この記事の要点
深夜業を含む14の業務に常時従事する労働者には、配置替えの際と6か月以内ごとに1回の健康診断が必要です。対象業務の一覧、胸部エックス線を年1回にできる規定、医師の判断で省略できる項目、特殊健康診断との違い、労基署への報告まで、産業医が条文で整理しました。

執筆・監修:小正 晃裕(医師・日本医師会認定産業医。詳しいプロフィールは記事末尾)|最終更新日:2026年10月19日

この記事でわかること

  • 特定業務従事者の健康診断は、配置替えの際と、6か月以内ごとに1回行うこと
  • 対象になるのは、労働安全衛生規則13条1項3号に並ぶ14の業務で、深夜業を含む業務も入っていること
  • 胸部エックス線検査は年1回でよく、ほかにも医師の判断で省略できる項目があること
  • 特殊健康診断との違い、労働基準監督署への報告の要否

「夜勤のある従業員の健診結果を、誰に判定してもらえばよいか分からない」という会社へ(この記事の執筆元)

筆者は現役の医師・産業医です。株式会社MeIXでは、健康診断結果に基づく医師の意見聴取(就業判定)を、産業医契約の有無にかかわらず1名からお受けしています(1名1,000円〜〔税別〕)。年2回の特定業務従事者の健康診断にも対応します。→ 健診事後対応(就業判定・医師意見聴取)のご案内

特定業務従事者の健康診断とは

一定の業務に常時従事する労働者に対して行う健康診断です。通常の定期健康診断(1年以内ごとに1回)より頻度が高く、配置替えの際と、6か月以内ごとに1回行います。

事業者は、第十三条第一項第三号に掲げる業務に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際及び六月以内ごとに一回、定期に、第四十四条第一項各号に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。

(労働安全衛生規則 第45条第1項)

ポイントは2つです。

  • 項目は定期健康診断と同じ11項目です(安衛則44条1項)。特別な検査を足すものではありません
  • 回数が年2回になり、加えてその業務に就くとき(配置替えの際)にも行います

なお、この健康診断の対象者は、通常の定期健康診断(安衛則44条)の対象から除かれています。年2回の健診を受けていれば、別に年1回の定期健康診断を重ねて行う必要はありません。

対象になる14の業務

対象は、労働安全衛生規則13条1項3号に列挙された次の業務です。

記号業務
イ多量の高熱物体を取り扱う業務、著しく暑熱な場所における業務
ロ多量の低温物体を取り扱う業務、著しく寒冷な場所における業務
ハラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ異常気圧下における業務
ヘさく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
ト重量物の取扱い等重激な業務
チボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ坑内における業務
ヌ深夜業を含む業務
ル水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ病原体によって汚染のおそれが著しい業務
カその他厚生労働大臣が定める業務

いちばん見落とされやすいのは「深夜業を含む業務」

工場や建設現場の話に見えますが、ヌ「深夜業を含む業務」は業種を問いません。介護・医療の夜勤、ホテルや警備の夜間勤務、24時間営業の店舗、深夜帯のコールセンターやシステム運用など、オフィス系の会社でも対象者が出ます。

深夜業とは、労働安全衛生法66条の2で「午後十時から午前五時まで」の間の業務とされています(厚生労働大臣が必要と認める場合は午後11時から午前6時まで)。

「常時従事」の線引き

どの程度その業務に就いていれば「常時従事」にあたるかは、条文には書かれていません。シフトの組み方によって判断が分かれやすいところなので、迷う場合は所轄の労働基準監督署や産業医に確認したうえで、対象者の名簿を作っておくことをおすすめします。

混同しやすいのが、深夜業に従事する労働者の自発的健康診断(安衛法66条の2)です。こちらは「受診前6か月を平均して1か月あたり4回以上深夜業に従事した」労働者が、自分で受けた健康診断の結果を会社に提出できる制度で(安衛則50条の2)、事業者が年2回行う特定業務従事者の健康診断とは別のものです。

胸部エックス線は年1回でよい。ほかにも省略できる項目がある

年2回といっても、毎回すべての項目をフルで行う必要はありません。条文に、頻度を下げてよい項目と、医師の判断で省略できる項目が定められています。

項目扱い根拠
胸部エックス線検査・喀痰検査1年以内ごとに1回行えば足りる安衛則45条1項後段
貧血検査・肝機能検査・血中脂質検査・血糖検査・心電図検査定期の健診で、前回これらを受けた人は、医師が必要でないと認めるとき全部または一部を省略できる安衛則45条2項
聴力検査定期の健診で、前回受けた人、または45歳未満(35歳・40歳を除く)の人は、医師が適当と認める聴力の検査で代えられる安衛則45条4項
身長・体重・腹囲・視力・聴力、胸部エックス線、貧血、肝機能、血中脂質、血糖、心電図厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは省略できる(定期健康診断の省略規定を準用)安衛則45条3項・44条2項
雇入時の健康診断などで受けた項目受けた日から6か月間に限り、相当する項目を省略できる安衛則45条3項・44条3項

どの規定も「医師が必要でないと認めるとき」が条件です。会社や健診機関の都合だけで項目を削ることはできません。省略するかどうかは、健診機関の医師や産業医と、前回の結果を見ながら決めます。

特殊健康診断とは別物

名前が似ていて混同されやすいのが特殊健康診断です。

特定業務従事者の健康診断特殊健康診断
根拠安衛法66条1項・安衛則45条安衛法66条2項・3項(対象業務は政令で指定)
対象安衛則13条1項3号の14の業務に常時従事する労働者有害な業務で政令が定めるものに従事する労働者(従事させたことのある労働者で、現に使用している人を含む)
項目定期健康診断と同じ一般的な項目業務ごとに定められた特別の項目(歯科医師による健診を含む)
頻度配置替えの際+6か月以内ごとに1回業務ごとの規則で定める

