この記事の要点
面談は一種類ではありません。長時間労働の面接指導には労働者の受診義務があり(安衛法66条の8第2項)、ストレスチェック後の面接指導にはその規定がありません。勧奨できる人の違いや、申出がない人への努力義務まで産業医が条文で整理します。

執筆・監修:小正 晃裕(医師・日本医師会認定産業医。詳しいプロフィールは記事末尾)|最終更新日:2026年10月19日

高ストレス者のリストが出たのに、面接指導の申出が1件もない。長時間労働者に面談を打診したが、「大丈夫です」と断られた。産業医を入れたばかりの会社が、最初につまずくのがこの場面です。

そして相談を受けると、たいてい同じ質問になります。

「本人が嫌がっているのに、会社が無理に受けさせてよいのでしょうか」

この質問には、一つの答えがありません。 「産業医面談」と一口に言っても、制度ごとに義務の強さがまったく違うからです。

実は、労働者に「受けなければならない」と書いてある面談があります。 一方で、受診義務の規定が置かれていない面談もあります。 ここを混ぜたまま考えると、必ず答えが出ません。

この記事では、どの面談が拒否できて、どれができないのかを条文で分けます。

この記事でわかること

  • 面談は一種類ではないこと——制度ごとに義務の強さが違う
  • 労働者に受診義務がある面接指導と、その規定がない面接指導
  • 申出を勧奨できるのは誰か(制度によって違います)
  • 申出がない人にも会社に生じる努力義務と、自社で基準を作れる仕組み
  • 申し出ない理由の解き方と、記録の残し方

面談の申出が出なくてお困りの方へ(この記事の執筆元)

筆者は現役の医師・産業医です。株式会社MeIXでは、長時間労働者・高ストレス者への医師面接指導を、オンラインで完結する形で全国対応で提供しています。産業医契約がない会社の単発依頼にも対応しています。「案内は出しているが誰も申し出ない」というご相談だけでも構いません。→ お問い合わせフォームはこちら(メールでお返事します)

1. 結論:面談は一種類ではありません

まずこの表を押さえてください。 本記事の中心です。

制度実施のきっかけ労働者側の受診義務申出を勧奨できる人申出を理由とする不利益取扱い
健康診断(安衛法66条1項)事業者が実施するあり(66条5項・ただし書あり)——
長時間労働の面接指導(66条の8)本人の申出あり(66条の8第2項・ただし書あり)産業医条文なし
研究開発業務の面接指導(66条の8の2)時間超過で当然に(申出不要)あり(66条の8第2項を準用)—条文なし
高度プロフェッショナル制度の面接指導(66条の8の4)健康管理時間の超過で当然に(申出不要)あり(66条の8第2項を準用)—条文なし
ストレスチェック後の面接指導(66条の10第3項)本人の申出規定なし検査を行った医師等禁止(66条の10第3項後段)

「面談は本人が拒否できる」も「会社は受けさせられる」も、どちらも一般化できません。 制度ごとに見ていきます。

2. 長時間労働の面接指導:申出が起点。でも申し出たら受ける義務があります

起点は申出です

法第六十六条の八の面接指導は、前条第一項の要件に該当する労働者の申出により行うものとする。

(労働安全衛生規則 第52条の3第1項)

実施の引き金は本人の申出です。 ここまでは広く知られています。

そして申出があった場合の会社の対応も決まっています。

事業者は、労働者から第一項の申出があつたときは、遅滞なく、法第六十六条の八の面接指導を行わなければならない。

(同規則 第52条の3第3項)

「遅滞なく」です。 申出を受けてから日程調整に何週間もかかる運用は、この条文に照らして見直す余地があります。

あまり知られていない条文があります

労働者は、前項の規定により事業者が行う面接指導を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合において、他の医師の行う同項の規定による面接指導に相当する面接指導を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。

(労働安全衛生法 第66条の8第2項)

労働者は「受けなければならない」と書かれています。

健康診断の受診義務(安衛法66条5項)と、まったく同じ構造です。 ただし書まで同じで、会社が指定した医師が嫌なら、別の医師の面接指導を受けて結果を証明する書面を提出すればよいとされています。

