この記事の要点
健診で「要再検査」と出た従業員が受診しないときの対応を条文で整理。受診を強制する条文はない一方、医師の意見聴取(健診実施日から3か月以内)と事後措置は会社の義務です。費用が障害のとき使える労災保険の給付まで産業医が解説します。

執筆・監修:小正 晃裕(医師・日本医師会認定産業医。詳しいプロフィールは記事末尾)|最終更新日:2026年10月19日

健康診断の結果が返ってきて、「要再検査」「要精密検査」と書かれた従業員が何人かいる。案内を出したものの、いつまで経っても受診した報告が上がってこない——。

産業医として企業の健診結果を扱っていると、この相談を毎年受けます。そして多くの会社が、次のどちらかに寄ってしまいます。

  • 強制できないから、そのままにしている
  • 会社の責任になると聞いて、何度も受診を迫っている

どちらも実態からずれています。 労働安全衛生法は「本人に再検査を強制できる」とは書いていない一方で、「会社は何もしなくてよい」とも書いていません。しかも、会社側がやるべきことには期限があります。

この記事では、義務がどこまでで、どこからが本人の判断なのかを、条文に沿って整理します。

この記事でわかること

  • 再検査の受診を、会社が強制できない理由
  • 本人が受けなくても消えない、会社側の義務とその期限(3か月)
  • 健診結果が返ってきてから、法令上すべきことの全体像
  • 費用が理由で受診しない人に使える、労災保険の給付制度
  • 受診勧奨をどこまでやり、何を記録に残せばよいか

健診結果の事後対応でお困りの方へ(この記事の執筆元)

筆者は現役の医師・産業医です。株式会社MeIXでは、健診結果に基づく医師の意見聴取、就業上の措置の相談、保健指導・産業医面談を、オンラインで完結する形で全国対応で提供しています。「有所見者が多くて手が回らない」というご相談だけでも構いません。→ お問い合わせフォームはこちら(メールでお返事します)

1. 結論:再検査の受診を強制する条文はありません

先に結論です。

労働安全衛生法が労働者に課している受診義務は、「事業者が行う健康診断」までです。 健診結果を受けての再検査・精密検査は、これに含まれません。

条文を見ます

労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。

(労働安全衛生法 第66条第5項)

「事業者が行なう健康診断」と、対象が限定されています。 定期健康診断や雇入時の健康診断がこれにあたります。

一方、再検査は健診機関や医療機関が個別に案内するもので、事業者が実施する健康診断ではありません。したがって、この条文を根拠に受診を求めることはできません。

なお、このただし書も実務では意味があります。 会社が指定した健診機関で受けたくない従業員は、自分で別の医師の健康診断を受け、その結果を証明する書面を会社に提出すれば足ります。 「指定の病院に行きたくない」という相談には、この選択肢を案内できます。

もう一つ、誤解されやすい条文

労働者は、前条の規定により通知された健康診断の結果及び前項の規定による保健指導を利用して、その健康の保持に努めるものとする。

(労働安全衛生法 第66条の7第2項)

「努めるものとする」 です。健診結果を受け取った労働者が健康の保持に努めることは求められていますが、特定の検査を受ける義務を定めたものではありません。

よくある誤解を整理します

言われがちなこと実際
「安衛法で再検査は義務」そうした条文はありません。義務は「事業者が行う健康診断」まで(66条5項)
「本人が拒否したら会社は免責」免責になりません。会社側の義務(66条の4・66条の5)は、本人の受診と関係なく発生しています
「再検査の結果が出ないと何も進められない」進められます。むしろ一次健診の結果で進めることが条文の前提です(後述)
「産業医がいないから何もできない」規模にかかわらず義務です。外部の医師に依頼する方法があります

