この記事の要点
オフィス系の業種では雇入れ時教育の1〜4号を省略できましたが、2024年4月1日にこの省略規定が廃止されました。現在は全業種が対象です。唯一残っている省略のしかた、作業内容変更時の扱い、記録の保存、罰則まで条文と厚労省資料で整理しました。

執筆・監修:小正 晃裕(医師・日本医師会認定産業医。詳しいプロフィールは記事末尾)|最終更新日:2026年10月19日

この記事でわかること

  • 2024年4月1日から、業種による省略ができなくなったこと(厚生労働省の資料で施行日を確認しています)
  • 省略できていたのはどの業種の、どの4項目か
  • 現在の8項目と、唯一残っている省略のしかた
  • 「雇入れ時」だけでなく作業内容変更時にも必要なこと
  • 雇入時健康診断とは別の制度であること
  • 派遣労働者は誰が行うのか/罰則

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結論:2024年4月1日に省略規定が廃止されました

厚生労働省のリーフレット「労働安全衛生法の新たな化学物質規制」は、次のように書いています。

2-3 雇い入れ時等教育の拡充 2024(R6).4.1施行

雇入時等の教育のうち、特定の業種では一部教育項目の省略が認められていましたが、この省略規定を廃止します。 危険性・有害性のある化学物質を製造し、または取り扱う全ての事業場で、化学物質の安全衛生に関する必要な教育を行わなければなりません。

(厚生労働省「労働安全衛生法の新たな化学物質規制」R5.3)

同リーフレットの施行期日一覧表でも、「雇入れ時等教育の拡充」は 2024(令和6)年4月1日の欄に置かれています。

この改正は、化学物質規制の見直しの一環として行われました。 化学物質を扱わない会社には関係がなさそうに見えますが、省略規定そのものが削除されたため、業種を問わず影響します。

何が変わったのか

改正前:オフィス系の業種は1〜4号を省略できた

改正前の安衛則35条1項にはただし書きがあり、労働安全衛生法施行令2条3号の業種の事業場の労働者については、1号から4号までの事項についての教育を省略できるとされていました。

安衛令2条は、総括安全衛生管理者を選任すべき事業場の規模を業種ごとに定めた条文で、3号は「その他の業種」です。

号業種
1号林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業
2号製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業
3号その他の業種

(労働安全衛生法施行令 第2条の表を転記)

「その他の業種」=1号・2号に挙がっていない業種です。 金融・保険、情報サービス、医療・福祉、教育、飲食店などの多くがここに入ります。オフィスワーク中心の会社の大半が、省略できる側にいました。

省略できていた4項目

現行の安衛則35条1項の1号から4号は、次の内容です。

#事項
1機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること
2安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること
3作業手順に関すること
4作業開始時の点検に関すること

この4つが、いまは省略できません。

改正後:現行条文にただし書きはありません

事業者は、労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、遅滞なく、次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行なわなければならない。

(労働安全衛生規則 第35条第1項柱書)

業種による例外は、条文から消えています。

なお柱書は「次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について」と書いています。業務と無関係な項目まで一律に教える趣旨ではありません。 業種による免除がなくなった一方で、何が必要かは業務内容から判断する構造は変わっていません。

現行の8項目

#事項
1機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること
2安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること
3作業手順に関すること
4作業開始時の点検に関すること
5当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること
6整理、整頓及び清潔の保持に関すること
7事故時等における応急措置及び退避に関すること
8前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項

(労働安全衛生規則 第35条第1項)

5〜8号は改正前から全業種が対象でした。 増えたのは1〜4号の部分です。

唯一残っている省略のしかた

事業者は、前項各号に掲げる事項の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができる。

(労働安全衛生規則 第35条第2項)

省略の基準は「業種」から「その労働者が知っているかどうか」に一本化されました。 同業他社からの経験者採用などが想定される規定です。

「うちはオフィスだから」は理由になりません。 個々の労働者について判断する必要があります。

「雇入れ時」だけではありません

事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。

(労働安全衛生法 第59条第1項)

前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。

(同条第2項)

部署異動や担当業務の変更でも、同じ教育が必要です。 安衛則35条1項の柱書も「労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したとき」と書いています。

実務では、入社時の対応はあっても、異動時が抜けている会社が目立ちます。

特別教育とは別の制度です

安衛法59条3項は、危険・有害業務に就かせるときの特別教育を定めています。雇入れ時教育とは別物で、扱いも違います。

雇入れ時等の教育特別教育
根拠安衛法59条1項・2項/安衛則35条安衛法59条3項/安衛則36条以下
対象すべての労働者(雇入れ時・作業内容変更時)厚生労働省令で定める危険・有害業務に就かせるとき
省略十分な知識・技能があると認められる事項(安衛則35条2項)十分な知識・技能があると認められる科目(安衛則37条)
記録の保存条文に定めなし受講者・科目等の記録を作成し3年間保存(安衛則38条)

事業者は、特別教育を行なつたときは、当該特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、これを三年間保存しておかなければならない。

(労働安全衛生規則 第38条)

