この記事の要点
健診結果はほとんどが要配慮個人情報です。法定項目は同意なく収集できる一方、精密検査やがん検診は同意が必要。厚生労働省の指針による健康情報の3分類、人事・産業保健職・上司の権限の線引き、保管年数、取扱規程の9項目を産業医が解説します。

執筆・監修:小正 晃裕(医師・日本医師会認定産業医。詳しいプロフィールは記事末尾)|最終更新日:2026年10月19日

健診結果の束が人事の棚に入っている。鍵はかかっているが、誰が開けてよいかは決めていない。上司から「部下の健診結果を見せてほしい」と言われたが、断る根拠が分からない——。

産業医として企業に入ると、この状態の会社によく出会います。悪意があるわけではなく、決めるべきことがあると知られていないだけです。

実は、健診結果などの健康情報をどう扱うかを「取扱規程」として定めることは、厚生労働省の指針が事業者に求めていることです。そしてその策定単位は事業場で、衛生委員会等を使って労使で検討することまで示されています。

この記事では、誰が・どこまで見てよいのかを、条文と指針から整理します。

この記事でわかること

  • 健診結果が「要配慮個人情報」にあたる理由と、それでも同意なしに会社が持てる理由
  • 健康情報の3つの分類——同意が要るもの・要らないものの線引き
  • 誰が見てよいかの権限マトリクス(人事/産業保健職/上司/人事の事務担当)
  • 保管年数(健診の種類で5年・7年・30年・40年と異なります)
  • 取扱規程に書く9項目と、50人未満の会社での作り方

健康情報の取扱いでお困りの方へ(この記事の執筆元)

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1. 結論:健診結果は「人事情報」ではなく「健康情報」です

先に結論を3つ。

#結論
1健診結果のほとんどは「要配慮個人情報」です。人事評価情報とは扱いが違います
2それでも、法定項目の健診結果は本人の同意なしに会社が収集できます。根拠は「法令に基づく場合」です
3ただし「社内の誰が見てよいか」は会社が決めなければなりません。そのための文書が取扱規程です

多くの会社でつまずくのは3番目です。 法律が決めてくれるわけではなく、事業場ごとに決めて労働者に周知することが求められています。

2. なぜ「要配慮個人情報」なのか

条文を見ます

この法律において「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。

(個人情報の保護に関する法律 第2条第3項)

そして「政令で定める記述等」に、健診結果が明記されています。

二 本人に対して医師その他医療に関連する職務に従事する者(次号において「医師等」という。)により行われた疾病の予防及び早期発見のための健康診断その他の検査(同号において「健康診断等」という。)の結果

(個人情報の保護に関する法律施行令 第2条第2号)

「疾病の予防及び早期発見のための健康診断その他の検査の結果」です。 会社が実施する定期健康診断の結果は、これに真正面から当たります。

厚生労働省の指針も同じことを書いています

事業者が、労働安全衛生法(中略)に基づき実施する健康診断等の健康を確保するための措置(中略)や任意に行う労働者の健康管理活動を通じて得た労働者の心身の状態に関する情報(中略)については、そのほとんどが個人情報の保護に関する法律(中略)第2条第3項に規定する「要配慮個人情報」に該当する機微な情報である。

(労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針・1 趣旨・総論)

この指針は、平成30年9月7日に指針公示第1号として公示され、令和4年3月31日の指針公示第2号で改正されています。 根拠条文は労働安全衛生法104条3項です。

例外:「受診したかどうか」は要配慮個人情報ではありません

厚生労働省の手引きは、次のように整理しています。

なお、心身の状態の情報のうち要配慮個人情報に該当しない情報としては、健康診断の受診・未受診の情報などが考えられます。

(事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き・2019年3月)

「誰が受けて、誰が受けていないか」は、結果の中身とは別扱いです。 未受診者に受診を促す実務では、この区別が効いてきます。

3. それでも同意なしに会社が持てるのはなぜか

要配慮個人情報には、厳しい取得制限があります。

個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない。

一 法令に基づく場合

(以下略)

(個人情報の保護に関する法律 第20条第2項)

この1号「法令に基づく場合」が、健診結果の入口です。

厚生労働省の指針も、この整理を採っています。

一方、労働者の個人情報を保護する観点から、現行制度においては、事業者が心身の状態の情報を取り扱えるのは、労働安全衛生法令及びその他の法令に基づく場合や本人が同意している場合のほか、労働者の生命、身体の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき等とされている