2. 健診結果が返ってきてから、法令上すべきこと

「再検査に行ってもらう」ことに気を取られると、本来やるべきことが抜け落ちます。 まず全体像を押さえます。

順すること根拠条文期限性質
1健康診断を実施する安衛法66条1項年1回等義務
2結果を本人に通知する安衛法66条の6/安衛則51条の4遅滞なく義務
3結果を記録する(健康診断個人票)安衛法66条の3/安衛則51条—義務
4異常の所見がある人について医師の意見を聴く安衛法66条の4/安衛則51条の2健診実施日から3か月以内義務
5意見を個人票に記載する安衛則51条の2第1項2号—義務
6意見を勘案し、必要な措置を講じる安衛法66条の5第1項—義務
7必要と認める人に保健指導を行う安衛法66条の7第1項—努力義務
8個人票を5年間保存する安衛則51条5年義務
9(常時50人以上)監督署へ報告する安衛則52条1項遅滞なく義務

「再検査に行ってもらう」は、この表のどこにも出てきません。 会社がやるべきことは、本人が再検査を受けるかどうかと関係なく決まっています。

3. 【重要】意見聴取には3か月の期限があります

ここが、本人の受診を待っていると破綻するポイントです。

条文

第四十三条等の健康診断の結果に基づく法第六十六条の四の規定による医師又は歯科医師からの意見聴取は、次に定めるところにより行わなければならない。

一 第四十三条等の健康診断が行われた日(法第六十六条第五項ただし書の場合にあつては、当該労働者が健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出した日)から三月以内に行うこと。

二 聴取した医師又は歯科医師の意見を健康診断個人票に記載すること。

(労働安全衛生規則 第51条の2第1項)

「健康診断が行われた日から三月以内」 と明記されています。

そして起算点は「健診を受けた日」であって、「結果が返ってきた日」ではありません。 結果が手元に届くまで1か月前後かかる会社も珍しくないので、実質的に動ける期間はさらに短くなります。

なぜこれが効くのか

再検査を待つ流れを時間軸に置くと、こうなります。

時期起きること
4月定期健康診断を実施 ← ここから3か月のカウント開始
5月結果が届く。有所見者に受診勧奨
6月反応がない。再度勧奨
7月3か月の期限。意見聴取が未了だと、期限を過ぎます
8月以降「まだ再検査に行っていないので……」

再検査の結果を待つ設計にしていると、構造的に間に合いません。

条文は再検査の結果を前提にしていません

もう一度、意見聴取の条文を見ます。

事業者は、(中略)健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。

(労働安全衛生法 第66条の4)

「健康診断の結果に基づき」 です。二次検査の結果ではありません。

つまり、一次健診の結果だけで医師に意見を求めることが、条文の想定する順序です。 本人が再検査に行かなくても、この義務は発生していますし、果たすことができます。

「再検査に行ってから産業医に見てもらおう」という運用は、順序が逆です。 先に医師の意見を聴き、その意見を踏まえて誰にどう勧奨するかを決めるほうが、法令にも実務にも合っています。

4. 医師に意見を求めるときに、会社が渡すもの

意見聴取の条文には、あまり知られていない第3項があります。

事業者は、医師又は歯科医師から、前二項の意見聴取を行う上で必要となる労働者の業務に関する情報を求められたときは、速やかに、これを提供しなければならない。

(労働安全衛生規則 第51条の2第3項)

医師から業務情報を求められたら、速やかに提供することが義務です。

医師は健診の数値だけを見て就業上の判断はできません。同じ血圧の値でも、デスクワークの人と高所作業・運転業務の人とでは意見が変わります。

実務では、次のような情報が求められます。

求められやすい情報なぜ必要か
職種・具体的な作業内容身体負荷・危険作業の有無を判断するため
労働時間(時間外労働の実績)脳・心臓疾患のリスク評価に直結するため
深夜業・交代勤務の有無生活リズムと血圧・血糖への影響を見るため
出張・運転業務の有無意識消失リスクのある所見では特に重要
高所・重量物・暑熱などの作業環境事故につながる所見かを判断するため
前年までの健診結果単発の異常値か、経年の悪化かで意見が変わるため

この情報を最初から揃えて渡すと、意見聴取そのものが速く終わります。 「産業医の意見が返ってこない」という相談の多くは、判断材料が渡っていないことが原因です。

5. 会社に残る義務は消えません

本人が再検査に行かないことと、会社の義務が果たされたかどうかは、別の話です。会社に課されているのは次の3つで、うち2つは義務、1つは努力義務です。

① 医師の意見を聴く(義務・3か月以内)

