この記事の要点
常時10人以上50人未満の事業場では、安全衛生推進者か衛生推進者を選ばなければなりません。どちらになるかを決める業種、14日以内という期限、講習や実務経験で選べる人、届出の要否、選任後に機能させる方法まで、産業医が条文で整理しました。

執筆・監修:小正 晃裕(医師・日本医師会認定産業医。詳しいプロフィールは記事末尾)|最終更新日:2026年10月19日

この記事でわかること

  • 安全衛生推進者と衛生推進者のどちらを選ぶかは、業種で決まること
  • 選任の期限(14日以内)と、選べる人の条件
  • 労働基準監督署への届出は不要で、代わりに氏名の周知が必要なこと
  • 10〜49人の会社で、推進者を「置いただけ」にしないための3つのこと
  • 50人になったときに一斉に増える義務

「10〜49人の会社で、安全衛生の体制をどう作ればよいか分からない」という会社へ(この記事の執筆元)

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安全衛生推進者とは

安全衛生推進者は、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場で、職場の安全と衛生の実務を担当する人です(労働安全衛生法12条の2、労働安全衛生規則12条の2)。50人以上の事業場で選任する衛生管理者や安全管理者に代わり、小規模の事業場で同じ役割の担い手を確保するための制度です。

業種によっては、安全衛生推進者ではなく「衛生推進者」を選びます。衛生推進者が担当するのは、衛生に関する業務に限られます。

選任が必要な事業場:人数は「常時10人以上50人未満」、名称は業種で分かれる

業種選任する人
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業安全衛生推進者
上記以外の業種(事務所、医療・福祉、情報サービス、飲食店、金融など)衛生推進者

(労働安全衛生法12条の2、同法施行令2条1号・2号、労働安全衛生規則12条の2)

人数は会社全体ではなく、事業場(拠点)ごとに数えます。数え方は「産業医の選任義務はいつから?従業員50人の数え方と罰則を解説」で詳しく解説しています。

いつまでに、誰を選ぶか

期限は14日以内、原則はその事業場に専属の人

選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任します。選ぶのは、原則としてその事業場に専属の人です。ただし、労働安全コンサルタントや労働衛生コンサルタントなど、厚生労働大臣が定める人から選ぶ場合は、専属でなくてもかまいません(労働安全衛生規則12条の3第1項)。

選べる人の条件

次のいずれかに当てはまる人から選びます(労働安全衛生規則12条の3、昭和63年労働省告示第80号)。

区分条件
講習の修了者都道府県労働局長の登録を受けた機関が行う講習を修了した人
大学・高専の卒業者卒業後、1年以上の安全衛生の実務経験がある人
高校・中等教育学校の卒業者卒業後、3年以上の安全衛生の実務経験がある人
実務経験者5年以上の安全衛生の実務経験がある人
その他上記と同等以上の能力があると認められる人

衛生推進者の場合、実務経験は「衛生の実務」に読み替えます(同告示)。社内に条件を満たす人がいない場合は、講習を受けてもらうのが一般的な方法です。

労働基準監督署への届出は不要。代わりに「氏名の周知」が必要

産業医や衛生管理者と違い、安全衛生推進者・衛生推進者には、労働基準監督署へ選任を報告する規定がありません。その代わり、選任したら氏名を作業場の見やすい場所に掲示するなどして、従業員に知らせなければなりません(労働安全衛生規則12条の4)。

「届出が要らないから、選んだことにしておけばよい」と考えるのは危険です。従業員が「誰に相談すればよいか」を知らなければ、推進者は機能しません。

推進者が担当する業務

推進者が担当するのは、総括安全衛生管理者が統括管理する業務と同じ範囲です(労働安全衛生法12条の2・10条1項、労働安全衛生規則3条の2)。衛生推進者は、このうち衛生に関する業務に限られます。

  • 労働者の危険や健康障害を防止するための措置
  • 安全・衛生のための教育の実施
  • 健康診断の実施など、健康の保持増進のための措置
  • 労働災害の原因の調査と再発防止対策
  • 安全衛生に関する方針の表明、危険性・有害性等の調査、安全衛生計画の作成・実施・評価・改善