(同指針・2(1))

つまり、労働安全衛生法66条に基づいて実施する健診の結果は、本人の同意を取らなくても会社が受け取れます。 「同意書を取っていないから違法では」という心配は、法定項目に関しては不要です。

ただし「何でも取ってよい」わけではありません

事業者は、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置の実施に関し、労働者の心身の状態に関する情報を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、労働者の健康の確保に必要な範囲内で労働者の心身の状態に関する情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。

(労働安全衛生法 第104条第1項)

事業者は、労働者の心身の状態に関する情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない。

(同条第2項)

「健康の確保に必要な範囲内」で集め、「収集の目的の範囲内」で保管・使用する。 これが安衛法104条の骨格です。

そして指針は、同意なしに収集できる情報であっても、目的と取扱方法を労働者に周知したうえで収集することが必要だとしています。

(9)の表の①及び②に分類される、労働安全衛生法令において労働者本人の同意を得なくても収集することのできる心身の状態の情報であっても、取り扱う目的及び取扱方法等について、労働者に周知した上で収集することが必要である。

(同指針・2(6))

「同意は要らないが、黙って集めてよいわけではない」 ——ここが実務の分かれ目です。

4. 【核】健康情報は3つに分かれます

厚生労働省の指針は、健康情報を性質によって3つに分類しています。この表が、本記事で最も使える道具です。

分類内容本人同意
①労働安全衛生法令に基づき事業者が直接取り扱うこととされており、法令上の義務を履行するために事業者が必ず取り扱わなければならない情報不要
②労働安全衛生法令に基づき本人の同意を得ずに収集することが可能だが、取扱規程により事業者等の内部における適正な取扱いを定めて運用することが適当である情報不要
③労働安全衛生法令において事業者が直接取り扱うことが規定されていないため、あらかじめ本人の同意を得ることが必要な情報必要

(同指針・2(9))

それぞれに何が入るか

①事業者が必ず取り扱う情報

場面具体例
健康診断受診・未受診の情報/事後措置について医師から聴取した意見/事業者が講じた措置の内容
長時間労働面接指導の申出の有無/事後措置について医師から聴取した意見/講じた措置の内容
ストレスチェック高ストレスと判定された者による面接指導の申出の有無/事後措置について医師から聴取した意見/講じた措置の内容

「申出があったかどうか」「医師の意見」「会社が講じた措置」が①です。 結果そのものではありません。

②同意なしに集められるが、内部の取扱いを決めるべき情報

場面具体例
健康診断健康診断の結果(法定の項目)/健康診断の再検査の結果(法定の項目と同一のものに限る)/保健指導の実施の有無・結果(法令に基づく場合)
長時間労働面接指導の結果
ストレスチェック高ストレスと判定された者に対する面接指導の結果
その他健康相談の実施の有無・結果(法令に基づく場合)

③あらかじめ本人の同意が必要な情報

場面具体例
健康診断健康診断の結果(法定外項目)/再検査の結果(法定の項目と同一のものを除く)/精密検査の結果/保健指導の結果(法令に基づかない場合)
その他がん検診の結果/健康相談の結果(法令に基づかない場合)/職場復帰のための面談の結果/治療と仕事の両立支援等のための医師の意見書/通院状況等疾病管理のための情報/産業保健業務従事者が健康管理等を通じて得た情報/任意に労働者から提供された病歴・健康に関する情報

(同手引き・2(2)②の表を整理)

実務で最も間違えやすい点

「再検査の結果」が②と③に分かれています。

再検査の中身分類本人同意
法定項目と同一のもの(例:健診で測った血圧を再度測る)②不要
法定項目と同一でないもの/精密検査③必要

「再検査の結果を出してください」と一律に求めている会社は、この線を越えている可能性があります。

精密検査の結果は③です。 本人の同意なしに提出を求めることはできません。同様に、人間ドックの結果やがん検診の結果も③です。

実務上は、「受診した事実」だけを求めれば足りる場面が多くあります。 結果の中身まで一律に集める必要があるかを、まず見直してみてください。

なお指針は、本人が自発的に提出した情報については同意があったものと解されるとしつつ、次の注意を付けています。

労働者本人が自発的に事業者に提出した心身の状態の情報については、「あらかじめ労働者本人の同意」を得たものと解されるが、当該情報について事業者等が医療機関等に直接問い合わせる場合には、別途、労働者本人の同意を得る必要がある。