前章で見たとおりです。異常の所見があると診断された労働者について、医師または歯科医師の意見を聴きます。

聴いた意見は健康診断個人票に記載します(安衛則51条の2第1項2号)。口頭で聞いて終わりにせず、記録として残る形にしてください。

② 必要な措置を講じる(義務)

事業者は、前条の規定による医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、当該医師又は歯科医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。

(労働安全衛生法 第66条の5第1項)

条文に並んでいる措置を書き出すと、次のとおりです。

#措置補足
1就業場所の変更配置転換
2作業の転換担当業務の変更
3労働時間の短縮時間外労働の制限を含む
4深夜業の回数の減少交代勤務の調整
5作業環境測定の実施個人でなく職場側の要因を確認する
6施設または設備の設置・整備例:休憩設備、温熱環境の改善
7医師の意見の、衛生委員会等への報告条文に明記された措置の一つ
8その他の適切な措置—

7に注目してください。 「医師の意見を衛生委員会に報告すること」も、条文が並べる措置の一つです。配置転換のような重い対応だけが措置ではありません。

そして条文には「当該労働者の実情を考慮して」とあります。 本人の生活や職務の事情を無視して一方的に決めることは、条文の求めるところではありません。

③ 保健指導を行う(努力義務)

事業者は、(中略)健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師又は保健師による保健指導を行うように努めなければならない。

(労働安全衛生法 第66条の7第1項)

こちらは 「行うように努めなければならない」=努力義務 です。

義務ではありませんが、再検査に行かない従業員に対して会社が取れる、最も自然な一手でもあります。

再検査を「受けさせる」のではなく、話を聞く場を用意する。 受診しない理由が費用なのか、時間なのか、結果を知るのが怖いのかは、聞いてみないと分かりません。 保健指導は、その入口として法令が用意している枠組みです。

6. 「医師による指示のあつた労働者の数」は報告項目です

常時50人以上の労働者を使用する事業場には、定期健康診断結果報告の義務があります。その報告項目に、次のものが含まれています。

八 前号の項目のいずれかについて異常所見があると診断された労働者の数及び医師による指示のあつた労働者の数

(労働安全衛生規則 第52条第1項第8号)

「異常所見があると診断された労働者の数」と「医師による指示のあつた労働者の数」を、監督署に報告します。

つまり有所見者の把握と、それに対する医師の関与は、報告の対象として制度に組み込まれています。 「有所見者が何人いて、そのうち何人に医師の指示が出たか」を集計できる状態にしておく必要がある、ということです。

50人未満の事業場にこの報告義務はありませんが、集計の考え方は同じように使えます。 有所見者の人数と、医師の意見がついた人数を毎年並べておくと、衛生委員会や経営への説明がしやすくなります。

7. 記録の残し方

法定の記録:健康診断個人票を5年間

事業者は、(中略)健康診断の結果に基づき、健康診断個人票(様式第五号)を作成して、これを五年間保存しなければならない。

(労働安全衛生規則 第51条)

様式第五号の個人票を作成し、5年間保存します。 そしてここに医師の意見を記載します(安衛則51条の2第1項2号)。

実務の記録:勧奨の経過

法令が様式を定めているわけではありませんが、受診勧奨の経過を残しておくことをお勧めします。 残す項目は、次のあたりで足ります。

項目例
勧奨した日2026年6月10日
方法個別メール/面談/書面
伝えた内容判定区分の意味、費用の扱い、相談先
本人の反応「受診予定」「費用が負担」「特になし」など
次の対応1か月後に再確認/保健指導を案内

役に立つ場面は、次の3つです。

  1. 医師が意見を述べるときに、経過が分かる。 「昨年も同じ所見で、受診勧奨に反応がない」という情報は、意見の内容を変えます
  2. 翌年の健診で比較できる。 同じ人が2年続けて同じ所見なのかが一目で分かります
  3. 会社として働きかけた事実が、組織に残る。 担当者が変わっても引き継げます

