この記事の要点
休職の申し出を受けたとき会社が最初にやることを、厚生労働省の手引きから整理します。休職は法律の制度ではなく就業規則で定める会社の制度です。診断書の受領、制度の書面での説明、産業保健スタッフへの連絡が初動の3つ。傷病手当金の要点と、やってはいけないこと4つもあわせて解説します。

執筆・監修:小正 晃裕(医師・日本医師会認定産業医。詳しいプロフィールは記事末尾)|最終更新日:2026年10月19日

この記事でわかること

  • 休職は法律の制度ではありません。 就業規則で定める、会社ごとの制度です
  • 申し出を受けたとき最初にやることは、診断書の受領・制度の説明・産業保健スタッフへの連絡の3つ
  • 厚生労働省の手引きは、復職のときではなく休業の開始時点から始まっています
  • 休業中の説明項目は手引きに4つ挙げられています
  • 傷病手当金は支給開始日から通算して1年6か月
  • 本人の同意なく主治医に問い合わせてはいけません

「休職の申し出を受けたが、何から手をつければよいか分からない」という会社へ(この記事の執筆元)

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休職は、法律の制度ではありません

意外に思われるかもしれませんが、労働基準法にも労働安全衛生法にも「休職」という制度そのものの定めはありません。

休職は、各社が就業規則で定める制度です。労働基準法第89条は、就業規則に必ず書かなければならない事項(絶対的必要記載事項)と、定めを置く場合には書かなければならない事項(相対的必要記載事項)を分けており、休職は後者にあたると整理されています。

厚生労働省のモデル就業規則(令和5年7月版)にも、第9条に休職の条項例が置かれています。

つまり、休職の可否も、期間の上限も、その間の賃金の扱いも、自社の就業規則に書いてあるとおりになります。

申し出を受けたら、まず就業規則を開いてください。ここを曖昧にしたまま話を進めると、後で必ず揉めます。

最初にやること 3つ

厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」は、5つのステップで職場復帰支援を整理しています。そして第1ステップは「病気休業開始及び休業中のケア」です。復職の話ではなく、休み始めるところから始まっています。

① 診断書を受け取る

病気休業の開始においては、主治医によって作成された診断書を労働者より管理監督者等に提出してもらう。診断書には病気休業を必要とする旨の他、職場復帰の準備を計画的に行えるよう、必要な療養期間の見込みについて明記してもらうことが望ましい。

(厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」第1ステップ)

ポイントは「療養期間の見込み」です。ここが書かれていない診断書は実務で使いづらく、後任の配置や業務の割り振りを組み立てられません。

② 休業中の手続きと復帰の流れを説明する

休業を開始する労働者に対しては、療養に専念できるよう安心させると同時に、休業中の事務手続きや職場復帰支援の手順についての説明を行う。

(同手引き)

このとき、口頭だけで済ませないでください。 心身の調子を崩している人に口頭で制度を説明しても、多くは頭に残りません。就業規則の該当条文の写しや、手続きの一覧を紙で渡すのが確実です。

③ 産業医・産業保健スタッフに連絡する

管理監督者等は、病気休業診断書が提出されたことを、人事労務管理スタッフ及び事業場内産業保健スタッフに連絡する。

(同手引き)

現場の上司だけで抱え込まない、ということです。上司は医学的な判断をする立場になく、また本人の健康情報を長く持ち続ける立場でもありません。

休業中に伝えるべき4項目

手引きは、休業する人に情報提供すべき項目を具体的に挙げています。

労働者が病気休業期間中に安心して療養に専念できるよう、次のような項目については情報提供等の支援を行いましょう。

・傷病手当金などの経済的な保障

・不安、悩みの相談先の紹介

・公的または民間の職場復帰支援サービス

・休業の最長(保障)期間等

(同手引き)

このうち、実務でいちばん質問が来るのが傷病手当金です。

傷病手当金の要点

健康保険の給付で、業務外の病気やケガで働けないときに支給されます(業務上・通勤災害は労災保険の対象です)。

支給の4要件

協会けんぽは、次の4つをすべて満たす場合に支給されるとしています。

#要件
1業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
2仕事に就くことができないこと
3連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
4休業した期間について給与の支払いがないこと

会社が間違えやすい3点

待期3日間には、有給休暇も土日祝も含まれます。

待期には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれるため、給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。

(協会けんぽ「傷病手当金」)

ただし連続している必要があります。2日休んで3日目に出勤すると、待期は成立し直しになります。

支給期間は「通算」です。

傷病手当金の支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。

(同)

令和4年1月1日から通算化されました。途中で復職した期間は通算に含まれないため、同じ病気で再び休むことになっても、残りの日数分を受け取れます。

給与が出ている間は支給されません。

給与が支払われている間は、傷病手当金は支給されません。ただし、給与の支払いがあっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます。

(同)

自社の休職中の賃金の定めと突き合わせて説明してください。

やってはいけないこと 4つ

① 本人の同意なく主治医に問い合わせる

これがいちばん多い失敗です。

主治医との連携に当たっては、事前に当該労働者への説明と同意を得ておく必要がある。

(同手引き)

会社として状況を知りたい気持ちは分かりますが、手順を飛ばすと本人の不信を招き、その後の復職支援が進まなくなります。手引きも「プライバシーを保護するとともに、労働者が事業者に不信感を持ったり、トラブルが発生したり、またその結果として職場復帰が円滑に進まなくなること等を防止することにつながる」としています。