(同指針・2(9)の注)

本人からもらうことと、会社が医療機関に直接聞くことは別です。

5. 【核】誰が見てよいのか

厚生労働省の手引きは、健康情報を取り扱う者を4つに分けています。

区分具体例
ア)人事に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者社長、役員、人事部門の長
イ)産業保健業務従事者産業医(専属・嘱託)、保健師・看護師、衛生管理者、衛生推進者(安全衛生推進者)
ウ)管理監督者労働者本人の所属長
エ)人事部門の事務担当者人事部門の長以外の事務担当者

(同手引き・2(2)①)

権限のマトリクス

手引きは、産業保健業務従事者がいる場合の権限を次のように示しています。

分類人事権限を持つ監督的地位産業保健業務従事者管理監督者人事部門の事務担当者
①(義務履行に必ず必要)◎○△△
②(同意不要だが内部の取扱いを定める)△○△△
③(本人同意が必要)△○△△

記号の意味(手引きの凡例)

  • ◎:直接取り扱う必要がある者
  • ○:一般に取り扱うことが想定される者
  • △:事業場や企業の状況に応じて、取り扱うことが想定される者

読み取れることは2つです。

  1. ①(医師の意見・措置の内容・申出の有無)は、人事権限者が直接取り扱う必要がある。 これがないと法令上の義務を果たせません
  2. ②③(健診結果そのもの)について「◎」の欄はありません。 産業保健職が「○」で、それ以外はすべて「△」=事業場の状況に応じて判断、です

つまり、健診結果の数値そのものを人事部門の長や上司が当然に見てよい、という整理にはなっていません。

手引きは、②について次のように書いています。

②は、事業者が法令に基づき把握することができるものの、必ずしも事業者が直接把握する必要がない情報であるため、労働者がその取扱いについて十分に納得できるよう、健康情報等を取り扱う者の中でも、当該情報を取り扱うことができる者を制限したり、医療職種がいる場合には、医療職種が情報を加工した上で事業者が取り扱うといった対応が求められます。

(同手引き・2(2)②)

「加工」という考え方

指針は「加工」を次のように定義しています。

心身の状態の情報の他者への提供に当たり、提供する情報の内容を健康診断の結果等の記録自体ではなく、所見の有無や検査結果を踏まえた就業上の措置に係る医師の意見に置き換えるなど、心身の状態の情報の取扱いの目的の達成に必要な範囲内で使用されるように変換することをいう。

(同指針・4④)

これが、上司からの「部下の健診結果を見せてほしい」に対する現実的な答えです。

上司に必要なのは、検査値そのものではなく「就業上どう配慮すればよいか」です。 数値の一覧を渡すのではなく、「残業を月◯時間までに」「高所作業を当面外す」といった、医師の意見に置き換えた形で渡す。 これが指針の言う「加工」です。

産業保健職がいない会社では

手引きは、産業保健業務従事者がいない場合のマトリクスも示しています。①が人事権限者の「◎」である点は同じで、②③はすべて「△」です。

指針は、小規模事業場について次の対応を挙げています。

特に、(9)の表の②に該当する心身の状態の情報の取扱いについては、衛生推進者を選任している場合は、衛生推進者に取り扱わせる方法や、取扱規程に基づき適切に取り扱うことを条件に、取り扱う心身の状態の情報を制限せずに事業者自らが直接取り扱う方法等が考えられる。

(同指針・2(10))

「産業保健職がいないから何もできない」ではありません。 取扱規程を定めたうえで、事業者自身が直接扱う方法が示されています。大事なのは、扱う人を決めて文書にすることです。

6. 何年保管するのか

健診の種類によって、保存期間は大きく異なります。

健康診断根拠保存期間
雇入時の健康診断安衛則43条5年
定期健康診断安衛則44条5年
特定業務従事者の健康診断安衛則45条5年
海外派遣労働者の健康診断安衛則45条の25年
給食従業員の検便安衛則47条5年
歯科医師による健康診断安衛則48条5年
深夜業に従事する労働者の自発的健康診断安衛法66条の25年
じん肺健康診断じん肺法7条〜9条の27年
電離放射線健康診断電離則56条30年
特定化学物質等健康診断特化則39条5年または30年
有機溶剤健康診断/鉛健康診断有機則29条/鉛則53条5年
高気圧作業健康診断高圧則38条5年
石綿健康診断石綿則40条40年