注意:これは本人を追い詰めるための記録ではありません。 「勧奨しても応じなかった」という一点だけを残すのではなく、なぜ受診しないのか、会社として何を案内したのかを含めて残してください。

健診結果と勧奨記録は、いずれも取扱いに配慮が必要な健康情報です。 誰が閲覧できるのかを社内で決めたうえで管理してください。

8. 費用が理由なら、労災保険の給付が使えることがあります

「再検査に行かない理由」を尋ねると、自己負担が発生することを挙げる人が少なくありません。 定期健診は会社負担でも、再検査は自費、という会社が多いためです。

ここで知っておきたいのが、労災保険の「二次健康診断等給付」 です。

制度の中身

二次健康診断等給付は、労働安全衛生法第六十六条第一項の規定による健康診断(中略)のうち、直近のもの(以下この項において「一次健康診断」という。)において、血圧検査、血液検査その他業務上の事由による脳血管疾患及び心臓疾患の発生にかかわる身体の状態に関する検査であつて、厚生労働省令で定めるものが行われた場合において、当該検査を受けた労働者がそのいずれの項目にも異常の所見があると診断されたときに、当該労働者(中略)に対し、その請求に基づいて行う。

(労働者災害補償保険法 第26条第1項)

厚生労働省令で定める検査は、次の4つです。

一 血圧の測定

二 低比重リポ蛋白コレステロール(LDLコレステロール)、高比重リポ蛋白コレステロール(HDLコレステロール)又は血清トリグリセライドの量の検査

三 血糖検査

四 腹囲の検査又はBMIの測定

(労働者災害補償保険法施行規則 第18条の16第1項)

この4項目すべてに異常の所見があると診断された場合に、対象となります。1つでも正常なら対象外です。

給付される内容

一 脳血管及び心臓の状態を把握するために必要な検査(中略)を行う医師による健康診断(一年度につき一回に限る。(中略)「二次健康診断」という。)

二 二次健康診断の結果に基づき、脳血管疾患及び心臓疾患の発生の予防を図るため、面接により行われる医師又は保健師による保健指導(二次健康診断ごとに一回に限る。(中略)「特定保健指導」という。)

(労働者災害補償保険法 第26条第2項)

二次健康診断そのものと、その結果に基づく保健指導の両方が給付の範囲です。

二次健康診断で行われる検査も、省令に定めがあります。

検査備考
空腹時の血中脂質検査—
空腹時の血糖値検査—
ヘモグロビンA1c検査一次健診で行っていない場合
負荷心電図検査または胸部超音波検査いずれか一方
頸部超音波検査頸部エコー
微量アルブミン尿検査一次健診の尿蛋白が疑陽性・弱陽性だった場合に限る

(労働者災害補償保険法施行規則 第18条の16第2項)

通常の再検査より踏み込んだ内容です。 頸部エコーや負荷心電図まで含まれます。

実務上のポイント

項目内容
誰が請求するか労働者本人(条文に「その請求に基づいて行う」)
回数二次健康診断は一年度につき1回、特定保健指導は二次健康診断ごとに1回
対象外になる人すでに脳血管疾患・心臓疾患の症状を有すると認められる人(法26条1項・3項)

4項目すべてに所見が出ている従業員がいたら、この制度を案内できます。

「再検査に行ってください」と繰り返すより、「この制度が使えるかもしれません」と具体的な選択肢を示すほうが動いてもらえる、というのが実感です。費用という現実的な障害を取り除ける可能性があるからです。

本人の請求が起点になる制度です。 会社が代わりに手続きすることはできません。制度の存在と対象条件を知らせることが、会社にできる支援です。

9. 受診勧奨の進め方

法令の枠組みを踏まえると、実務の流れはこうなります。

ステップ1|判定区分を整理する

「要経過観察」「要再検査」「要精密検査」「要医療」など、健診機関の判定区分は機関ごとに異なります。 表記も基準も統一されていません。

まず自社の健診結果で、どの区分が「異常の所見あり」にあたるのかを整理します。 判断に迷う場合は、医師の意見を聴く段階で一緒に確認すれば済みます。

ここを曖昧にしたまま全員に同じ案内を送ると、緊急性の高い人が埋もれます。

ステップ2|医師の意見を聴く(省略できません・3か月以内)