つまり、どう整理されるか

場面整理
申し出ない本人の選択の範囲です。実施の要件が申出だからです(安衛則52条の3第1項)
申し出た後に受けない66条の8第2項が「受けなければならない」と定めています
指定の医師が嫌だただし書の道があります。他の医師の面接指導+結果を証明する書面の提出

「本人が申し出ないのでどうにもならない」と「本人が拒否するので受けさせられない」は、別の話です。

ただし書を使うときに提出する書面

「会社が指定した医師は嫌だ」と言われたとき、代わりの道が条文にあります。 その書面に何を書くかも定められています。

法第六十六条の八第二項ただし書の書面は、当該労働者の受けた法第六十六条の八の面接指導について、次に掲げる事項を記載したものでなければならない。

一 実施年月日

二 当該労働者の氏名

三 法第六十六条の八の面接指導を行つた医師の氏名

四 当該労働者の疲労の蓄積の状況

五 前号に掲げるもののほか、当該労働者の心身の状況

(労働安全衛生規則 第52条の5)

5項目です。 「会社の産業医とは話したくない」という相談には、この道を具体的に案内できます。 何を書いてもらえばよいかが決まっているので、本人も医療機関も迷いません。

産業医は勧奨できます

産業医は、前条第一項の要件に該当する労働者に対して、第一項の申出を行うよう勧奨することができる。

(同規則 第52条の3第4項)

主語は「産業医」です。 会社が勧めるのとは別に、産業医から本人へ直接勧奨する道が条文に用意されています。

これは実務で効きます。 人事から「面談を受けてください」と言われるのと、医師から「一度話しましょう」と言われるのとでは、受け取り方が違うからです。産業医契約があるなら、この条文を使わない手はありません。

3. 研究開発業務:申出がなくても実施義務です

事業者は、その労働時間が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める時間を超える労働者(労働基準法第三十六条第十一項に規定する業務に従事する者(中略)に限る。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。

(労働安全衛生法 第66条の8の2第1項)

この条文に「申出」という言葉は出てきません。 時間を超えたら、会社は面接指導を行わなければなりません。

そして第2項は、66条の8の第2項から第5項までを準用しています。

前条第二項から第五項までの規定は、前項の事業者及び労働者について準用する。

(同条第2項)

準用される「前条第2項」が、労働者の受診義務です。 つまり研究開発業務の面接指導は、申出が不要で、かつ労働者に受診義務がある——最も義務が強い類型です。

自社に労働基準法36条11項の業務があるかは、確認しておく価値があります。

高度プロフェッショナル制度も同じ構造です

事業者は、労働基準法第四十一条の二第一項の規定により労働する労働者であつて、その健康管理時間(中略)が当該労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める時間を超えるものに対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。

(労働安全衛生法 第66条の8の4第1項)

第六十六条の八第二項から第五項までの規定は、前項の事業者及び労働者について準用する。

(同条第2項)

こちらにも「申出」の文言はなく、受診義務が準用されています。

なお、事後措置の中身は制度によって読み替えられます。

制度措置の例(条文の表現)
長時間労働(66条の8第5項)就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等
研究開発業務(66条の8の2第2項)「作業の転換」を「職務内容の変更、有給休暇(年次有給休暇を除く)の付与」と読み替え
高度プロフェッショナル(66条の8の4第2項)「職務内容の変更、有給休暇(年次有給休暇を除く)の付与、健康管理時間が短縮されるための配慮等」と読み替え

制度によって、打てる手として条文が想定しているものが違います。

4. ストレスチェック後の面接指導:受診義務の規定がありません

対象になるのは誰か

法第六十六条の十第三項の厚生労働省令で定める要件は、検査の結果、心理的な負担の程度が高い者であつて、同項に規定する面接指導(中略)を受ける必要があると当該検査を行つた医師等が認めたものであることとする。

(労働安全衛生規則 第52条の15)