なお、主治医に問い合わせる場合の費用負担も、事前に取り決めておく必要があります。

② 疾患名を広く共有する

メンタルヘルスに関する健康情報等のうち、心の健康問題を示す疾患名は誤解や偏見を招きやすいことから、特に慎重な取扱いが必要である。

(同手引き)

職場に伝えるべきは「いつまで休むか」「戻るときに何が必要か」であって、病名ではありません。手引きも、主治医とやりとりする情報について「具体的な疾患名は、必ずしもこれに含まれない」としています。

健康情報は、産業医などあらかじめ定めた特定の部署で一元的に管理するのが原則です。

③ 休職期間の上限や復帰の条件を、その場で決めてしまう

休職の最長期間、クーリング期間、期間満了後の扱いは、あらかじめ就業規則等に定めて周知しておくべき事項です。

私傷病による休業の最長(保障)期間、クーリング期間(中略)等を定める場合/休業期間の最長(保障)期間満了後に雇用契約の解除を行う場合

…については、労働基準法や労働契約法等の関係法令上の制約に留意の上、労使の十分な協議によって決定するとともに、あらかじめ就業規則等に定め周知しておくことが望ましい。

(同手引き)

申し出を受けた場で口頭で決めると、後から変更できません。就業規則に書いてあることを説明するのが正解です。

④ 連絡を絶つ、あるいは頻繁に連絡する

どちらも避けたいところです。手引きは、休業中の接触そのものは望ましい結果をもたらすことがあるとしたうえで、タイミングを事前に決めておくよう求めています。

休業者との接触のタイミングは職場復帰支援プログラムの策定の際に検討しておくことが望ましい。 例えば、診断書や傷病手当金申請書の提出のタイミングに行うと、本人への負担が軽減されることがある。

(同手引き)

診断書や申請書の提出という、もともと連絡が必要な機会に合わせる——これは実務的で、すぐ使える工夫です。

従業員50人未満の事業場はどうするか

産業医の選任義務がない規模でも、やるべきことは変わりません。手引きは代わりの体制を示しています。

産業医が選任されていない50人未満の小規模事業場においては、人事労務管理スタッフ及び管理監督者等、又は衛生推進者若しくは安全衛生推進者が、主治医との連携を図りながら、また地域産業保健センター、労災病院勤労者メンタルヘルスセンター等の事業場外資源を活用しながら検討を進めていくことが必要である。

(同手引き)

地域産業保健センターは無料で利用できます。 産業医と契約していない事業場でも、医師による相談を受けられます。

よくある質問

Q. 診断書に「休職を要する」としか書かれていません。期間を書き直してもらえますか

本人を通じて、療養期間の見込みの記載を追加で依頼するのが通常の流れです。手引きも療養期間の見込みの明記を「望ましい」としています。会社から主治医へ直接依頼する場合は、本人の同意が必要です。

Q. 休職中の給与は払う必要がありますか

法律上の定めはなく、就業規則の定めによります。無給とする会社が多く、その場合は傷病手当金が生活保障になります。給与を支払う場合でも、傷病手当金の額より少なければ差額が支給されます。

Q. 休職の前に有給休暇を使わせるべきですか

有給休暇の取得は労働者の権利であり、どちらを先に使うかは本人の選択です。ただし待期3日間には有給休暇も算入されるため、傷病手当金の開始時期に影響します。制度を説明したうえで本人に選んでもらうのが適切です。

Q. 復職の条件を今の段階で決めておけますか

復職の可否は、復帰の時点で情報を集めて総合的に判断するものとされています。休業開始の時点で「◯か月で戻れなければ退職」といった個別の約束をするのではなく、就業規則に定めた制度を説明するにとどめてください。

Q. 産業医との契約がありません。誰に相談すればよいですか

地域産業保健センター(労働者数50人未満の事業場が対象・無料)に相談できます。あわせて、産業保健総合支援センターも事業場向けの相談に対応しています。

まとめ

  • 休職は法律の制度ではなく、就業規則で定める会社の制度です。まず自社の規程を開いてください
  • 最初にやることは、診断書の受領(療養期間の見込みを含む)/制度と手続きの説明/産業保健スタッフへの連絡の3つ
  • 休業中に伝えるべき項目は手引きに4つ挙げられています。傷病手当金の説明は特に重要です
  • 傷病手当金は支給開始日から通算して1年6か月。待期3日間には有給休暇も公休日も含まれます
  • 本人の同意なく主治医に問い合わせない。疾患名を広く共有しない。期間や条件をその場で決めない。連絡のタイミングは事前に決めておく

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参考・出典

  • 厚生労働省・独立行政法人労働者健康安全機構「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平成16年10月/改訂 平成21年3月/改訂 平成24年7月)
  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金」
  • 健康保険法(大正11年法律第70号)第99条(e-Gov法令検索)
  • 労働基準法(昭和22年法律第49号)第89条(e-Gov法令検索)
  • 厚生労働省「モデル就業規則」(令和5年7月)第9条
  • 厚生労働省「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成30年9月)

本記事に記載の法令・通達は、2026年9月19日時点の内容を確認しています。法令・通達は改正されることがありますので、実務では最新の原文をご確認ください。個別の事案の法的評価については、専門家にご相談ください。