再検査の結果を待たずに、一次健診の結果で意見を聴きます。 「医師に意見を求めるときに、会社が渡すもの」で挙げた業務情報を添えて依頼してください。

ここで次のような整理ができます。

  • 就業上の措置が必要なレベルか
  • 経過観察でよいか
  • 優先して受診を勧めるべき人は誰か

全員を同じ強さで追いかける必要はありません。 医師の意見をもとに濃淡をつけることが、現実的で、かつ法令に沿った進め方です。

ステップ3|勧奨する(伝え方を変える)

一般的な案内文を配って終わりにせず、次の要素を入れます。

要素書くこと
なぜ勧めているのか判定区分の意味。「異常の所見があると診断されています」と具体的に
費用の扱い会社負担の有無。労災保険の二次健康診断等給付が使える可能性
時間の扱い就業時間内に行けるのか、半休が必要か
何を提出してほしいか結果の写しか、受診した事実だけでよいのか
相談先産業医面談・保健指導の場があること。誰に相談すれば話が漏れないのか

「受診してください」だけの案内文は、受け取った側に何も情報を与えません。 上の5つを具体的に書くだけで反応が変わります。

勧奨文の組み立て方(文例)

そのまま使える形で、2種類の文例を示します。 自社の運用に合わせて調整してください。

文例A|有所見者への一般案内

件名:健康診断の結果について(ご確認のお願い)

今年度の健康診断の結果、いくつかの項目で「異常の所見あり」と診断されています。

【お願いしたいこと】

結果票に記載された区分に従い、医療機関の受診をご検討ください。受診された場合は、受診した旨を◯月◯日までに□□までご連絡ください。検査結果そのものの提出までは求めていません。

【費用について】

再検査の費用は〈会社負担/自己負担〉です。なお、血圧・血中脂質・血糖・腹囲(またはBMI)の4項目すべてに所見がある方は、労災保険の「二次健康診断等給付」により、自己負担なく検査と保健指導を受けられる場合があります。該当の可能性がある方は□□までお問い合わせください。

【時間について】

受診にあたっては〈就業時間内の中抜けが可能です/半日休暇をご利用ください〉。

【相談先】

結果の見方や、受診すべきか迷う場合は、産業医面談でご相談いただけます。面談の内容は、就業上の配慮に必要な範囲を除き、上長や人事に共有されることはありません。 希望される方は□□までご連絡ください。

文例B|医師の意見で優先度が高いと判断された方への個別案内

◯◯さん

今年度の健康診断の結果について、産業医から「速やかな医療機関受診が望ましい」との意見が出ています。

会社としては、受診を強制する立場にはありません。ただし、所見の内容から、早めにご確認いただきたいと考えています。

受診の障害になっていることがあれば、遠慮なくお知らせください。費用・時間・医療機関の選び方について、こちらで調整できることがあります。

また、受診の前に産業医と話したいというご希望があれば、面談を設定します。

文例を作るときの注意点

やること避けること
判定区分の意味を具体的に書く「要再検査の方は受診を」だけで終える
費用・時間・提出物を明示する触れずに「受診してください」とだけ書く
相談先と、情報の扱いを書く相談先を書かない/誰に伝わるか不明なままにする
医師の意見が根拠であることを示す会社が独自に判断しているように読ませる
選択肢を示す(給付制度・面談・医療機関の相談)期限と督促だけを繰り返す