「高ストレス」であることに加えて、「検査を行った医師等が面接指導を受ける必要があると認めた」ことが要件です。 高ストレス判定=自動的に対象、ではありません。

起点は申出です

事業者は、前項の規定による通知を受けた労働者であつて、心理的な負担の程度が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当するものが医師による面接指導を受けることを希望する旨を申し出たときは、当該申出をした労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。この場合において、事業者は、労働者が当該申出をしたことを理由として、当該労働者に対し、不利益な取扱いをしてはならない。

(労働安全衛生法 第66条の10第3項)

2つのことが書かれています。

  1. 申出があったら、会社は面接指導を行わなければならない
  2. 申出をしたことを理由とする不利益な取扱いは禁止

2つ目は、長時間労働の面接指導には置かれていない規定です。 ストレスチェック制度が、「申し出たら不利に扱われるのでは」という不安を正面から想定していることが分かります。

労働者側の受診義務は定められていません

安衛法66条の10は第1項から第9項まであります。 そのどこにも、「労働者は……面接指導を受けなければならない」という規定はありません。

健康診断(66条5項)・長時間労働の面接指導(66条の8第2項)・研究開発業務(66条の8の2第2項による準用)には受診義務の規定があるのに、ストレスチェック後の面接指導にはない。 この差は意識しておく価値があります。

勧奨できるのは「検査を行った医師等」です

検査を行つた医師等は、前条の要件に該当する労働者に対して、申出を行うよう勧奨することができる。

(労働安全衛生規則 第52条の16第3項)

長時間労働では「産業医」でしたが、ここでは「検査を行った医師等」です。 主体が違います。

実務上、ここを取り違えている会社があります。 ストレスチェックを外部機関に委託している場合、勧奨できるのは委託先の実施者側です。委託時に「高ストレス者への受診勧奨まで含むか」を確認しておかないと、勧奨する人がいない状態になります。

申出のタイミングも決まっています

法第六十六条の十第三項の規定による申出(中略)は、前条の要件に該当する労働者が検査の結果の通知を受けた後、遅滞なく行うものとする。

(同規則 第52条の16第1項)

事業者は、前条の要件に該当する労働者から申出があつたときは、遅滞なく、面接指導を行わなければならない。

(同条第2項)

本人側も会社側も「遅滞なく」です。

5. 申出がない人にも、会社には努力義務があります

ここが本記事で最も見落とされている条文です。

事業者は、第六十六条の八第一項、第六十六条の八の二第一項又は前条第一項の規定により面接指導を行う労働者以外の労働者であつて健康への配慮が必要なものについては、厚生労働省令で定めるところにより、必要な措置を講ずるように努めなければならない。

(労働安全衛生法 第66条の9)

「面接指導を行う労働者以外の労働者」——つまり、法定の面接指導の対象にならない人が対象です。

「必要な措置」の中身

法第六十六条の九の必要な措置は、法第六十六条の八の面接指導の実施又は法第六十六条の八の面接指導に準ずる措置(中略)とする。

(労働安全衛生規則 第52条の8第1項)

面接指導そのもの、または「それに準ずる措置」です。

会社が自分で基準を作れます

労働基準法第四十一条の二第一項の規定により労働する労働者以外の労働者に対して行う法第六十六条の九の必要な措置は、事業場において定められた当該必要な措置の実施に関する基準に該当する者に対して行うものとする。

(同規則 第52条の8第2項)

「事業場において定められた基準」です。 つまり——

法定の80時間に届かない人や、高ストレス判定が出ていない人についても、会社が自社で基準を定めて面談等を実施する枠組みが、条文に用意されています。

例(自社で定める基準のイメージ)
時間外労働が月◯時間を超えた人に、保健師面談を案内する
2か月連続で一定時間を超えた人に、産業医面談を案内する
休職から復帰して◯か月以内の人に、定期の面談を設定する

基準そのものは条文に書かれていません。 何時間にするか・どの範囲にするかは、衛生委員会などで検討して自社で定めるものです。

この枠組みを作っておくと、「法定の対象ではないが気になる人」に声をかける根拠ができます。 「なぜあの人だけ面談なのか」という疑問にも、基準を示して答えられます。

6. なぜ申し出ないのか

制度を整えても、申出が出ないことがあります。 産業医として現場で聞く理由は、おおむね次のどれかです。

挙がる理由会社側でできること
人事に知られたくない面談内容がどこまで誰に伝わるかを、事前に文書で明示する
評価に響きそう申出を理由とする不利益取扱いの禁止(ストレスチェックは66条の10第3項後段に明文)を周知する
時間が取れない就業時間内に受けられるか、オンラインで受けられるかを示す
何をされるか分からない所要時間、聞かれること、記録の扱いを先に伝える
自分は対象だと思っていない対象になった理由(時間数・判定)を具体的に伝える

