この記事でわかること
- 厚生労働省が「契約前に外部機関へ説明を求めるべき」としている5つの事項
- 見積書だけでは比較できない、料金体系の落とし穴
- 面接指導をどこに頼むかを、委託先選定と同時に決めておくべき理由
- 「サービス内容事前説明書」を使った比較のしかた
ストレスチェックの委託先を検討中の方へ(この記事の執筆元)
筆者は現役の医師・産業医です。株式会社MeIXでは、ストレスチェックの実施から高ストレス者への医師面接指導まで、全国対応・オンライン完結で受託しています。産業医契約がない会社でもご利用いただけます。→ 30分の無料オンライン相談はこちら
まず押さえるべきこと:厚労省は「事前説明書を出してもらえ」と言っている
ストレスチェックの委託先を探すと、価格やシステムの使いやすさで比較したくなります。しかし厚生労働省が令和8年2月に公表した「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」は、それより前にやるべきことを明示しています。
事業者は、ストレスチェックの委託先の選定に当たっては、事前に外部機関から「サービス内容事前説明書」を作成・提出してもらい、その内容を確認します。(2-2)
同マニュアルは巻末に「サービス内容事前説明書(モデル例)」の様式まで用意しています。この様式を各社に埋めてもらえば、横並びで比較できるという設計です。
説明を求めるべき事項として挙げられているのは、次の5つです。
| # | 説明を求める事項 | 中身 |
|---|---|---|
| 1 | 実施体制 | 実施者、実施事務従事者 等 |
| 2 | 実施方法 | 調査票、調査方法、高ストレス者・面接指導対象者の選定方法、結果の通知方法 等 |
| 3 | 料金体系 | 料金体系、基本料金、オプション料金の明示 等 |
| 4 | 面接指導 | 面接指導の依頼先、面接指導担当医師、面接指導以外の相談対応 等 |
| 5 | 情報管理 | 結果通知等の情報の流れ、結果の保存 等 |
以下、この5項目にマニュアルの他の記載を加え、実務で確認すべき7点に整理します。
1. 実施者が「法令上の資格」を持っているか
ストレスチェックの「実施者」は誰でもなれるわけではありません。マニュアルは次の職種に限定しています。
実施者は、委託先の外部機関の医師、保健師、一定の研修を受けた歯科医師、看護師、精神保健福祉士又は公認心理師の中から選任する必要があります。(2-1)
確認すること
- 実施者が上記のいずれかの資格を持っているか(氏名・資格・所属機関の明示を求める)
- 実施者が受検者全員の結果を確認し、面接指導の要否を判断する体制になっているか
- 実施事務従事者の担当業務が必要な範囲に限定されているか
「システムが自動判定します」だけでは足りません。マニュアルの説明ポイントには「実施者が受検者全員のストレスチェック結果を確認し、面接指導の要否を判断する体制が取られるか」と明記されています。
2. 調査票と高ストレス者の選定方法が妥当か
確認すること
- 調査票は法令の要件(ストレス要因・心身のストレス反応・周囲のサポートの3領域を含む)を満たしているか
- 国が示す職業性ストレス簡易調査票(57項目)または簡略版(23項目)以外を使う場合、科学的な根拠が示されているか
- 紙とウェブの選択肢が提示されているか
- 高ストレス者の選定基準が労働者に分かりやすく開示されるか
簡略版(23項目)については、マニュアル自身が「集団分析が詳細にできないことに留意が必要」と注意しています(2-5)。集団分析まで活用したいなら57項目を選ぶ判断になります。
なお、選定にあたって補足的に面談を行う場合、その面談者は医師・保健師等の国家資格保有者か、臨床心理士・産業カウンセラー等の心理専門職であることが求められます。
3. 料金体系:「どこまでが標準か」の線引き
ここが最も差が出るところです。マニュアルは料金について、踏み込んだ書き方をしています。
ストレスチェック実施の受託料金には、実施者及び実施事務に従事する内部スタッフ(実施体制)+実施事務経費+システム提供+データ保管といった実施に不可分の費用は、原則加味されていることが標準であると考えられることから、これらの費用がオプション(別料金)とされている場合には、その料金設定について外部機関から十分な説明を受ける必要があります。(2-2)
つまり、実施体制・事務経費・システム・データ保管はセットで入っているのが標準という基準が国から示されたということです。
確認すること
- どこまでのサービスが含まれるか(集団分析、面接指導、相談窓口)
- 標準サービスか、追加のオプションサービスかの区別が明確か
- 具体的な金額(基本料金とオプション料金が分けて書かれているか)
- 上記4つ(実施体制・事務経費・システム・データ保管)が別料金になっていないか
「1人○○円〜」という表示だけで比較すると、後から集団分析・結果保管・再受検対応などが積み上がることがあります。総額で比較してください。
4. 面接指導の依頼先を、契約と同時に決める
見落とされやすい最重要ポイントです。
ストレスチェックの委託先の選定・契約に当たっては、面接指導の依頼先についても、あらかじめ決めておきます。(2-3)