文例Bのような個別案内は、宛先と送信経路に注意してください。 健康に関する情報が、本人以外の目に触れない方法で送る必要があります。

ステップ4|記録して、次につなげる

勧奨した事実、本人の反応、その後の状況を残します(「記録の残し方」で挙げた項目)。

受けなかったこと自体を問題にするのではなく、翌年の健診や産業医面談につなげる材料として扱います。

10. それでも受診しないとき

勧奨しても動かない場合、会社が次に取れる現実的な手は限られます。ただし「何もできない」わけではありません。

打ち手根拠・位置づけ
保健指導の場を設ける安衛法66条の7第1項(努力義務)。受診を求めるのではなく、話を聞く場として設計する
産業医面談につなぐ健診結果を持って医師と話す機会。再検査より心理的なハードルが低いことがあります
医師の意見を踏まえ、就業上の配慮を検討する安衛法66条の5。受診しないこと自体を理由にはできませんが、所見の内容によっては配慮が必要な場合があります
衛生委員会で扱う安衛法66条の5が列挙する措置の一つ。個人を特定せず、有所見者の受診率として議題にする
翌年に持ち越す前年の経過を記録し、次年度の意見聴取の材料にする

「受診率」を衛生委員会の議題にするのは、個人を追い詰めずに組織として扱える方法です。 部署ごとの傾向が見えると、時間が取りづらい職場・費用が障害になっている層といった構造的な理由が浮かび上がることがあります。

11. 特殊健康診断は扱いが異なる場合があります

ここまでは、定期健康診断などの一般健康診断を前提にしてきました。

有害な業務に従事する労働者に対して行う特殊健康診断(労働安全衛生法第66条第2項)については、業務ごとに個別の規則が定められており、一般健診と同じ整理をそのまま当てはめることはできません。 検査の内容も、判定後の取扱いも、対象業務ごとに規定されています。

自社に特殊健診の対象業務がある場合は、その業務に対応する規則を個別に確認してください。

行政からの指示による健康診断もあります

都道府県労働局長は、労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、労働衛生指導医の意見に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対し、臨時の健康診断の実施その他必要な事項を指示することができる。

(労働安全衛生法 第66条第4項)

この指示による健康診断も「事業者が行なう健康診断」にあたるため、労働者には受診義務があります(66条5項が「前各項の規定により事業者が行なう健康診断」と定めているため)。

12. 産業医がいない会社の場合

安衛法66条の4は、事業場の規模で対象を区切っていません。 産業医の選任義務がない50人未満の事業場でも、異常の所見がある労働者について医師の意見を聴くことが求められます。

「産業医がいないから意見聴取ができない」という状態は、義務が免除されているのではなく、依頼先を決めていないだけです。

選択肢特徴
地域産業保健センター50人未満の事業場向けに、国の事業として産業保健サービスが提供されています
健診機関に依頼する健診を実施した機関が、意見聴取に対応している場合があります
外部の医師と契約する選任義務がなくても、契約して継続的に見てもらうことは可能です

どの方法でも、業務情報を渡すことが前提です。 数値だけを送って「意見をください」では、医師も判断できません。

13. 年間の流れに落とし込む

最後に、ここまでを1年のスケジュールに置き直します。健診の実施月を4月と仮定した例です。

時期すること根拠
健診実施—安衛法66条1項
実施後すみやかに結果を本人に通知。個人票を作成安衛法66条の6・66条の3
結果到着後すぐ有所見者を抽出。業務情報を添えて医師に意見聴取を依頼安衛法66条の4/安衛則51条の2第3項
実施日から3か月以内医師の意見を受領し、個人票に記載安衛則51条の2第1項
意見受領後意見を勘案し、必要な措置。衛生委員会への報告安衛法66条の5
並行して有所見者へ受診勧奨(費用・時間・相談先を明示)/保健指導の案内安衛法66条の7
遅滞なく(常時50人以上)定期健康診断結果報告安衛則52条1項
通年勧奨の経過を記録。個人票は5年保存安衛則51条

このスケジュールの中に「再検査の結果を待つ」という工程はありません。 そこが本記事で最も伝えたい点です。

この記事のまとめ

  • 再検査の受診を、会社が強制できる条文はありません。 労働者の受診義務は「事業者が行う健康診断」までです(安衛法66条5項)
  • それでも会社の義務は残ります。 医師の意見聴取(66条の4)と事後措置(66条の5)は義務、保健指導(66条の7)は努力義務です
  • 意見聴取には「健診実施日から3か月以内」という期限があります(安衛則51条の2)。再検査の結果を待つ運用では間に合いません
  • 意見聴取は一次健診の結果で行えます。 条文も「健康診断の結果に基づき」としており、二次検査を前提にしていません
  • 医師から業務情報を求められたら、速やかに提供することも義務です(安衛則51条の2第3項)。数値だけでは意見は出せません
  • 費用が障害なら、労災保険の二次健康診断等給付が使える場合があります。 血圧・血中脂質・血糖・腹囲(またはBMI)の4項目すべてに所見があることが条件で、本人の請求により行われます
  • 健康診断個人票は5年間保存し、医師の意見を記載します(安衛則51条・51条の2)