「申出がない=問題がない」ではありません。 申し出るハードルが高いだけ、ということが少なくありません。

特に、1つ目の「どこまで誰に伝わるか」は、伝えるだけで反応が変わります。 面談で話した内容そのものではなく、就業上の配慮に必要な範囲の情報が会社に渡る——この設計を先に説明しておくと、申出が出やすくなります。

7. 面談を受けると、そのあと何が起きるのか

「何をされるか分からない」という不安には、条文で答えられます。 面談の当日から事後措置までの流れは、すべて条文に書かれています。

① 医師が確認すること

医師は、面接指導を行うに当たつては、申出を行つた労働者に対し、第五十二条の九各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項について確認を行うものとする。

一 当該労働者の勤務の状況

二 当該労働者の心理的な負担の状況

三 前号に掲げるもののほか、当該労働者の心身の状況

(労働安全衛生規則 第52条の17)

「第52条の9各号に掲げる事項」は、ストレスチェックそのものの3項目です。

一 職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目

二 当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目

三 職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目

(同規則 第52条の9第1項)

つまり医師が見るのは、次の6点です。

#確認事項根拠
1職場における心理的な負担の原因52条の9第1号
2心理的な負担による心身の自覚症状同2号
3職場における他の労働者からの支援同3号
4勤務の状況52条の17第1号
5心理的な負担の状況同2号
6心身の状況同3号

3番目に注目してください。 「職場における他の労働者による当該労働者への支援」——周囲からの支援があるかどうかを、条文が確認事項に挙げています。 個人の問題としてだけ扱う場ではない、ということです。

案内文にこれを書いておくと、身構えずに済みます。 「詰問される場ではない」ことが伝わるからです。

② 会社が医師の意見を聴く

事業者は、第一項又は第二項ただし書の規定による面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師の意見を聴かなければならない。

(労働安全衛生法 第66条の8第4項)

そして期限も定められています。

法第六十六条の八の面接指導の結果に基づく法第六十六条の八第四項の規定による医師からの意見聴取は、当該法第六十六条の八の面接指導が行われた後(中略)、遅滞なく行わなければならない。

(労働安全衛生規則 第52条の7)

健康診断の意見聴取が「3か月以内」なのに対し、面接指導は「遅滞なく」です。 より短い期間が想定されています。

③ 必要なら措置を講じる

事業者は、前項の規定による医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。

(労働安全衛生法 第66条の8第5項)

健康診断の事後措置(66条の5)と同じ構造です。 医師の意見を勘案し、本人の実情を考慮して措置を検討します。

④ 記録を作成して5年間保存する

事業者は、法第六十六条の八の面接指導(中略)の結果に基づき、当該法第六十六条の八の面接指導の結果の記録を作成して、これを五年間保存しなければならない。

(労働安全衛生規則 第52条の6第1項)

前項の記録は、前条各号に掲げる事項及び法第六十六条の八第四項の規定による医師の意見を記載したものでなければならない。

(同条第2項)

「前条各号」は、先ほどの安衛則52条の5の5項目です。 整理すると、記録に載るのは次のとおりです。

制度記録の記載事項保存
長時間労働の面接指導(安衛則52条の6)実施年月日/氏名/医師の氏名/疲労の蓄積の状況/心身の状況/医師の意見5年
ストレスチェック後の面接指導(同52条の18)実施年月日/氏名/医師の氏名/勤務の状況・心理的な負担の状況・心身の状況/医師の意見5年

どちらも5年保存で、どちらにも医師の意見が入ります。 健康診断個人票への意見の記載(安衛則51条の2第1項2号)と同じ考え方です。

逆にいえば、記録に載るのはこれだけです。 面談で話した内容が丸ごと会社に渡るわけではありません。この点を案内文に書いておくと、「何を書かれるのか」という不安が減ります。