高ストレス者から申出があれば、事業者は遅滞なく面接指導を実施する義務を負います。そのときに「医師が見つからない」となるのを防ぐための規定です。
確認すること
- 委託先が面接指導をオプションで提供しているか
- 提供している場合、その料金は回数によらない一括契約か、実際に面接指導が実施された場合のみ料金が発生するか
- 地域産業保健センター(地さんぽ)の利用が選択肢として提案されているか
3つ目は意外に思われるかもしれません。しかしマニュアルは、外部機関の説明内容の確認ポイントとして、明確にこう書いています。
(外部機関のオプションサービスの有無に関わらず)面接指導の依頼先の選択肢として、地産保等の利用について提案されているか(2-2)
自社のオプションだけを勧め、無料で使える公的窓口の存在に触れない事業者は、この基準を満たしていないということになります。
地さんぽについて
50人未満の事業場は、地域産業保健センターで医師の面接指導を無料で受けられます。全国350か所(おおむね労働基準監督署単位)に設置されています。
ただし、次の制約があります。
地産保は、企業規模として50人未満の小規模事業場を優先して支援を提供しています。いわゆる大企業の営業所等である小規模事業場で、本社等で選任されている産業医等の協力を得られるような場合は、ご利用いただけないことがあります。(2-3)
また、地さんぽではストレスチェック自体は実施していません。実施者を地さんぽの登録産業医に依頼することもできません。あくまで面接指導などの窓口です。
5. 面接指導以外の相談窓口を案内してくれるか
高ストレスと判定されても、面接指導を申し出るかどうかは本人の選択です。申し出なかった人が放置されないよう、マニュアルは別の相談窓口の案内を求めています。
このような相談窓口の案内について、委託先の外部機関からストレスチェック受検者に適切に提供されるか、委託先の選定に当たって、よく確認することが重要です。(4-5)
確認すること
- 受検者への結果通知に、面接指導以外の相談窓口の案内が含まれるか
- その相談窓口は匿名性が担保され、相談内容が会社に知られないか
- 高ストレスではない人も使えるか
厚生労働省が運営する「こころの耳」(電話・SNS・メールで無料相談可)を案内するだけでも要件を満たせます。委託先独自の相談サービスがある場合は、その利用回数や料金がオプションかどうかも確認してください。
6. 情報管理と、結果の5年保存を委託内容に入れる
個人のストレスチェック結果は、個人情報保護法上の要配慮個人情報にあたる機微な情報です。
確認すること
- 個人情報保護の体制(プライバシーマーク等の認証の有無)
- 結果の保存方法・セキュリティ
- 結果通知が、実施者・実施事務従事者・本人以外の第三者に分からない形で本人に直接届くか
- ストレスチェック結果の記録の保存が委託内容に含まれているか
最後の1点はマニュアルが特に注意しています。
委託先との契約に際しては、ストレスチェック結果の記録の保存についても委託内容に含めるようにしましょう。(3-3)
個人結果は労働者の同意なく会社が受け取れないため、保存も外部機関側で行うのが原則です。ここが契約から抜けていると、結果の置き場所がなくなります。
なお、事業者が5年間保存しなければならないのは面接指導結果の記録です(労働安全衛生規則第52条の18)。集団分析結果も5年間保存することが望まれるとされています。
7. 集団分析まで含めて、職場改善に使えるか
ストレスチェックは受けて終わりではありません。マニュアルは制度を「集団分析・職場環境改善まで含めた一体的な制度」と定義しています(0-1)。
確認すること
- 集団分析が標準に含まれるか、オプションか
- 分析結果の見せ方(部門別・経年比較・仕事のストレス判定図)
- 10人未満の集団の扱い
3つ目は小規模事業場で必ず問題になります。
集団分析結果については、集計・分析の単位が10人を下回る場合には、個人が特定されるおそれがあることから、原則として集団分析結果の提供を受けてはいけません。(5-1)
さらに、この「10人」は在籍人数ではなく実際の受検者数(有効なデータ数)でカウントする必要があります。従業員12人でも受検者が9人なら、集団分析結果は受け取れません。
外部機関が10人未満を自動的に非表示にする仕組みを持っているかを確認してください。マニュアルは、自社実施の場合の留意点として「外部機関が集計・分析を実施して事業場に提供する場合は、個人を特定できない措置(10人未満は非表示など)が自動的に講じられます」と書いており、これが外部委託の利点として位置づけられています(8)。
そもそも、外部に委託すべきなのか
マニュアルの答えは明確です。
労働者数50人未満の事業場においては、原則として、労働者のプライバシー保護の観点から、ストレスチェックの実施を外部機関に委託することが推奨されます。(2-1)
自社実施も可能ですが、マニュアルは第8章まるごとを使って留意点を並べています。要約すると次のとおりです。
| 論点 | 自社実施の場合に生じること |
|---|---|