(同手引き・2(4)③の表から抜粋。保存期間の根拠条文は各規則)

一般健診は5年ですが、有害業務の健診には30年・40年のものがあります。 自社に該当業務があるなら、「健診結果は一律5年」という社内ルールは危険です。

保管の必要がなくなったら消す

事業者は保有する個人データについて利用する必要がなくなった場合には、当該情報を遅滞なく消去するよう努めなければなりません。

(同手引き・2(4)③)

保管期間を過ぎた情報を持ち続けることは、管理コストと漏えいリスクを抱え続けることです。 手引きは、紙媒体は焼却・溶解等で復元不可能にすること、電子データは記憶装置内の情報を復元不可能な状態にして廃棄することを挙げています。

退職者についても同じ考え方です。

退職者の健康情報等も、雇用している労働者と同様に扱う必要があります。なお、法令又は事業場の規程により保存期間が定められているものを除き、個人情報の漏洩のリスクを排除する上でも、目的を達成したものは遅滞なく消去するよう努める必要があります。

(同手引き・Q&A)

7. 保管方法:物理的・技術的な措置

手引きは、具体的な措置を挙げています。これは社内で決めやすい部分です。

物理的安全管理措置

措置
個人データの保管場所の施錠
データ保管場所への入退室管理の実施
記録機能を持つ媒体の持込み・持ち出し禁止
記録機能を持つ媒体の接続の禁止または制限
離席時等におけるパソコン等のパスワードロック

技術的安全管理措置

措置
個人データに対するアクセス管理(各担当者の権限に応じて必要な範囲にのみアクセスできるようにする等)
個人データに対するアクセス記録の保存
ソフトウェアに関する脆弱性対策

(同手引き・2(4)②)

「人事の棚に鍵をかけている」だけでは、この一覧の1行目しか満たしていません。 アクセス権限の設定と、誰が見たかの記録が抜けていることが多いところです。

なお手引きは、雇用契約や就業規則において、就業期間中はもとより離職後も含めた守秘義務を課すことも挙げています。

8. 取扱規程に書く9項目

指針は、取扱規程に定めるべき事項を9つ挙げています。

① 心身の状態の情報を取り扱う目的及び取扱方法

② 心身の状態の情報を取り扱う者及びその権限並びに取り扱う心身の状態の情報の範囲

③ 心身の状態の情報を取り扱う目的等の通知方法及び本人同意の取得方法

④ 心身の状態の情報の適正管理の方法

⑤ 心身の状態の情報の開示、訂正等(追加及び削除を含む。以下同じ。)及び使用停止等(消去及び第三者への提供の停止を含む。以下同じ。)の方法

⑥ 心身の状態の情報の第三者提供の方法

⑦ 事業承継、組織変更に伴う心身の状態の情報の引継ぎに関する事項

⑧ 心身の状態の情報の取扱いに関する苦情の処理

⑨ 取扱規程の労働者への周知の方法

(同指針・2(3))

②について、指針はこう補足しています。

なお、②については、個々の事業場における心身の状態の情報を取り扱う目的や取り扱う体制等の状況に応じて、部署や職種ごとに、その権限及び取り扱う心身の状態の情報の範囲等を定めることが適切である。

「人事部は見てよい」ではなく、「人事部のどの役割の人が、どの分類の情報を、どこまで」まで決める、ということです。

作り方:衛生委員会で労使で検討する

事業者は、取扱規程の策定に当たっては、衛生委員会等を活用して労使関与の下で検討し、策定したものを労働者と共有することが必要である。

(同指針・2(4))

会社が一方的に作って終わりにするものではありません。

50人未満の会社はどうするか

なお、衛生委員会等を設置する義務がない常時50人未満の労働者を使用する事業場(中略)においては、事業者は、必要に応じて労働安全衛生規則(中略)第23条の2に定める関係労働者の意見を聴く機会を活用する等により、労働者の意見を聴いた上で取扱規程を策定し、労働者と共有することが必要である。

(同指針・2(4))

その安衛則23条の2は、こう定めています。

委員会を設けている事業者以外の事業者は、安全又は衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けるようにしなければならない。

