この記事の要点
オンラインの産業医面談は当日どう進むのか。厚労省通達が求める医師の要件・機器の要件・緊急時体制まで、会社が事前に用意する情報と当日の流れを産業医が解説します。従業員に伝えるべきことも整理しました。

執筆・監修:小正 晃裕(医師・日本医師会認定産業医。詳しいプロフィールは記事末尾)|最終更新日:2026年10月19日

この記事でわかること

  • 会社が事前に医師へ提供しなければならない情報(5項目)
  • どんな医師でもオンライン面談ができるわけではないという要件
  • 当日の流れと所要時間の目安
  • 面談で知り得た情報のうち、会社に伝わるもの・伝わらないもの

オンライン面談の導入を検討中の方へ(この記事の執筆元)

筆者は現役の医師・産業医です。株式会社MeIXでは、長時間労働者・高ストレス者への医師面接指導をオンライン完結・全国対応で提供しています。産業医契約がない会社の単発依頼にも対応しています。→ お問い合わせフォームはこちら(メールでお返事します)

前提:オンライン面談は「誰でもできる」わけではない

まず押さえるべき点です。厚生労働省の通達(平成27年9月15日付け基発0915第5号。令和2年11月19日による改正後)は、情報通信機器を用いた面接指導について、実施する医師が次のいずれかに該当することを求めています。

#医師の要件
①面接指導を実施する医師が、対象労働者が所属する事業場の産業医である場合
②契約(雇用契約を含む)により、少なくとも過去1年以上の期間にわたって、対象労働者が所属する事業場の労働者の日常的な健康管理に関する業務を担当している場合
③過去1年以内に、対象労働者が所属する事業場を巡視したことがある場合
④過去1年以内に、当該労働者に直接対面により指導等を実施したことがある場合

「まったく関わりのない医師にオンラインで単発依頼する」ことは、この4類型のいずれにも当てはまりません。単発で依頼する場合でも、その事業場の産業医として選任する(①)か、継続的な健康管理業務の契約を結ぶ(②)といった形を取る必要があります。

依頼先を選ぶ際は、この点をどう満たす設計になっているかを確認してください。

会社が事前に医師へ提供する情報

通達は、上記のいずれの場合でも、事業者が医師に対し労働時間等の勤務の状況及び作業環境等に関する情報を提供しなければならないとしています。

産業医の職務に関する通達(令和3年3月31日付け基発0331第4号)と、ストレスチェックのマニュアルを踏まえると、実務では次の5点をまとめて渡すのが確実です。

#提供する情報
①対象となる労働者の氏名、性別、年齢、所属する事業場名、部署、役職等
②個人のストレスチェック結果(ストレスプロフィール等)※高ストレス者の面接指導の場合
③直前1か月間の労働時間(時間外・休日労働時間を含む)、労働日数、深夜業の回数及び時間数、業務内容(特に責任の重さなどを含む)等
④定期健康診断やその他の健康診断の結果
⑤ストレスチェックの実施時期が繁忙期であったかどうかの情報

②については、外部機関から密封された封筒に入れた状態で取り寄せて他の情報と合わせて送付する、または本人が面接指導時に自ら持参するなど、労働者のプライバシーが確保される方法で提供する必要があります。

なお、これらの情報提供は法令に基づく対応であり、本人の同意を得なくても第三者提供の制限は受けませんが、情報提供することを予め本人に伝えておくことが望まれます。

機器に求められる3つの要件

#要件
①医師と労働者とが相互に表情、顔色、声、しぐさ等を確認できるものであって、映像と音声の送受信が常時安定しかつ円滑であること。映像を伴わない電話による面接指導の実施は認められない
②情報セキュリティ(外部への情報漏洩の防止や外部からの不正アクセスの防止)が確保されること
③労働者が面接指導を受ける際の機器の操作が、複雑、難解なものでなく、容易に利用できること

一般的なWeb会議ツールで①と③は満たせます。③は意外に重要で、アプリのインストールやアカウント作成を求める方式だと、当日つながらないトラブルが起きます。ブラウザのリンククリックだけで入れる方式が無難です。

実施方法について会社が満たすべき2要件

#要件
①情報通信機器を用いた面接指導の実施方法について、衛生委員会等で調査審議を行った上で、事前に労働者に周知していること
②面接指導の内容が第三者に知られることがないような環境を整備するなど、労働者のプライバシーに配慮していること

①は、50人未満で衛生委員会がない事業場では、労働安全衛生規則第23条の2に基づく関係労働者の意見を聴く機会を活用することが考えられます。

②は場所の確保の話です。執務室の自席で受けさせるのは適切ではありません。会議室を押さえる、自宅から受けられるようにするなど、周囲に会話が聞こえない環境を用意してください。

緊急時対応体制の整備

通達は、医師が緊急に対応すべき徴候等を把握した場合の体制整備も求めています。

労働者が面接指導を受けている事業場その他の場所の近隣の医師等と連携して対応したり、その事業場にいる産業保健スタッフが対応する等の緊急時対応体制が整備されていること

具体的には、面談中に労働者の状態が悪化した場合、誰がどこに連絡するかを事前に決めておくことです。自宅から受ける場合は、その所在地の近隣医療機関を把握しておく必要があります。依頼先を選ぶ際に、この体制をどう用意するか聞いてください。