この①〜④を説明できると、「面談を受けたらどうなるのか」が具体的になります。 不安の多くは、この流れが見えないことから来ています。

8. 記録に何を残すか

法定の記録

事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第一項及び前項ただし書の規定による面接指導の結果を記録しておかなければならない。

(労働安全衛生法 第66条の8第3項)

面接指導を実施したら、結果の記録が義務です。 ストレスチェック後の面接指導についても、同様の規定があります(66条の10第4項)。

実施できなかった場合の記録

「実施しなかったこと」の記録について、様式を定めた条文はありません。 ただし実務上、次を残しておくことをお勧めします。

項目内容
対象になった事実時間数/高ストレス判定の有無(判定は産業保健職側で管理)
勧奨した事実誰が・いつ・どの方法で(産業医からの勧奨か、会社からの案内か)
本人の反応申出なし/辞退/日程未定 など
次の対応翌月に再度案内/自社基準による面談を案内

「勧奨したのが誰か」を残すことに意味があります。 産業医からの勧奨(安衛則52条の3第4項)と、会社からの案内は、条文上の位置づけが違うためです。

なお、面談の申出や結果は健康情報にあたります。 誰が閲覧できるのかを社内で定めたうえで管理してください。

9. 実務の進め方

ステップ1|どの制度の話かを確定する

最初にこれをやらないと、必ず議論が空回りします。

  • 長時間労働の面接指導なのか
  • ストレスチェック後の面接指導なのか
  • 研究開発業務の面接指導なのか
  • 法定ではない、自社基準による面談なのか

義務の強さも、勧奨できる人も、制度ごとに違います。

ステップ2|勧奨できる人から勧奨する

制度勧奨できる人
長時間労働の面接指導産業医(安衛則52条の3第4項)
ストレスチェック後の面接指導検査を行った医師等(同52条の16第3項)

外部委託している場合は、委託先が勧奨まで対応するかを確認してください。

ステップ3|案内文に情報を入れる

入れる要素
なぜ対象になったのか(時間数・判定)
何を聞かれるのか(勤務の状況・心身の状況:安衛則52条の17)
所要時間と受け方(就業時間内か、オンライン可か)
情報がどこまで誰に伝わるか
申出を理由に不利に扱われないこと

ステップ4|法定の対象外にも枠を用意する

自社基準を定め、66条の9・安衛則52条の8の枠組みで面談を案内できるようにします。 衛生委員会で検討して決めるのが自然です。

ステップ5|記録して翌月につなげる

1回の案内で終わらせず、対象者リストと勧奨の経過を月次で回します。

10. 産業医がいない会社では

長時間労働の面接指導の勧奨主体は「産業医」と書かれています(安衛則52条の3第4項)。産業医を選任していない50人未満の事業場では、この条文をそのまま使えません。

ただし、面接指導の実施義務そのものは規模で区切られていません。 安衛法66条の8第1項は「事業者は」と書いているだけです。

依頼先としては、地域産業保健センターや外部の医師と契約する方法があります。 医師に依頼する時点で、申出の勧奨まで含めて相談しておくと、勧奨する人がいない状態を避けられます。

この記事のまとめ

  • 面談は一種類ではありません。 制度ごとに義務の強さが違います
  • 長時間労働の面接指導は、申出が起点ですが、労働者に受診義務があります(安衛法66条の8第2項)。健康診断と同じ構造で、他の医師の面接指導+書面提出というただし書も同じです
  • 研究開発業務の面接指導は、申出が不要で、受診義務もあります(66条の8の2)。最も義務が強い類型です
  • ストレスチェック後の面接指導には、労働者の受診義務の規定がありません。 代わりに申出を理由とする不利益取扱いの禁止が明文です(66条の10第3項後段)
  • 勧奨できる人が制度で違います。 長時間労働は産業医、ストレスチェックは検査を行った医師等
  • 法定の対象外でも、健康への配慮が必要な人には努力義務があります(66条の9)。そして自社で基準を定めて面談を実施する枠組みが条文にあります(安衛則52条の8第2項)
  • 申出が出ないのは、申し出るハードルが高いからであることが多い。 情報の伝わり方を先に示すだけで変わります