(労働安全衛生規則 第23条の2)

手引きは、この「機会」の例として、安全衛生の委員会・労働者の常会・職場懇談会等を挙げています。

また、策定の単位は事業場でなく企業単位とすることも可能とされています。 拠点が複数ある会社は、本社で一括して作るほうが現実的な場合があります。

周知の方法

方法
常時作業場の見やすい場所に掲示する/備え付ける
社内メールやイントラネットに掲載する
パンフレット・冊子として配布する
社内研修を通じて周知する

(同手引き・2(9))

手引きは、実効性の確保と周知の観点から、就業規則等に記載することが望ましいとしています。

9. 社外に出すとき

原則:本人の同意が必要

個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。

一 法令に基づく場合

(以下略)

(個人情報の保護に関する法律 第27条第1項)

「第三者」に当たらない場合

手引きは、第三者に該当しない例を挙げています。

例
健診結果等の入力・編集分析等を委託して実施する場合
事業者と健康保険組合等とが共同で健康診断や保健指導等を実施する場合(共同利用の通知等が前提)
同一事業者内で情報を共有する場合
合併その他の事由により事業の承継に伴って情報を提供する場合

(同手引き・2(6))

健診機関やシステムベンダーへの委託は「第三者提供」ではありません。 ただし条件があります。

ただし、事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなくてはなりません。

(同手引き・2(6))

「必要かつ適切な監督」には、安全管理措置の内容を契約に盛り込んで履行させることと、業務が適切に行われていることを定期的に確認することが含まれると手引きは説明しています。再委託がある場合の確認も求められています。

オプトアウトは使えません

個人情報保護法には、本人の求めに応じて提供を停止することを前提に、同意なしで第三者提供できる「オプトアウト」の仕組みがあります。ただし、健診結果には使えません。

ただし、第三者に提供される個人データが要配慮個人情報又は第二十条第一項の規定に違反して取得されたもの(中略)である場合は、この限りでない。

(個人情報の保護に関する法律 第27条第2項ただし書)

要配慮個人情報はオプトアウトの対象外です。 健診結果を社外に出すなら、「法令に基づく場合」等に当たるか、本人の同意を取るかのどちらかです。

10. 本人から開示を求められたら

請求会社の対応
開示遅滞なく、書面の交付または請求者が同意した方法で開示する。該当する情報がないときはその旨を知らせる
訂正・追加・削除・利用停止等請求が適正と認められるときは措置を講じる。誰が・何を・いつ訂正したかが分かるように行う

(同手引き・2(5))

訂正しなくてよい場合もあります。

ただし、訂正等の請求があった場合でも、利用目的から見て訂正等の必要がない場合、指摘が正しくない場合、評価に関する情報(例:産業医の意見を踏まえた就業可否の判断など)である場合には、訂正を行う必要はありません。 ただし、その場合には、遅滞なく、訂正等を行わない旨を本人に通知しなければなりません。

(同手引き・2(5)②)

「産業医の意見に納得できないので書き換えてほしい」には応じる義務がありません。 ただし、応じない旨の通知は必要で、理由の説明に努めることも求められます。

なお、評価の前提となっている事実に誤りがある場合は、その限りで訂正義務が生じると手引きは書いています。

11. 不利益な取扱いをしてはいけません

指針は、明確な禁止を置いています。

事業者は、心身の状態の情報の取扱いに労働者が同意しないことを理由として、又は、労働者の健康確保措置及び民事上の安全配慮義務の履行に必要な範囲を超えて、当該労働者に対して不利益な取扱いを行うことはあってはならない。

(同指針・2(8))

原則として行ってはならない取扱いとして、次が挙げられています。

#禁止される取扱い
1就業上の措置の実施に当たり、健康診断後に医師の意見を聴取する等の法令上求められる適切な手順に従わないなど、不利益な取扱いを行うこと
2措置の内容・程度が聴取した医師の意見と著しく異なる等、医師の意見を勘案し必要と認められる範囲内となっていないもの、または労働者の実情が考慮されていないもの
3情報の取扱いに同意しないことや情報の内容を理由として、解雇/有期契約の不更新/退職勧奨/不当な動機・目的による配置転換や役職変更/その他労働関係法令に違反する措置を行うこと