選任しないとどうなるか

労働安全衛生法の罰則規定(120条など)は、12条の2を対象に挙げていません。ただし、選任は法律上の義務です。罰則がないことは、選ばなくてよいことを意味しません。

産業医の視点:10〜49人の会社で、推進者を「置いただけ」にしない3つのこと

10〜49人の事業場には、産業医の選任義務も、衛生委員会の設置義務もありません。そのため、推進者が社内で唯一の安全衛生の担当者になることが多く、何を任せるかを決めておかないと名前だけの存在になりがちです。私が勧めているのは、次の3つを推進者の仕事として明確にすることです。

  1. 健康診断の結果を受けて、医師の意見を聴く流れを回す:健診で異常の所見があった従業員について、医師の意見を聴くことは、規模に関係なくすべての事業場の義務です(労働安全衛生法66条の4)。結果の回収から、医師への依頼、就業上の配慮の検討までを、推進者の担当にしておくと漏れが減ります。
  2. 従業員の意見を聴く場を、推進者が運営する:衛生委員会がない事業場でも、安全や衛生について関係労働者の意見を聴く機会を設けなければなりません(労働安全衛生規則23条の2)。朝礼や定例会議の一部を使い、推進者が議題を用意する形が現実的です。
  3. 困ったときの相談先を、先に決めておく:50人未満の事業場は、地域産業保健センター(地さんぽ)で、医師による健康相談などを無料で利用できます。2028年4月からは50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されるため、実施者をどこに頼むかも、推進者と一緒に早めに決めておくと安心です。

50人になったら何が変わるか

常時50人以上になると、推進者の代わりに、次の体制が必要になります。

項目50人以上で必要になること根拠
衛生管理者選任(推進者からの切り替え)労働安全衛生法12条、同法施行令4条
産業医選任同法13条、同法施行令5条
衛生委員会設置・毎月の開催同法18条、同法施行令9条
定期健康診断の結果労働基準監督署への報告労働安全衛生規則52条
ストレスチェック実施と、労働基準監督署への報告同法66条の10、同規則52条の21

人数が50人に近づいてきたら、「50人になった日から14日以内」に何をするかを先に確認しておくと慌てずに済みます。

よくある質問

Q. 安全衛生推進者と衛生推進者は、何が違うのですか?

選ぶ基準は業種です。製造業・建設業・運送業など一定の業種では安全衛生推進者を、それ以外の業種では衛生推進者を選びます。衛生推進者が担当するのは、衛生に関する業務に限られます。

Q. 労働基準監督署への届出は必要ですか?

届出(選任報告)の規定はありません。ただし、選任した人の氏名を作業場に掲示するなどして、従業員に知らせる必要があります(労働安全衛生規則12条の4)。

Q. 講習を受けていないと、推進者になれませんか?

講習の修了者のほか、学歴と実務経験の組み合わせなど、告示で定められた条件を満たす人も選べます。たとえば、大学を卒業して1年以上、安全衛生の実務に従事した人などです。

Q. 人数は会社全体で数えるのですか?

事業場(拠点)ごとに数えます。会社全体で50人以上でも、拠点ごとに10〜49人であれば、その拠点ごとに推進者を選びます。

まとめ

  • 常時10人以上50人未満の事業場は、安全衛生推進者(業種によっては衛生推進者)を14日以内に選ぶ
  • 選べるのは、講習の修了者か、告示の学歴・実務経験の条件を満たす人
  • 届出は不要だが、氏名の周知が必要
  • 健診後の医師の意見聴取、従業員の意見を聴く場、相談先の確保を推進者の仕事として明確にすると、制度が機能する

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あわせて読みたい

参考・出典

  • 労働安全衛生法 10条・12条・12条の2・13条・18条・66条の4・66条の10・120条(e-Gov法令検索)
  • 労働安全衛生法施行令 2条・4条・5条・9条(e-Gov法令検索)
  • 労働安全衛生規則 3条の2・12条の2〜12条の4・23条の2・52条・52条の21(e-Gov法令検索)
  • 安全衛生推進者等の選任に関する基準(昭和63年9月5日 労働省告示第80号)
  • 本記事に記載の法令・告示は、2026年10月6日時点の内容を確認しています。