「受けさせる/受けさせない」の二択で考えると行き詰まります。 どの制度の話かを確定し、勧奨できる人から勧奨し、申し出やすい条件を整える——これが条文に沿った進め方です。

本記事は法令の内容を整理したもので、個別の事案についての法的助言ではありません。 具体的な対応の可否については、弁護士や労働基準監督署にご確認ください。

よくある質問

Q. 面談を拒否した従業員を、懲戒処分にできますか

個別の判断になるため、可否を一般化してお答えすることはできません。 ただし条文の整理として、長時間労働の面接指導と研究開発業務の面接指導には労働者の受診義務の規定があり(安衛法66条の8第2項・66条の8の2第2項)、ストレスチェック後の面接指導にはその規定がありません。 またストレスチェックでは、申出をしたことを理由とする不利益取扱いが明文で禁止されています(66条の10第3項後段)。処分の可否は弁護士にご相談ください。

Q. 高ストレス者に申出を促してもよいですか

条文上、勧奨できるのは「検査を行った医師等」です(安衛則52条の16第3項)。会社が制度の案内をすることは別途できますが、勧奨の主体としては実施者側が想定されています。 外部委託している場合は、勧奨まで含む契約かを確認してください。

Q. 「大丈夫です」と断られました。何回まで声をかけてよいですか

回数を定めた条文はありません。 回数を重ねるより、断る理由を一つずつ外すほうが実効性があります(情報の伝わり方・時間・受け方・対象になった理由の説明)。

Q. 対象ではない人から面談を希望されました

安衛法66条の9と安衛則52条の8の枠組みが使えます。 「事業場において定められた基準」に該当する人に、面接指導またはそれに準ずる措置を行うという構造です。自社基準を定めておくと、こうした希望に一貫した形で応じられます。

Q. 会社が指定した産業医と話したくないと言われました

長時間労働の面接指導については、安衛法66条の8第2項のただし書があります。 他の医師の行う相当する面接指導を受け、その結果を証明する書面を会社に提出すれば、指定した医師の面接指導を受ける必要はありません。

Q. 申出があってから、いつまでに面談すればよいですか

「遅滞なく」です(長時間労働:安衛則52条の3第3項/ストレスチェック:同52条の16第2項)。具体的な日数は条文に定められていませんが、日程調整に時間がかかる運用は見直しの余地があります。

Q. 産業医がいません。勧奨は誰がするのですか

安衛則52条の3第4項の勧奨主体は「産業医」です。 選任していない事業場ではこの条文をそのまま使えませんが、面接指導の実施義務自体は規模で区切られていません。 地域産業保健センターや外部の医師に依頼する際、勧奨まで含めて相談しておくことをお勧めします。

Q. 面談で話した内容は、会社にどこまで伝わりますか

就業上の措置に必要な範囲の情報が、医師の意見として会社に伝わる形が基本です。 会社はその意見を勘案して措置を検討します(安衛法66条の8第4項・第5項)。この設計を案内文に書いておくと、申出が出やすくなります。

Q. 申出がないまま何も起きなければ、会社の義務は果たしたことになりますか

面接指導の「実施」義務は、申出がなければ発生しません(長時間労働・ストレスチェック後の面接指導)。ただし、時間の算定・結果の通知・勧奨・66条の9の努力義務など、申出の有無と関係なく生じる義務があります。 詳しくは長時間労働の面接指導の記事をご覧ください。

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参考・出典

  • 労働安全衛生法 第66条・第66条の8・第66条の8の2・第66条の8の4・第66条の9・第66条の10(e-Gov法令検索)
  • 労働安全衛生規則 第52条の3・第52条の6・第52条の7・第52条の8・第52条の9・第52条の15・第52条の16・第52条の17(e-Gov法令検索)

本記事に記載の法令・通達は、2026年9月16日時点の内容を確認しています。法令・通達は改正されることがありますので、実務では最新の原文をご確認ください。