3に注目してください。 「健康情報の提供に同意しなかったこと」を理由とする不利益な取扱いは、指針が名指しで否定しています。

12. ストレスチェックは別の扱いです

健診結果とストレスチェックの結果は、同じ「健康情報」でも入口が違います。

この場合において、当該医師等は、あらかじめ当該検査を受けた労働者の同意を得ないで、当該労働者の検査の結果を事業者に提供してはならない。

(労働安全衛生法 第66条の10第2項後段)

健診結果は会社が直接受け取りますが、ストレスチェックの結果は、本人の同意がなければ会社に渡りません。 主語も「事業者」ではなく「医師等」です。

同意を取るタイミングにも決まりがあります。 手引きが引用するストレスチェック指針によれば、結果が本人に知らされていない時点で同意を取ることは不適当であり、事業者は実施前または実施時に同意を取得してはならないとされています。

「ストレスチェックの実施案内に同意欄を付ける」という運用は、この点で問題があります。

なお、本人が面接指導の申出を行った場合は、その申出をもって結果の提供に同意がなされたものとみなして差し支えないとされています。

13. 秘密を漏らしてはならない、という条文もあります

第六十五条の二第一項及び第六十六条第一項から第四項までの規定による健康診断、(中略)第六十六条の十第一項の規定による検査又は同条第三項の規定による面接指導の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならない。

(労働安全衛生法 第105条)

「実施の事務に従事した者」が対象です。 医師や保健師だけでなく、健診の事務を担当した人も含まれます。

医師・保健師等には法令上の守秘義務がありますが、衛生管理者や人事の事務担当者には職種としての守秘義務がない場合があります。 手引きは、そうした人が健康情報を扱う場合には、あらかじめ取扱規程などで守秘義務を取り決めることが望まれるとしています。

そして、教育についても触れています。

特に、職種として法令上の守秘義務が課せられていない者(中略)に対して、十分な教育を行うことが重要です。

(同手引き・3①)

14. 何から手をつけるか

すべてを一度に整えるのは現実的ではありません。順序を付けるなら、次の流れをお勧めします。

順やること根拠・狙い
1いま誰が見られる状態かを把握する(棚の鍵は誰が持っているか、共有フォルダの権限は誰にあるか)現状が分からないと規程が書けません
2集めている情報を3分類に当てはめる(②か③か)③を同意なしに集めていないかの点検
3分類ごとに、扱う人と範囲を決める指針2(3)②。部署・職種ごとに定める
4保管場所・アクセス権限・保存年数を決める安衛則51条ほか。有害業務の健診は年数が違います
5衛生委員会(50人未満は意見を聴く機会)で検討する指針2(4)。労使関与が求められています
6取扱規程として文書化し、周知する指針2(3)の9項目。就業規則等への記載が望ましい
7扱う人に教育する/運用状況を確認して見直す指針2(7)・手引き3

1と2だけでも、やっておく価値があります。 「精密検査の結果を一律に提出させていた」といった問題は、この段階で見つかります。

この記事のまとめ

  • 健診結果のほとんどは要配慮個人情報です(個情法2条3項・施行令2条2号、指針1)。ただし「受診・未受診」はこれに当たりません
  • 法定項目の結果は、同意なしに会社が収集できます(個情法20条2項1号「法令に基づく場合」)。ただし目的と取扱方法の周知は必要です(指針2(6))
  • 収集・保管・使用は「健康の確保に必要な範囲内」「収集の目的の範囲内」に限られます(安衛法104条1項)
  • 健康情報は3分類されます。法定項目と同一の再検査は②(同意不要)、それ以外の再検査・精密検査・がん検診は③(同意必要)です
  • 健診結果そのものを人事権限者や上司が当然に見てよい整理にはなっていません。 上司には「加工」した形——所見の有無や就業上の措置に係る医師の意見——で渡すのが指針の考え方です
  • 保存期間は健診の種類で異なります。 一般健診5年、じん肺7年、電離放射線30年、石綿40年
  • 取扱規程は9項目を定め、衛生委員会等で労使関与のもと検討します。50人未満は安衛則23条の2の機会を活用します
  • 要配慮個人情報にオプトアウトは使えません(個情法27条2項ただし書)
  • 情報の取扱いに同意しないことを理由とする不利益な取扱いは、指針が明確に否定しています