| 実施体制 | 実施者(医師・保健師等)と実施事務従事者を社内で選任。社長・人事部長など人事に直接の権限を持つ者は実施事務に従事できない |
| 守秘義務 | 実施者・実施事務従事者に罰則付きの守秘義務 |
| 労働者の心理 | 「会社に見られるのでは」という不安が生じやすく、協力が得られず適切な実施が難しくなる |
| 結果通知 | 誤送信・誤配布・人間関係からの情報漏洩リスク、封入や記録管理の事務負担 |
| 集団分析 | 個人特定リスクが高い。10人未満は原則実施しない |
| 結果の保存 | パスワード設定等で事業者が閲覧できないようにする厳格な管理 |
小規模だからこそ社内では守りにくい、というのがマニュアルの立場です。
チェックリスト(そのまま使えます)
委託候補が複数ある場合、次の項目を横並びにして比較してください。
| # | 確認項目 | A社 | B社 |
|---|---|---|---|
| 1 | 実施者の資格(医師・保健師等)と氏名の明示 | ||
| 2 | 調査票(57項目/23項目/独自)と選定基準の開示 | ||
| 3 | 基本料金に含まれる範囲/オプションの金額 | ||
| 4 | 面接指導の依頼先と課金方式(一括/実施時) | ||
| 5 | 地さんぽ利用の選択肢を提案してくれたか | ||
| 6 | 面接指導以外の相談窓口の案内(匿名性) | ||
| 7 | 情報管理体制(Pマーク等)と結果保存の委託有無 | ||
| 8 | 集団分析の有無と10人未満の自動非表示 |
これに加えて、「サービス内容事前説明書」の提出に応じてもらえるか自体が、ひとつの判断材料になります。国が様式まで示している以上、応じられない理由は多くありません。
よくある質問
Q1. 50人未満でもストレスチェックは義務ですか?
A1. 令和7年の労働安全衛生法改正により義務化されました。施行日は令和10年(2028年)4月1日です。
Q2. 労働基準監督署への報告は必要ですか?
A2. 50人未満の事業場は不要です。ただし報告要否の基準となる「常時使用している労働者」は、ストレスチェックの対象者とは数え方が異なり、短時間のアルバイト・パートや派遣先の派遣労働者も含めて判断します。対象者が50人未満でも報告が必要になる場合があるため注意してください。
Q3. 面接指導の費用は誰が負担しますか?
A3. 法が事業者に面接指導の実施義務を課しているため、事業者が負担すべきものです。情報通信機器を用いる場合の通信料等も同様です。なお面接指導は保険診療扱いにはできません。
Q4. 委託先を決める前に、社内で何をしておくべきですか?
A4. 事業者による方針の表明、関係労働者の意見聴取(労働安全衛生規則第23条の2の機会を活用)、社内ルールの作成・周知です。マニュアルは巻末に「ストレスチェック制度実施規程(モデル例)」を用意しています。
Q5. 定期健康診断の健診機関に一緒に頼めますか?
A5. 可能です。マニュアルは「当該事業場が定期健康診断を委託している健診機関の場合には、委託先の提案内容次第では、ストレスチェックや面接指導について、既に実施している定期健康診断とセットで運用することも考えられます」としています。ただし実施時期には注意が必要で、健診を誕生月などに分散実施している事業場は、集団分析の単位を同時期にそろえる検討が要ります。
まとめ
ストレスチェックの委託先選びは、価格表の比較ではなく、「サービス内容事前説明書」を出してもらうところから始まります。国が様式を示しているので、各社に同じ形式で埋めてもらえば横並びで比較できます。
特に差が出るのは、料金に何が含まれているか(3)、面接指導をどこに頼むか(4)、10人未満の集団分析をどう扱うか(7)の3点です。
株式会社MeIXは、ストレスチェックの実施から高ストレス者への医師面接指導まで全国対応・オンライン完結で受託しています。産業医契約がない会社でも、面接指導だけのご依頼にも対応しています。→ ストレスチェック代行・実施者受託のページ/30分の無料オンライン相談はこちら
あわせて読みたい
- ストレスチェックが50人未満も義務化|2028年4月に向けて今からやること
- ストレスチェックの実施者は誰がなれる?50人未満の実施体制
- ストレスチェックの費用相場
- ストレスチェックの実施計画・社内規程テンプレート
参考・出典:厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月)/労働安全衛生法第66条の10・第66条の8/労働安全衛生規則第12条の2・第23条の2・第52条の18(e-Gov法令検索)/個人情報の保護に関する法律第2条第3項/厚生労働省「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成30年9月7日公示第1号、改正令和4年3月31日公示第2号)/厚生労働省「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳」
本記事に記載の法令・通達は、2026年9月16日時点の内容を確認しています。法令・通達は改正されることがありますので、実務では最新の原文をご確認ください。

