレスチェックの仕組みがあるという会社の方へ(この記事の執筆元)

筆者は現役の医師・産業医です。株式会社MeIXでは、信頼できる産業医ネットワークにより、ストレスチェックの実施から高ストレス者への医師の面接指導まで、必要な部分だけを受託しています。「いまの付帯サービスで足りているか見てほしい」というご相談にも対応しています。→ 30分の無料オンライン相談はこちら

前提:ストレスチェック制度は「検査」だけではない

厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月)は、ストレスチェック制度を次のように定義しています。

ストレスチェックそのもののほか、医師の面接指導、面接指導後の就業上の措置、さらには、集団分析・職場環境改善を含む、労働安全衛生法第 66 条の 10 に係る事業場における一連の取組全体

つまり、検査を配って結果を返すところまでしかカバーしていないサービスは、制度の一部しか満たしていないことになります。保険の付帯サービス、EAP、健診機関のオプションなどでストレスチェックが用意されている場合は、どこまでが含まれているかを確認しておく必要があります。

なお、令和10年(2028年)4月1日からは、ストレスチェックの実施義務が従業員50人未満の事業場にも拡大されます(令和8年政令第195号)。いま手元にある仕組みが2028年以降にそのまま使えるかどうかは、早めに確認しておきたいところです。

委託先の選び方は、国が「確認ポイント」を示している

同マニュアルは、委託先の選定にあたって、外部機関に「サービス内容事前説明書」を作成・提出してもらい、次の事項について説明を求めることが重要だとしています(2-2)。

  • 実施体制(実施者、実施事務従事者等)
  • 実施方法(調査票、調査方法、高ストレス者・面接指導対象者の選定方法、結果の通知方法等)
  • 料金体系(料金体系、基本料金、オプション料金の明示等)
  • 面接指導(面接指導の依頼先、面接指導担当医師、面接指導以外の相談対応等)
  • 情報管理(結果通知等の情報の流れ、結果の保存等)

付帯サービスの場合、この説明書に相当する資料が手元にないことがあります。まずは「うちのサービスはこの5項目でいうとどこまでですか」と聞くのが最短です。

確認1:実施者は誰か(資格要件を満たしているか)

ストレスチェックの「実施者」は、医師、保健師、一定の研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師から選ぶ必要があります(労働安全衛生法第66条の10第1項、同マニュアル2-1)。

50人未満の事業場では、労働者のプライバシー保護の観点から、実施を外部機関に委託することが原則として推奨されています。委託する場合、実施者は委託先で選定されている者を活用するのが基本です。

聞くこと:実施者は誰で、どの資格に該当しますか。実施事務従事者はどこまでの業務を担当しますか。

確認2:高ストレス者の選定方法と結果の通知経路

高ストレス者・面接指導対象者は、実施者(委託先)が選定します。労働者本人への結果通知は、第三者に内容が分からない形で、実施者から直接行われる必要があります(同マニュアル3-2)。

面接指導が必要と判定された人には、申出の勧奨と、申出窓口・申出方法の案内まで届く設計になっているかがポイントです。

聞くこと:調査票は何項目版ですか。高ストレス者の選定基準は国が示す方法によりますか。結果は誰から誰にどう届きますか。面接指導対象者への申出勧奨は誰が行いますか。

確認3:医師の面接指導はどこに依頼するか(最大の落とし穴)

ここが、付帯サービスで最も抜けやすい部分です。高ストレスの要件に該当する労働者から申出があった場合、事業者は医師による面接指導を行わなければなりません(安衛法66条の10第3項)。

同マニュアルは、委託先の選定時に「面接指導の依頼先」について次を確認するよう求めています(2-2)。

  • 外部機関のオプションサービスがあるか。ある場合、その料金は回数によらない一括契約か、実際に実施された場合のみ発生するか
  • (オプションの有無にかかわらず)地域産業保健センター等の利用が選択肢として提案されているか

そのうえで事業者は、①検査と集団分析をその外部機関に委託するか、②面接指導をどこに依頼するかを決めることになります。

なお、実施者と面接指導を行う医師は同一である必要はありません。厚生労働省の規程モデル例でも「面接指導は、外部の面接指導を担当する医師に依頼して実施する」という形が示されています。

聞くこと:面接指導は含まれますか。含まれる場合、料金は一括か従量か。含まれない場合、どこに依頼すればよいですか。

確認4:集団分析と記録の保存はどうなるか

集団分析は事業場規模にかかわらず努力義務ですが、集計・分析の単位が10人を下回る場合は、原則として集団分析結果の提供を受けてはいけません(同マニュアル5-1)。この「10人」は在籍者数ではなく実際の受検者数(有効なデータ数)で数えます。