「決めていない」状態が一番のリスクです。 誰が見てよいかを決めて文書にし、周知する——これが、労働者が安心して健康情報を出せる前提になります。

本記事は法令・指針・手引きの内容を整理したもので、個別の事案についての法的助言ではありません。 自社の運用が適法かどうかの判断は、弁護士や個人情報保護委員会にご確認ください。

よくある質問

Q. 上司から「部下の健診結果を見せてほしい」と言われました

検査値そのものを渡す前に、目的を確認してください。 上司に必要なのは通常、就業上の配慮の内容です。指針は「加工」——結果の記録そのものではなく、所見の有無や就業上の措置に係る医師の意見に置き換えること——を挙げています(指針4④)。手引きの権限表でも、管理監督者は健診結果そのものについて「△」(事業場の状況に応じて)であり、当然に見てよい整理にはなっていません。

Q. 健診結果の提出に同意書は必要ですか

法定項目については不要です。 個情法20条2項1号「法令に基づく場合」に当たります。ただし、法定外項目・がん検診・人間ドックの結果・精密検査の結果は③に分類され、あらかじめ本人の同意が必要です。

Q. 再検査の結果は提出させてよいですか

中身によります。 指針の分類では、法定の項目と同一のものに限る再検査の結果は②(同意不要)、法定の項目と同一のものを除く再検査の結果と精密検査の結果は③(同意必要)です。一律に「再検査の結果を出してください」と求めている場合は、見直しが必要な可能性があります。

Q. 産業医も保健師もいません。誰が扱えばよいですか

指針は、小規模事業場について、衛生推進者に取り扱わせる方法や、取扱規程に基づき適切に取り扱うことを条件に事業者自らが直接取り扱う方法を挙げています(指針2(10))。扱う人を決めて規程に書くことが前提です。

Q. 取扱規程は就業規則に入れるべきですか

手引きは、実効性の確保と労働者への周知の観点から、就業規則等に記載することが望ましいとしています。 また、本人同意の取得方法も含めて就業規則に規定し周知することは有効な手段の一つとされています。

Q. 健診結果は何年保管すればよいですか

一般健康診断(雇入時・定期・特定業務従事者等)は5年です(安衛則51条)。ただし、じん肺は7年、電離放射線は30年、石綿は40年など、有害業務の健診は異なります。自社の対象業務に応じて確認してください。

Q. 健診機関に結果の入力を委託しています。第三者提供になりますか

委託は「第三者提供」に当たりません(手引き2(6))。ただし、委託先に対する必要かつ適切な監督が求められます。 安全管理措置の内容を契約に盛り込み、業務が適切に行われていることを定期的に確認することが含まれるとされています。

Q. 従業員が健診結果の訂正を求めてきました

請求が適正と認められるときは訂正等を行います。 ただし、産業医の意見を踏まえた就業可否の判断のような「評価に関する情報」は、訂正を行う必要がありません(手引き2(5)②)。その場合も、訂正しない旨の通知は必要で、理由の説明に努めることが求められます。

Q. 退職者の健診結果はどうすればよいですか

在職者と同様に扱う必要があります。 法令や社内規程で保存期間が定められているものを除き、目的を達成したものは遅滞なく消去するよう努めるとされています(手引きの質疑応答)。

Q. 健康診断の結果は会社にバレますか

A. 会社が実施する健康診断の結果は、法令上も会社が受け取り、記録を作成・保存します(労働安全衛生法66条の3)。したがって「知られるかどうか」ではなく、社内で誰がどこまで見てよいかが問題になります。取扱規程で閲覧できる者と範囲を限定し、上司に共有するのは就業上の措置に必要な範囲に絞るのが原則です。

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参考・出典

  • 労働安全衛生法 第66条・第66条の10・第104条・第105条(e-Gov法令検索)
  • 労働安全衛生規則 第23条の2・第51条(e-Gov法令検索)
  • 個人情報の保護に関する法律 第2条第3項・第20条第2項・第27条(e-Gov法令検索)
  • 個人情報の保護に関する法律施行令 第2条(e-Gov法令検索)
  • 厚生労働省「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成30年9月7日 労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱い指針公示第1号/改正 令和4年3月31日 同公示第2号)
  • 厚生労働省「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」(2019年3月)

本記事に記載の法令・通達は、2026年9月16日時点の内容を確認しています。法令・通達は改正されることがありますので、実務では最新の原文をご確認ください。