当日の流れ

以下は一般的な進行例です。所要時間は事業場や事案により異なります。

段階内容
事前(数日前)会社から医師へ①〜⑤の情報を提供。労働者へ日時・接続方法・場所を案内
開始前労働者が個室に入り、接続を確認。医師が本人確認
導入面談の目的、記録の取り扱い、会社に伝わる範囲の説明
状況の確認勤務状況、睡眠、疲労の自覚、業務内容と負荷、対人関係など
心身の状況の確認表情・声色・話し方を含めて確認。必要に応じて医療機関受診の要否を判断
指導セルフケア、生活習慣、受診勧奨など
就業上の措置の確認労働時間の短縮、業務内容の調整などの必要性を本人と確認
終了後医師が面接指導結果報告書・意見書を作成し、事業者へ提出

労働者に事前に伝えておくとよいこと

  • 業務時間中に受けられること(面接指導を受けるのに要する時間の扱いは、社内ルールで明確にしておく)
  • 申出を行ったことや結果を理由に不利益な取扱いは受けないこと(労働安全衛生法第66条の10第3項、ストレスチェック指針)
  • 診断名・検査値などの生データは会社に提供されないこと

面談の後:会社に伝わるもの・伝わらないもの

ここは労働者が最も気にする点です。

情報会社に伝わるか根拠
面接指導の申出を行った事実伝わる(法令に基づく事項)心身の状態に関する情報の取扱い指針
面接指導結果(就業上の措置に必要な最小限の情報)伝わる同上
医師から聴取した意見伝わる労働安全衛生法第66条の10第5項 等
診断名、検査値、具体的な愁訴の内容等の生データや詳細な医学的情報伝わらない面接指導を実施した医師は、就業上の措置を実施するため必要最小限の情報に限定して提供する必要がある
個人のストレスチェック結果原則伝わらない(本人の事前同意が必要)労働安全衛生法第66条の10第2項

事業者の側から、診断名や検査値の提供を求めてはいけません。これは通達・指針で明確に禁じられています。

記録は5年間保存

事業者は、面接指導の結果に基づき記録を作成し、5年間保存しなければなりません(労働安全衛生規則第52条の18・長時間労働者は第52条の6)。記録に記載すべき事項は次のとおりです。

  1. 面接指導の実施年月日
  2. 当該労働者の氏名
  3. 面接指導を行った医師の氏名
  4. 当該労働者の勤務の状況
  5. 当該労働者の心理的な負担の状況
  6. その他の当該労働者の心身の状況
  7. 当該労働者の健康を保持するために必要な措置についての医師の意見

よくある質問

Q1. 面談の費用は誰が負担しますか?

A1. 法が事業者に面接指導の実施義務を課しているため、事業者が負担すべきものです。情報通信機器を用いて行われる場合の通信料等についても同様とされています。なお、面接指導は保険診療扱いにはできません。

Q2. 自宅から受けてもよいですか?

A2. プライバシーが確保され、機器の要件を満たし、緊急時対応体制が整っていれば差し支えありません。所在地の近隣医療機関の把握が必要になる点に注意してください。

Q3. 医師が「対面で診たい」と言ったらどうなりますか?

A3. 通達は「実施する医師が必要と認める場合には、直接対面により行う必要がある」としています。オンラインで始めても、医師の判断で対面に切り替わることがあります。契約時にその場合の対応を確認しておいてください。

Q4. 途中で通信が切れたらやり直しですか?

A4. 機器の要件は「映像と音声の送受信が常時安定しかつ円滑であること」です。安定して継続できない場合は、日を改めるか対面に切り替える判断になります。当日の予備手段(電話での連絡先など)を決めておくと安全です。

Q5. 50人未満でもオンライン面談を頼めますか?

A5. 頼めます。健診有所見者の意見聴取(労働安全衛生法第66条の4)と長時間労働者の面接指導(同第66条の8)は人数を問わず義務です。高ストレス者の面接指導も、令和10年(2028年)4月1日から50人未満に拡大されます。

まとめ

オンラインの医師面談は制度上認められていますが、「どんな医師でも、どんな環境でもよい」わけではありません。

  1. 医師の要件:4類型のいずれかに該当すること(単発依頼でも設計が必要)
  2. 会社の準備:勤務状況・作業環境等の情報提供、衛生委員会等での調査審議と周知、プライバシーが確保された場所
  3. 機器:映像必須(電話不可)、情報セキュリティ、容易に使えること
  4. 緊急時:近隣の医師等との連携体制
  5. 記録:5年間保存。診断名や検査値は会社に渡らない

株式会社MeIXは、これらの要件を満たす形でオンライン面談を全国対応で提供しています。→ お問い合わせフォームはこちら(メールでお返事します)

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参考・出典:厚生労働省「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について」(平成27年9月15日付け基発0915第5号。令和2年11月19日による改正後)/厚生労働省「情報通信機器を用いた産業医の職務の一部実施に関する留意事項等について」(令和3年3月31日付け基発0331第4号)/厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月)/厚生労働省「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成30年9月7日公示第1号、改正令和4年3月31日公示第2号)/労働安全衛生法第66条の4・第66条の8・第66条の10/労働安全衛生規則第23条の2・第52条の6・第52条の18(e-Gov法令検索)

本記事に記載の法令・通達は、2026年9月16日時点の内容を確認しています。法令・通達は改正されることがありますので、実務では最新の原文をご確認ください。