記録の保存については、次の切り分けになります。

記録誰が保存するか根拠
個人のストレスチェック結果委託先の実施者または実施事務従事者(事業者は本人同意なく取得できない)同マニュアル3-3
面接指導結果の記録事業者が5年間保存労働安全衛生規則第52条の18
集団分析結果事業者が5年間保存することが望まれる同マニュアル5-1

聞くこと:集団分析は含まれますか。何人単位から提供されますか。個人結果の保存は委託先で行いますか。面接指導の記録は誰がどの形式で会社に渡しますか。

確認5:申出窓口と、社内で決めておくこと

外部委託した場合でも、ストレスチェック制度は事業者の責任において実施するものであり、委託先との連絡調整等を担当する実務担当者を社内に指名する必要があります(同マニュアル2-1)。10人以上50人未満の事業場では、衛生推進者または安全衛生推進者を実務担当者に選任することが望まれるとされています(安衛法12条の2、労働安全衛生規則第12条の2)。

あわせて、社内ルール(実施体制・実施方法・記録の保存・情報管理・情報の開示等・不利益取扱いの防止)を作成し、周知することが求められます(同マニュアル1-3)。

聞くこと(社内向け):実務担当者は誰か。申出は会社に直接か、外部機関経由か。社内ルールは作成済みか。

5つの確認をまとめると

#確認項目抜けていた場合に起きること
1実施者の資格制度上の実施者要件を満たさない
2高ストレス者の選定と結果通知面接指導の対象者が特定されない/プライバシー上の問題
3医師の面接指導の依頼先申出があっても面接指導を実施できない
4集団分析と記録の保存努力義務への未対応/5年保存義務の抜け
5実務担当者と社内ルール運用が回らない・労働者に説明できない

足りない部分だけを補うという考え方

すべてを1社にまとめ直す必要はありません。実施は既存の付帯サービス、医師の面接指導だけを別に確保するという組み合わせは、制度上想定された形です。

  • 従業員50人未満の事業場は、地域産業保健センター(地さんぽ)で医師の面接指導を無料で受けられます。ただし、地さんぽではストレスチェックの実施自体は行っておらず、また「いわゆる大企業の営業所等である小規模事業場で、本社等で選任されている産業医等の協力を得られるような場合は、ご利用いただけないことがあります」とされています(同マニュアル2-3)
  • 日程が合わない・件数が読めない・対象外である場合は、民間の医師に依頼する形になります。当社では、高ストレス者への医師の面接指導を、単発のスポット面談と同一の料金体系(基本料金2万円〜/業務時間30分まで・税別)で承っています

よくある質問

Q1. 保険の付帯サービスにストレスチェックがあれば、義務は果たせますか?

A1. 検査の実施だけでは制度は完結しません。申出があった場合の医師による面接指導、就業上の措置、集団分析・職場環境改善までが制度の範囲とされています。

Q2. 委託先に何を聞けばよいか分かりません。

A2. 厚生労働省のマニュアルが「サービス内容事前説明書」の様式を示しています。実施体制・実施方法・料金体系・面接指導・情報管理の5項目について説明を求めてください。

Q3. 実施者と面接指導の医師は同じでなければいけませんか?

A3. いいえ。厚生労働省の規程モデル例でも、面接指導を外部の医師に依頼する形が示されています。

Q4. 集団分析は必ずやらなければいけませんか?

A4. 集団分析・職場環境改善は事業場規模にかかわらず努力義務です。ただし10人を下回る単位では、原則として結果の提供を受けてはいけません。

Q5. 2028年の義務化までに何から手を付ければよいですか?

A5. まず現在の付帯サービスの範囲を5項目で棚卸しし、抜けている部分(多くは医師の面接指導)を先に確保することをおすすめします。

まとめ

保険や福利厚生に付いてくるストレスチェックは、出発点としては有効です。ただし「検査まで」で止まっていることが少なくないため、面接指導・集団分析・記録の保存・社内ルールまで含めて棚卸ししておく必要があります。厚生労働省が示す5つの確認項目に沿って委託先に質問すれば、足りない部分はすぐに見えてきます。

株式会社MeIXは、足りない部分だけを補う形でご支援しています。→ 30分の無料オンライン相談はこちら

あわせて読みたい

参考・出典:労働安全衛生法第12条の2・第66条の10/労働安全衛生規則第12条の2・第52条の18(e-Gov法令検索)/厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月)/「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」(令和8年政令第195号)

本記事に記載の法令・通達は、2026年9月16日時点の内容を確認しています。法令・通達は改正されることがありますので、実務では最新の原文をご確認ください。