記録の保存義務があるのは特別教育です。 安衛則35条には記録の作成・保存を求める規定がありません。

とはいえ、実施したことを示せる記録は残しておくのが実務的です。 労働基準監督署の調査で「実施した」と言うだけでは、確認のしようがありません。衛生教育の実施計画は、衛生委員会の付議事項でもあります(安衛則22条4号。衛生委員会では何を調査審議するのか)。

「雇入時健康診断」とは別の制度です

名前が似ているため混同されますが、次のとおり別の条文です。

雇入れ時等の教育雇入時の健康診断
根拠安衛法59条1項/安衛則35条安衛法66条1項/安衛則43条
内容業務に関する安全・衛生の教育11項目の健康診断
時期雇い入れたとき、遅滞なく常時使用する労働者を雇い入れるとき

健康診断のほうは健康診断はどこまでが会社の義務かで整理しています。入社時には、この2つを両方やる必要があります。

派遣労働者は誰が行うのか

労働者派遣法45条1項は、派遣先も事業者とみなして適用する安衛法の条文を列挙しています。

この列挙のなかに「第五十九条第二項」(作業内容変更時の教育)はありますが、「第五十九条第一項」(雇入れ時の教育)は含まれていません。

条文の構造上、雇入れ時の教育は派遣元の義務という整理になります。個別のケースについては、所轄の労働基準監督署にご確認ください。

罰則があります

安衛法120条1号は、第59条第1項(同条第2項において準用する場合を含む。)の規定に違反したときを含めて、次のように定めています。

次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。

(労働安全衛生法 第120条柱書)

雇入れ時教育も、作業内容変更時教育も、罰則の対象です。

職長教育の対象業種も広がりました

同じ改正パッケージのなかで、安衛法60条の職長等に対する安全衛生教育の対象業種も拡大されています。

安衛法第60条の規定で、事業者は、新たに職務につくこととなった職長その他の作業中の労働者を直接指導または監督する者に対し、安全衛生教育を行わなければならないとされています。その対象業種に、以下の業種が追加されます。

・食料品製造業(食料品製造業のうち、うま味調味料製造業と動植物油脂製造業は、すでに職長教育の対象です。)

・新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業

(厚生労働省「労働安全衛生法の新たな化学物質規制」R5.3。施行は2023(令和5)年4月1日)

雇入れ時教育(2024年4月)と職長教育(2023年4月)で施行日が違います。

よくある質問

Q. オフィスワークだけの会社でも雇入れ時教育は必要ですか

必要です。改正前は労働安全衛生法施行令2条3号の業種(その他の業種)について安衛則35条1項1号から4号までの省略が認められていましたが、厚生労働省の資料によれば、この省略規定は2024年4月1日に廃止されました。現行の安衛則35条1項に業種による例外はありません。ただし柱書は「当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について」と定めており、何が必要かは業務内容から判断します。

Q. いつまでに実施すればよいですか

安衛則35条1項は「遅滞なく」としています。具体的な日数は条文に定められていません。

Q. 経験者を採用した場合も必要ですか

安衛則35条2項は「前項各号に掲げる事項の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができる」と定めています。省略は労働者ごと・事項ごとの判断になります。

Q. 部署異動のときも必要ですか

必要です。安衛法59条2項は「前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する」と定めており、安衛則35条1項の柱書も「労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したとき」と書いています。

Q. 実施記録は残さなければいけませんか

安衛則35条には記録の作成・保存を求める規定がありません。記録の保存義務が条文にあるのは特別教育で、安衛則38条が受講者・科目等の記録を3年間保存することを定めています。

Q. 雇入時健康診断をやっていれば教育は不要ですか

別の制度です。健康診断は安衛法66条1項・安衛則43条、雇入れ時等の教育は安衛法59条1項・安衛則35条が根拠で、それぞれ実施義務があります。

まとめ

  • 2024年4月1日に、業種による省略規定が廃止されました(厚生労働省の資料で施行日を確認)
  • 省略できていたのは、安衛令2条3号「その他の業種」の事業場における1号〜4号の4項目
  • 現行の安衛則35条1項に業種による例外はありません
  • ただし柱書は「当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について」と限定しています
  • 残っている省略は「十分な知識及び技能を有していると認められる労働者」についてのみ(35条2項)
  • 作業内容変更時にも必要(法59条2項)
  • 記録の保存義務が条文にあるのは特別教育(安衛則38条・3年)。雇入れ時教育には規定がありません
  • 雇入時健康診断とは別の制度
  • 罰則は50万円以下の罰金(法120条1号)
  • 職長教育の対象業種の拡大は2023年4月1日施行で、施行日が異なります

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あわせて読みたい

参考・出典

  • 労働安全衛生法 第59条・第60条・第120条(e-Gov法令検索)
  • 労働安全衛生規則 第35条・第37条・第38条(e-Gov法令検索)
  • 労働安全衛生法施行令 第2条(e-Gov法令検索)
  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第45条第1項(e-Gov法令検索)
  • 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働安全衛生法の新たな化学物質規制」(R5.3)

本記事に記載の法令・通達は、2026年9月16日時点の内容を確認しています。法令・通達は改正されることがありますので、実務では最新の原文をご確認ください。