「受けさせる」ことを目的にすると行き詰まります。会社の義務を期限内に果たしたうえで、本人が動きやすい材料を用意する。 これが、法令の枠組みに沿った現実的な進め方です。

よくある質問

Q. 再検査を受けない従業員に、就業制限をかけてもよいですか

再検査を受けないこと自体を理由とする措置は、法令が想定しているものではありません。 安衛法66条の5が定める措置は、医師の意見を勘案し、必要があると認めるときに、当該労働者の実情を考慮して講じるものです。まず医師の意見を聴いてください。そのうえで就業上の配慮が必要と判断された場合に、措置を検討することになります。

Q. 再検査の費用は会社が負担しなければいけませんか

一般健康診断の再検査について、費用負担を事業者に義務づける条文はありません。 負担するかどうかは各社の判断と規程によります。なお、条件を満たせば労災保険の二次健康診断等給付を利用できる場合があります(本記事「費用が理由なら、労災保険の給付が使えることがあります」)。

Q. 会社が指定した病院で受けたくないと言われました

安衛法66条5項のただし書に、その場合の扱いが定められています。 他の医師の行う相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を会社に提出すれば、事業者の指定した医師の健診を受ける必要はありません。

Q. 意見聴取の3か月に間に合いそうにありません

まず、間に合う人から進めてください。 全員分を一度に揃えようとして全体が遅れるより、異常の所見がある人を先に抽出し、業務情報を添えて依頼するほうが早く回ります。 翌年は、健診の実施時期と結果の到着時期を逆算してスケジュールを組み直してください。

Q. 本人が「結果を会社に知られたくない」と言っています

健診結果は取扱いに配慮が必要な健康情報です。 誰が閲覧できるのか、どこまでを上司に伝えるのかを社内で定めておくと、こうした場面で説明ができます。「会社の誰もが見られるわけではない」ことを先に伝えると、話が進みやすくなります。

Q. 医師の意見聴取は、産業医がいない会社でもやらなければいけませんか

安衛法66条の4は、事業場の規模で対象を区切っていません。 選任義務のない50人未満の事業場でも必要です。地域産業保健センターや健診機関、外部の医師に依頼する方法があります。

Q. 二次健康診断等給付は、会社が申請できますか

条文上は「その請求に基づいて行う」とされており、請求するのは労働者本人です。 会社にできるのは、制度の存在と対象条件を案内することです。

Q. 勧奨は何回すればよいという決まりはありますか

回数を定めた条文はありません。 回数を重ねること自体が目的化すると、本人との関係がこじれます。医師の意見をもとに優先順位をつけ、伝え方と選択肢(費用・時間・相談先)を変えるほうが実効性があります。

Q. 有所見者が多すぎて手が回りません

まず医師の意見を聴き、優先順位をつけてください。 全員に同じ強さで対応する必要はありません。また、部署別の有所見率や受診率を衛生委員会で扱うと、個人ではなく職場の問題として手を打てることがあります。

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参考・出典

  • 労働安全衛生法 第66条・第66条の3・第66条の4・第66条の5・第66条の6・第66条の7(e-Gov法令検索)
  • 労働安全衛生規則 第51条・第51条の2・第51条の4・第52条(e-Gov法令検索)
  • 労働者災害補償保険法 第26条(e-Gov法令検索)
  • 労働者災害補償保険法施行規則 第18条の16(e-Gov法令検索)

本記事に記載の法令・通達は、2026年9月16日時点の内容を確認しています。法令・通達は改正されることがありますので、実務では最新の原文をご確認ください。