同じ人が両方の対象になることもあります。たとえば有害物を取り扱う業務に就いている人は、業務によっては特定業務従事者の健康診断と特殊健康診断の両方が必要になります。自社に有害業務がある場合は、該当する業務ごとの規則を個別に確認してください。

労働基準監督署への報告

常時50人以上の労働者を使用する事業者は、定期の特定業務従事者の健康診断を行ったときも、遅滞なく、電子申請で所轄の労働基準監督署長に結果を報告します(安衛則52条1項)。報告事項には「第十三条第一項第三号に掲げる業務に常時従事する労働者の数」も含まれています。

年2回実施する場合、報告もそれに合わせて行うことになります。報告様式には「報告の対象となる期間」と「当該期間の属する年における報告の回数」を書く欄があります(同条1項4号)。

健診のあとにやること(年1回の健診と同じ)

特定業務従事者の健康診断も、労働安全衛生法上の健康診断です。年1回の定期健康診断と同じく、次の対応が必要です。

  • 結果を健康診断個人票に記録し、5年間保存する(安衛則51条)
  • 結果を受けた労働者本人に、遅滞なく通知する(安衛則51条の4)
  • 異常の所見があった人について、医師の意見を聴く(安衛法66条の4。健康診断が行われた日から3か月以内:安衛則51条の2)
  • 意見を勘案し、必要に応じて就業上の措置を講じる(安衛法66条の5)

健康診断の実施(安衛法66条1項)、個人票の作成(66条の3)、結果の通知(66条の6)は、いずれも違反した場合に50万円以下の罰金の対象として列挙されています(安衛法120条1号)。

産業医の視点:夜勤のある職場で、年2回の健診を生かす3つのこと

1. 対象者名簿を先に作る

シフト表から深夜帯(22時〜5時)にかかる勤務がある人を抜き出し、誰が年2回の対象かを決めておきます。配置替えで夜勤に入る人は、そのタイミングで健診が必要です。

2. 2回の健診を「同じ物差し」で比べる

6か月の間隔で同じ項目を測ると、体重・血圧・血糖・脂質の変化が見えます。夜勤は生活リズムが崩れやすく、半年で数値が動く人もいます。省略規定を使う場合も、前回の結果を医師が見たうえで判断してもらいます。

3. 医師の意見聴取では、勤務の実態を伝える

深夜勤務の回数、連続夜勤の有無、仮眠の取り方などを医師に伝えると、「夜勤の回数を減らす」「連続夜勤を避ける」といった具体的な就業上の意見につながります。安衛法66条の5に挙げられている措置にも、「深夜業の回数の減少」が明記されています。

よくある質問

Q. 特定業務従事者の健康診断は、項目を省略できますか?

できる項目があります。胸部エックス線検査・喀痰検査は1年以内ごとに1回で足ります(安衛則45条1項)。また、前回受けた人については、貧血・肝機能・血中脂質・血糖・心電図の検査を、医師が必要でないと認めるときに省略できます(同条2項)。いずれも医師の判断が条件で、会社の判断だけでは省略できません。

Q. 特殊健康診断と何が違うのですか?

特定業務従事者の健康診断は、定期健康診断と同じ一般的な項目を年2回行うものです。特殊健康診断は、有害な業務ごとに定められた特別の項目について行うもので、根拠となる条文(安衛法66条2項・3項)も対象業務も異なります。両方の対象になる人もいます。

Q. 年に何回行うのですか?

6か月以内ごとに1回、つまり年2回です。これに加えて、その業務に配置替えになったときにも行います(安衛則45条1項)。

Q. 深夜勤務がある従業員は対象になりますか?

「深夜業を含む業務」に常時従事する人は対象です(安衛則13条1項3号ヌ)。深夜業は午後10時から午前5時までの業務です(安衛法66条の2)。どの程度で「常時従事」にあたるかは条文に書かれていないため、迷う場合は所轄の労働基準監督署や産業医に確認してください。

Q. 労働基準監督署への報告は必要ですか?

常時50人以上の労働者を使用する事業者は、定期の特定業務従事者の健康診断を行ったときも、遅滞なく電子申請で報告します(安衛則52条1項)。

まとめ

  • 特定業務従事者の健康診断は、配置替えの際と6か月以内ごとに1回。項目は定期健康診断と同じ
  • 対象は安衛則13条1項3号の14の業務。「深夜業を含む業務」はオフィス系の会社でも対象者が出る
  • 胸部エックス線は年1回でよく、ほかにも医師の判断で省略できる項目がある
  • 50人以上の事業場は、定期の実施ごとに労働基準監督署へ報告する
  • 個人票の作成・本人への通知・医師の意見聴取は、年1回の健診と同じように必要

株式会社MeIXは、健康診断結果に基づく医師の意見聴取(就業判定)を、1名からお受けしています。夜勤のある職場の健診後対応や、対象者の整理のご相談もお気軽にどうぞ。

あわせて読みたい

参考・出典

  • 労働安全衛生法 66条・66条の2・66条の3・66条の4・66条の5・66条の6・120条(e-Gov法令検索)
  • 労働安全衛生規則 13条・44条・45条・50条の2・51条・51条の2・51条の4・52条(e-Gov法令検索)
  • 本記事に記載の法令は、2026年10月8日時点の内容を確認しています。